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最弱はバラバラな世界を一つにする  作者: アリア(紫骨 骸)
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【02:前回の死と現実】

《Day1Part2朝刻》


悪夢を見た。

大きな魔物に爪で背中を抉られ、泉に身体を蝕まれるという夢だ。

背中に痛みはなく身体の何処にも傷跡は存在していない。それなのに身体は震えていた。

そして理解した。痛みから震えているのではない。これは恐怖だと。

死ぬというのはとても痛いことでこんなにも恐怖を味わうのだと思い知らされた。


しばらく震えと寒気が収まるまでベッドに潜り込んでいた。



震えも寒気も収まった頃、とりあえず夢かどうかを確かめるためにステータスを表示する。


変わらず1なのかと思えば2に増えている。死亡回数も1から2に増えているところからあの死はきっと夢ではないのだろうと思った。

慌てながらもしっかり心は冷静を保っていた。


レベルは上がっていないようだ。

レベルが一切上がっていないのに能力値が1ずつ上がるなんて変な話だなと怪訝に思う。


怖いはずなのにそれを何処か楽しんでいる自分がいるのが分かった。

収まってしまった恐怖は覚めることがなかった。

喉元過ぎれば暑さ忘れるとはよく言ったものだ。と思い、苦笑する。


ステータスの確認はしたので次は持ち物の確認をした。


新たに【魔物図鑑】というものが追加されていて、元々あった図鑑にも多く追加されていたようだ。記載された量が多くなったからなのかページ数も多くなっていた。


星狼スターウルフか……。

この図鑑を見て判断するのであれば自分のことを傷付けた魔物はこいつである。見た目は攻撃方法共に類似している。だが、そうだと仮定するならば……


その中で特に問題なのが、星狼スターウルフが愛主従の魔王“ローサ”の側近であるという点についてだろう。

元々、多くの魔物を所持しているためその分側近も多くいると言っても魔王が認めるほどのものなのは判明している。


魔王は全て作成する力を持っている。魔力を使って自分とは異なるものを作り配下に仕立てあげたり、自分のそっくりのをつくって影武者にしたりなど使い方は多種多様である。

その中でも魔王“ローサ”に関しては規格外。他の魔王が強いものを少数で作り出すのに対し、弱めの生き物を多数作り出しているのだ。それも倒されても自分の魔力と引換にまた回復したりと、ここ一帯の勇者を育てているのは紛れもなく魔王“ローサ”だと言えるだろう。

言うまでもなくこの世界のよくある初級の魔物、粘着物質スライムも魔王“ローサ”の作り出したものだ。


何故わざわざそんなことをするのか。


それは魔王の中でも一番攻撃的でいたぶるのが大好きな頭のおかしいやつがいるからだ。

その名前は不死身の魔王“ロッソ”

この世界に対する深刻な被害は大体魔王“ロッソ”が原因である。

倒しても倒しても回復するため、死という概念が効かない。ようは死ぬことはないということで、それを繋げていくと止めることは不可能という考えに達するだろう。

魔王“ロッソ”は実に気まぐれで自己の激しいやつだ。

まぁ、そこまでは知られていない事実なのだが。


と、ここで疑問に思った人はいるだろう。「何故これだけの情報を知っているのか。」と。


答えは簡単だ。図鑑の作成や設定をしたからだ。


どうやら俺には面白い機能が沢山ついているらしく、ベッドに潜り込んでいる間に色々弄っていた。


図鑑の作成という項目をタッチ。

【魔人図鑑】を作成。

【魔人図鑑】の設定という項目をタッチ。

説明欄に「魔族や人などの知りたい情報を入手することが出来る。尚、その際魔物は入れない。」

図鑑に入れる時の対象を「攻撃を与えてきた者。」から「自分の視覚内にある全て(・・)、及び話に出てきたもの。」に変える。するとページがなかった図鑑が一気に膨れ上がった。大きさを例えるならば六法全書のような感じだ。流石に大きい。

