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第24話 「眞性異形っていうのは、具体的には何なの?」

「でも、イツカのあの力……分身」


「はい?」


「あんなウェルメイドワークスがあるなんて、前代未聞よ。普通は武器を作るのに、なんていうか……技、なのかしらね?」


「……ああ、あれ」


 剣から受け取った力。

 その剣が言っていた――この力はこう使うのだと。


 一瞬でいくつものあたしの未来が見えて、それが形になった。


 敢えてあの力を口で説明するならそうなる、のかな。分身とはちょっと違うような気はする。

 とはいえ、少なくとも剣や斧を作り出すのとは、まるで違うよね……。


「そういうものを発生させる事ができるなんて、少なくとも私は見たことがないわ。やっぱりそういう事も含めて、あなたは異世界の勇者ってことなのかしらね」


「……まー実感のない勇者だけどねー……」


 そもそも車に轢かれるようなどんくさい人間って、勇者の適性があると言っていいのかどうか……。


 ちなみに柄のすっぽ抜けた剣は、幸いにして目釘が取れただけだったって話(どうして取れたかは言わぬが華)。

 この二日の間に、紹介された鍛冶屋の棟梁に頼んで、手ほどきを受けながら修理をさせてもらった。


 あたしが壊したものをあたしが修理したからには、そうそう同じ壊れ方をしないと勝手に信じてる。


「あとは本当に生命活動を停止させるような攻撃であれば、眞性異形ゼノグロシアと言っても、もちろん倒せるけど」


「ああ、首をチョン、とか? やっぱりあの体はちゃんと生き物としての体……ってことだよね?」


「うん。でもそれも簡単じゃないのよね。ゼノグリッターが体に影響してるせいなのか、小鬼種でも普通のゴブリンとかより何倍も強靭な肉体を持ってるから」


「あー、そうみたいね」


 この前の……って、つくづくあの戦闘の振り返りみたいな講義になってるな、コレ……。

 まぁ、話の復習としては良いのか。


「それをイツカはあんな簡単に切り捨てちゃった。……正直、それですら苦労してるこのファーレンガルドの住人であるあたし達からすれば溜め息ものだわ」


「あはは……」


 笑顔で肩を竦めるランに対して、乾いた笑いのあたし。

 剣振ったら斬れましたが何か? とか言うレベルで、あたしは何も意識してやったことじゃないからねー……。


 でも、無我夢中だったけど、あの戦いで思い出されるのは、群れで襲いかかってくるあの眞性異形ゼノグロシアたち。

 あれは、恐怖を知らない狂戦士たちのようだった。それが今、この世界に突きつけられた驚異と言う訳だ。



 ふと、視線の先。


 町中を流れる人々の中に、2mは優に超えるだろう、いかつい顔の大男と、子供ぐらいの背の小柄な男たちがいる。


 そんな彼らの額には。


 一様に角が生えている。顔の色も大男は赤ら顔、小柄な男たちは緑色。


「あの人たちって……オーガとゴブリン、だよね?」


「え? ……ああ、そうね」


「宿の人に聞いたけど、ファーレンガルドじゃオーガとかゴブリンとかって普通に一緒に人の中で過ごしてるって」


「そうよ」


 視線の先の鬼たちは、談笑を交わしながら、人間の商売人と取引をしているようだった。


 眞性異形ゼノグロシアは、彼らに酷似した姿をしている。

 それは一体――


「……一体眞性異形ゼノグロシアっていうのは、具体的には何なの?」


 ランはあたしに言われて少し難しい顔をした。

 どう説明していいか、答えあぐねているようだったが、視線をゆっくり上げて。


 空を、世界を見つめるような目で、言った。


「一言では難しいけれど。でも分かっていることはこのファーレンガルドの生命を模して召喚された、異世界の存在、よ」


「異世界……こことはまた違う?」


「まぁ、私達にしてみればここが普通に暮らしている世界なわけだけどね」


「あ、うん、そりゃそっか」


 あたしの返事に、ランは苦笑を交えつつ、言葉をつなげる。


「魔王と共に現れたという、5000年に一度出現する『ファフロスゲート』。そこを潜って現れる何者かによって召喚されたモンスターがあの眞性異形ゼノグロシアよ」


「『ファフロスゲート』……」


 それはこの世界を脅かすものを生んでいるゲートだ。


 魔王を倒し、そのゲートを潜って元の世界に戻ることが、あたしの目的なワケだが。


「そのファフロスゲートを守ってる魔王って……」


「ランさん、そろそろ着きやすぜ!」


 馬車の御者さんの胴間声にあたしの声は遮られる。


「続きは中でしましょうか。多分少し待つことになると思うしね」


「そうなの?」


 馬車は王城を守る門をくぐり抜け、次第に速度を落としていく。


 そこがこの世界・ファーレンガルドを支える人類たちの最大の砦だった。




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