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第23話 「了解っす、先生!」

「――つまり、あの眞性異形ゼノグロシアってのを倒すためには、その体にある『ゼノグリッターの核』っていうのを破壊するってことでいい?」


 あの戦いから三日目の朝。

 あたしは馬車に揺られて、ランと一緒に王城を目指していた。


 馬車はとても豪奢な作りで、扉から屋根から、細かい朱色基調の意匠がとってもきれいだった。


 立派な毛並みの白馬が6頭も引く、絵本の中でしか見た事のないような乗り物。

 本来ならお姫様みたいな高貴な人しか乗り得ないものだろう。

 このお出迎えだけでも、この世界一番の王国で勇者を迎え入れるってのは、それなりに大事おおごとなんだろうなって想像できる。


「そうそう。でも、言うは簡単だけど、ゼノグリッターは物凄く硬いの。だから、一撃で倒そうと思ったら尋常じゃない力が必要なのよ」


「そう言えば騎士の人達も苦労してたなぁ……」


 道中、あたしはランからこの世界の戦闘の講義を受ける。

 あたしに出来ることは結局、あの眞性異形ゼノグロシアとか言うモンスターたちとの戦いに勝つことなんだとすれば、重要な事だと思ったから、ね。



 馬車の窓から見える街。


 広い通りには石造りの、あたしの世界で言えば中世のようなクリーム色の石造りの建物が並び、それらは店であるらしく、店先には色々なものが並んでいる。


 あたしの想像するファンタジーの中の立派な市って感じそのものの光景だ。


 人の波は絶えない。活況と呼んで差し支えないだろう。

 それは王都だからこその活気ではあるんだろうけど――


「王都から離れれば、どの村も眞性異形ゼノグロシアの驚異にさらされてるって……」


 二日お世話になった宿のおかみさんから聞かせてもらった話。


「そうね、ここはこのファーレンガルドでは一番栄えている街であることに間違いないけど、少し離れただけで、いつ何時眞性異形ゼノグロシアに襲われるかわからない街、村ばかりになるわ。故郷を追われた人たちも、この町では珍しくはないわね」


「故郷を追われた、か。それでも命があれば幸せ……って考えて良いんだよね?」


「人それぞれだと思うけど、私はイツカと同じ考えよ」


 ランが、ふっと優雅な微笑みを浮かべる。


 眼鏡の似合う知的な雰囲気。

 しかもエルフとか、そんなクールビューティ、どこの異世界の住人だ……って、ここ異世界だった。


 ランは、このハインヴェリオン王国の国王様って人から直々に、この世界に不慣れである勇者と言う立場のあたしの後見人として任ぜられたという。

 まぁ、ランみたいに優しくて頼れる人なら、あたしとしても願ったりかなったりだ。


 今あたしは、そんなランに連れられて、一緒に国王陛下にご挨拶に向かっております。

 色々な支援をしてくれるって話なんだから、ちゃんと会っておかないとね。


 ちなみに。


「ランは、なんだっけ、王国ギルドの何とか、とかいうリーダー……」


「うん、碧風ヴェルマーレ旅団の旅団長を任されてるわ」


「旅団長。どれ位偉いの?」


「偉いっていうか……まぁ、でも2000人はいるギルドのメンバーの4分の1を預かるってことを考えたらそれなりに偉いのかしらね?」


「強いってこと?」


「強さだけでは旅団長にはなれないけれど、強くなければこの立場にはいられないし、それなりの実力を持ってるとは思ってもらっていいと思うわ」


 何という贅沢か、そんな人に戦闘講義してもらってるんだから、身の引き締まるというかなんというか。

 (ちなみに『旅団』と言っても、あたしの世界でいう軍隊とかの旅団とは物が違うらしく、いわゆるギルドの一つの大軍を示す言葉ってだけらしいので、そこんトコはあしからず。)


「了解っす、先生! じゃさっきの続きをおなしゃす!」


 大変いい姿勢であたしは手を上げてランに言う。


「はいはい。ええと、どこまで話したっけ?」


「あの、眞性異形ゼノグロシアを倒すためには『ゼノグリッターの核』を破壊する、でもそれはめっちゃ堅いってトコ」


「ああ、そうだったわね」


 ふむ、と、一つうなずいた後に、ランは改まったように言う。


「確かに、ゼノグリッターそのものは強い硬度を持っているわ。でも、ウェルメイドワークスで生成された武器は、ゼノグリッターの硬度を中和する力を持ってるのよ」


「中和って言うと……」


「ゼノグリッターで生成された武器をなんて言ったかしら?」


「ええと、『ウェルメイドアームズ』?」


「そうそう。そのウェルメイドアームズなら、あの硬質なゼノグリッターでさえ、ゼリーのように貫くことが出来るようになるわ」


「……ああ、そう言えば騎士の人たちも使ってた」


 あの術で生み出された槍とか投斧だと、眞性異形ゼノグロシアはあっさり倒せてたのをこの目で見たっけ。


「うん。だから何とかゼノグリッターを粉砕して、その破片を集めてウェルメイドワークスを発動させることが勝利の鍵にもなるのね」


「敵の力を利用する――なるほど、これは実に王道……!」


「え?」


「いえ、続けて下さいまし」


 あたしの世界の基準でモノを言っても通じないのはやや残念だが、まぁ何を言ってんだかという話で。


「だけど、ウェルメイドワークスで作られた武器は、逆にゼノグリッターを中和するのと同じで、刃を合わせれば反作用で一緒に中和されてしまうの」


「え? あそっか、一方的ってわけじゃないのか……!」


 それもおとといの戦いで、騎士の人たちが、武器一つで倒せる体数が少ないとかなんとか言ってたのを見てたな、あたし。


「そう。だから密度の濃いウェルメイドアームズであれば長持ちはするけど、普通の人の作るウェルメイドアームズは、2、3匹も小鬼種を切っちゃえば砕けるか、霧散しちゃうのよね」


「ううむ、使い所が試される……」


「ね。……でも、とっても強力な魔力の塊でもあるわ。それを手にしている間なら、通常使っている魔法の効果を引き上げる事もできるし、使っている武器に新しい効果を付与することも出来る」


「おお……何という魔力物質でしょう……」


 世が世なら未知のテクノロジーとか言われるヤツですね……。




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