他の図鑑も同じような設定をする。

だが、膨らまなかった。きっとスキルを使っているところを見たり、魔物を直接見たりと色々な条件が合わさらないと種類は増えないのだろう。

図鑑全体の設定という項目をタッチ。

「奪ったりこの辞書を他人が使うことが出来ず本人の意思でしか開くことが出来ない」設定を付ける。

それに追加して「自分の未来に必要なものだけを図鑑に入れる。」という設定をする。

必要の無いものが消えたので薄っぺらい物に戻った。

そして最後に「これらの全ての辞書には真実しか載らない。」という設定をする。

あまり減らなかった。


こうやって設定したはいいものの上手く機能するかはまだ分からないので今後検証していくことが必要だと思う。


という感じで新たに【魔人図鑑】という形で色々な奴の情報を合法的に抜き取るという最悪なことをしたのである。

だが、今の情報社会……、ここが情報社会かどうかは置いておいて情報というのは何よりも大切なやつである。

抜き取られても嫌だし、なんか色々嫌だ。

と言ってもそんな非人道的なことを今、自分がやっているんですけどね。


まさか、魔王までもの情報を奪えるとは思っていなかったのだが。

この魔人図鑑、直接見たものは顔写真がつくみたいだが話にしか出てきていないものには顔写真がついていないようだ。

また、詳細不明の者もたまにいる。

その中でも魔王“ヴィーブ”に関してはどこをほっつき歩いているのかと言うぐらいには見つからないようだ。

遊び人と言われるくらいなので一番弱いと思われがちだが、全てに関して魔王の中でもトップ2を争っている存在だ。無下には出来ないだろう。

そんな遊び人と言われる魔王“ヴィーブ”だからこそ情報収集をしても全く出てこない。なのでここには情報が載らないという訳だ。


つまりこの図鑑は自分の知りたいことを教えてくれるのではなく今まで聞いた話を簡潔にわかりやすくまとめてくれているだけであって、スリーサイズなどを知ることは出来ないということだ。別に知りたくもないし。


で、こんな感じに恐ろしい図鑑を手に入れたわけです。

一応、真実しか載らない設定にしてあるので嘘ではないはずだが確認しておくことも必要だろう。



色々な図鑑をそれぞれ見ていた。


(なるほど、あの泉は一応魔物だったのか。)


自分が最後の最後に決死の思いで身を投げ込んだ泉は、蟲毒之泉バグポイズンフォウンテという典型的な魔物だったようだ。

入ったが最後、蟲に喰われている感覚に陥る毒となり周りにも蟲に喰われているように見える視覚的暴力を与えるなんとも嫌な魔物だ。

出来れば二度と相手にしたくないと思った。


スキル図鑑にも追加項目があった【スキル図鑑:爪斬クロウスラッシュ】【スキル図鑑:蟲毒バグポイズン】【スキル図鑑:蟲召喚バグスモンス】【スキル図鑑:ポイズン】だ。なかなかに気持ち悪い技が多い。


そして、どうやら死に図鑑にも追加項目が出来たようだ。【死に図鑑:殺害死(斬)】【死に図鑑:毒死】だ。


この図鑑の増え方から察するに攻撃を受けるとその技をスキルとしてゲット出来るという謎の能力を手に入れたようだ。うむ、なかなかにいいものを貰ったな。……いいのかこれで。


死に図鑑というのはおそらく死に方の話だと推測できる。

【死に図鑑:殺害死(斬)】というのはおそらく【スキル図鑑:爪斬クロウスラッシュ】による効果だと思われる。斬というのはスラッシュの語源からきていると思う。

【死に図鑑:毒死】はおそらく【スキル図鑑:蟲毒バグポイズン】から来ているものだと考えた。そうなると【スキル図鑑:蟲召喚バグスモンス】【スキル図鑑:ポイズン】の二つのスキルがどうやって生まれてきたのかが不明なのだが今後試していきたいと思う。

死に図鑑が必要なのかは正直わからない。


と言っても、夢なのか、それとも現実だったのかが曖昧だ。もしかしたら倒れていたのをだれかが運んでくれたのだろうか?

いや、有り得ないか俺は死んだはずだ。死んだ人間が生き返るわけがないし、おそらく夢だったのだろう。

だとするとスキルをなぜ手に入れたのかが不明になってくるが……大丈夫だろう。

答えが出てもどうしようもないことだ。


そこまで考えたところで一回欠伸をする。

腕を上に伸ばして思いっきり息を吸って吐いてを繰り返していく。

そろそろ朝食に呼ばれる頃だろう。先に下に降りておこう。


朝食は昨日と一緒だった。「昨日と一緒なんですね。」と言おうと思い、口を開ける。


「そういえば坊主。今日冒険者初日・・だろ?頑張れよ!」


開いた口が塞がらないとはこのことなのだろうか。覚えていないのか。


昨日と全く同じセリフ

昨日と全く同じ朝食

昨日と全く同じ洋服


全てに関して違和感を感じていた。否、違和感しか感じることが出来なかった。

あれは昨日の話ではない。だとすると……


(なんだ、ただの夢か。)


