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最弱はバラバラな世界を一つにする  作者: アリア(紫骨 骸)
1/17

【01:憧れの異世界と死】

※18._全体的な文法の修正、改稿


《Day1朝刻》

「あれ、いま、朝だよな?ここどこだ。」


気が付いたら俺はベッドの上にいた。


いつもなら布団の上にいるはずなのだが、そこはお世辞にもふかふかとは言えない硬い布団と木製のベッド。

ところどころがボロボロでどこかしらの宿屋なのだろうと推測した。


そして落ち着いたところで今の状況をゆっくりと考える。


俺は昨日何をしていたんだったのだろうか。こんな所にはいなかったはずだ。

記憶が曖昧で思い出せない。


いつも愛用している黒のジャージに一年ものの運動靴。

髪を少し掴んで目の前に持っていくと、いつもの短い赤髪が見えた。

ここまで現実通りだときっと目も赤いんだろうなと苦笑する。


思い出せることがなく困り果てた。ふと窓の外を見てみると、見慣れた現実味の無い風景が見えた。


田舎といった感じで僕の住んでいる都会とは大違いのところだ。

都会ではこんなにも人で賑わってはいない。

言うならば、せかせかと動く人が多いと言うべきなのか、こんなに市場などはないことは確かだ。


この景色を見ていると、何もかもがどうでも良くなってくる気がしてくる。

何故かここに来ることにとてつもない執着心を持っていたような気がしたのだ。


ーーあ。


「おもい、だし……た。」


ーーこれは、


「異世……界?」


よく見てみると、ゲームで見ていた光景と同じことに気がついた。

こんなにもざわざわとしていて、楽しそうな雰囲気はこんなところでしか味わえない贅沢なものだ。


よく、異世界に憧れて色々な妄想をしたためていたのを昨日のことのように覚えている。


「えっ、本当に異世界に来ちゃったの?夢みたい……。いやこれは夢なのか。夢だった時の落差が大変そうだから夢ということにしておこう。」


そう思いながらも夢であろうが、夢ではなく本物だろうが、憧れの世界に来れたことへの幸せはそんな細かいことを気にしないぐらいに埋まっている。

さっきまで昨日のことが追い出せずに落胆していた気持ちがシャボン玉のようにパッと弾け飛んだ。


さっそく異世界に来た時の定番である持ち物、ステータスの確認に取り掛かる。


ステータスというのはレベルや能力値などを数字化したものであり、色々な異世界の話のド定番である。

僕の来たこの世界ではレベルの上限はなく、一番レベルの高い者も最大で100が限界と言われている。10まで上げるのは簡単なのだがそこから100まで上げるとなれば相当な鍛錬が必要になる。

また、スキルに関しても限界は存在していないのだが一番大きくてもやはり100までしかいかない。

どちらに関しても100より上をいくためには、多くの練習が必要であり、不可能だと分かるだろう。

俺はいったい幾つなのだろうか。


ステータスを開く方法なんて分からなくて、「ステータスオープン」などと至極適当な言葉を心の中で強く思うとステータスが開いていた。

おぉ!と感動したのだが、それだけでは収まらなかった。


「全て1……?」


レベルやその他の能力値。何もかもが全て1と表記されている。死亡回数(?)が1なのは気になるが気にしないことにする。

1という表記になっているということはそのままの通りで行くなら最弱である。

ステータス表示がされている上には《Day1朝刻》と書いてある。

何かしら日付を表しているものなのだろう。


こういう異世界に来た時は大体この世界の限界を超える超人か、全てが0なのに異常なスキルで最強になったり、低くても何かしらが強くてそこが認められて色んなのと仲良くなったりと、そういうのがド定番だと俺は思うのだが……。