そう思うと、なんだか落ち着いてきた気がする。おじさんに、自分の心の中の悟られないようににこにこと落ち着いて返事をする。

随分と余裕があるなと笑っていたがそんなことは今は関係なかった。


主食は焼きたてのパンで、野菜がごろごろと入ったシチューに焼き魚。どれも出来立てほやほやで湯気が立っていた。

焼きたてのパンを手でちぎり、口に放り込む。ふわふわとした食感、噛めば噛むほど甘みが増していく。

シチューを大きいスプーンで豪快に口に入れる。一気に入れたので熱くて、はふはふと口をぱくぱくと開けて閉じる。身体に熱が染み渡ってくる。

焼き魚……この世界での紅魚クレミスピシスの焼き魚らしい。白魚と似たような味が口の中いっぱいに広がる。


美味しい美味しいと口の中に詰め込む。この前と全く同じ食べ方で。

おじさんが嬉しそうに見ているのを見てなんだかこっちも嬉しくなってきた気がする。


ご馳走様。と手を合わせてぼそりと呟く。


(とりあえずギルドに行って討伐のクエストを受けてこよう。昨日と同じ場所に行ったら会う可能性があるから別のルートで向かうか。)


考えを脳内であれでもないこれでもないと言いながらまとめつつ、ギルドに向かうのであった。

もう一度ギルドに行って登録し直すのはとてつもなく面倒だが仕方が無いことだ。



ギルドについた。昨日……いや、この前来た時よりも賑やかになっている。

そういえばこの前は少し遅めの時間に言った気がする。ちょうどお昼頃でお酒を飲んでいる人が多いようだ。昼から飲むなんて暇人だとしか感想が思い浮かばない。


カウンターの方へ行く。前とは違う人が立っていた。前は銀髪ボブの可愛い子だったのだが、今回は金髪美女のお姉ぇさんと言った感じだ。

胸が大きく瞳も大きい。にひっと笑う姿に思わず笑みがこぼれる。


せめてあんな笑顔をしてくれる人が近くにいたら僕の現実はラッキーになったのかな。


……、そんなことを考えても仕方が無いだろう。過去のことは考えない方がいい。余計なことを考えると判断力が鈍り、失敗を犯してしまう。


こっちで幸せになれればそれで十分だろう。


「お姉さん、ちょっといいですか?冒険者の登録したいんだけど。」

「冒険者の登録ですね。では、こちらに名前を記入してください。記入した時点で登録が完了します。」

「分かりました。」


そういうと目の前の紙に名前を書いていく。

……前回って名前何にしたっけ?

規約は迷惑をかけないこと、独占しないこと、差別をしないことの三原則だ。三原則と言われると非核三原則を唐突に思い出した。無駄に多くても困るし、そのぐらいが丁度いいのだろう。


自分の名前は嫌いだ。この名前を呼ばれながら何度も何度も苦痛を味わったことがある、恐怖を味わったことがある。


二度と、ごめん、なんだよな


ヴィオラ・スケーレットロ


今日から俺の名前はこれだ。


「はい、分かりました。ヴィオラさんですね。こちらがギルドカードになります。証明書になりますので無くさないようにして下さい。再発行には銀貨一枚が必要になりますので無くした際には銀貨を持ってこちらに来て下さい。」

「ありがとうございました。」


あっ、これってもしかして運が悪かったら実名じゃないってバレて即通報パターンあるんじゃ。

頑張って隠し通そう。


新たに別の心配事が出来た。

ヴィオラ・スケーレットロというのは適当に厨二病っぽい名前を付けたい一心でやりました。


ヴィオラは紫、スケーレットロは骸骨という意味です。


ちなみにイタリア語です。Google翻訳任せなのと、私の耳で聞いてカタカナに直しているだけなのであっているか知りません。


ー作者の日記ー


主人公が正気に戻るのが早いって?私が聞きたいよ、そんなこと。私の創作ちゃんはみんな心がしっかりしてるからしょうがないんだよ。

あと、異性同性とかそんな分類を気にしない子ばかりだから本当に頭おかしい子ばっかり。

あのね、自分で言うけどラノベに向いてない。

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