1というのは何を表しているのだろうか。もしかしたら自分の知っている意味とは大分違うのかもしれない。


まぁ、いい。次は持ち物を見よう。もしかしたらすごく役に立つアイテムで強くなったりとか有り得るかもしれないし。


とりあえずさっきと同じように「持ち物一覧オープン」と即興で考えた適当な言葉を心の中で強く思う。目を開けると持ち物一覧が載っている。


「おっ、成功。唸れ、俺の運!」


称号図鑑、スキル図鑑と死に図鑑?必要なものはバックに入ってるという説明も見えるがそれよりも色々な図鑑があることが気になる。


ー説明書ー

○称号図鑑

→手に入れた称号が載っている図鑑。

○スキル図鑑

→手に入れたスキルが載っている図鑑。

○死に図鑑

→今まで死んだ死に方が載っている図鑑。


……?運がいいのか悪いのか。これがいい持ち物なのかもハッキリいって分からないのでどうしようもない。


全ての図鑑に共通するのは赤い装飾を施してある高級そうな本であるということ。1ページにつき一つのものが書いてあるということ。空白のページがないということ。


称号図鑑には、【称号図鑑:初めての死】【称号図鑑:初めての自殺】【称号図鑑:スキル初心者】の二つが書いてある。死んだ覚えもないし自殺した覚えも全くない。スキルを獲得した覚えもなかった。いずれも身に覚えがない。

スキル図鑑には、【スキル図鑑:首吊り】しか載っていなかった。詳細もよく見ることが出来ず、どんな効果が発揮されるのかは分からなかった。

死に図鑑には、【死に図鑑:首吊り】しか載っていなかった。説明の部分がぼやけていて読めない。


持ち物はこれのみで他の設定なども変えられるらしいが、宿屋のおじさんが朝ごはんだよ、と迎えに来た。

ここは宿屋で合ってたのかという安心感と共に、ここの料理は自分の身体と合うのだろうかという不信感に駆られた。



美味だった。

俺の今まで心配していたのがバカみたいだった。


出てきたのは簡素な朝食であった。

主食は焼きたてのパンで、野菜がごろごろと入ったシチューに焼き魚。どれも出来立てほやほやで湯気が立っていた。

焼きたてのパンを手でちぎり、口に放り込む。ふわふわとした食感、噛めば噛むほど甘みが増していく。

シチューを大きいスプーンで豪快に口に入れる。一気に入れたので熱くて、はふはふと口をぱくぱくと開けて閉じる。身体に熱が染み渡ってくる。

焼き魚……この世界での紅魚クレミスピシスの焼き魚らしい。白魚と似たような味が口の中いっぱいに広がる。


ふと、思った疑問をぶつける。


「なぁ、おじさん。魔王ってどれくらいいるの?」


そう聞けば宿屋のおじさんが答えてくれた。


日本語で通じるのかと思った。

話を聞きながら周りの壁をざっと見ると日本語や英語、フランス語などで書かれている。俺はあまり外国語は得意ではないので少し読める程度だが。

話す言語や文字も日本語と同じようなのでとにかく不自由なく過ごせそうである。

夢だとしたら確実に納得できる簡潔さだ。


冒険者初日か、頑張れよ。と気さくに言われて心がほっこりした。こんなおじさんにほっこりしてしまうなんて頭がおかしくなってきたかもしれない。と頭を左右に振ってぺちぺちと手のひらで自分の頬を叩く。


この世界では魔王がいくつも存在しており、それに比例して魔物の数も多く存在している。中には魔王の側近などと呼ばれる魔物も居て魔王ほどではなくとも強いのである。


死んでも復活してくる不死身の魔王“ロッソ”。

驚異の回復力で必殺技をも無効化にする回復の魔王“ヴェルドーラン”。

多くの魔物に愛し愛されそして従われる愛主従の魔王“ローサ”。

絶大な支持力と攻撃力を持つ魔王の中の魔王“ギアロ”。

いつまで経っても姿を表さない遊び人の魔王“ヴィーブ”。

唯一無二の人間でありながら魔王界トップに君臨する魔王“ヴィオラ”。


ヴィーブとヴィオラに関しては噂程度であるらしく実在しているかすら分からないらしい。

その他の魔王とは誰かしらは戦ったことがあるのだが勝利したことは一回もないという。


他にも色々聞いたので頭の中でメモすることにした。


いつか戦える時が来るのかなと考えつつ、冒険者のギルドに向う。

そこでも魔王の話を聞きながら討伐のクエストを受け付けるのであった。



《Day1夕刻》


痛みが俺を襲う。背中に付けられた大きい爪痕が、心臓を潰す勢いで殺しに来ている。俺には抗う手段など無かった。


俺の鮮明な赤色の体液が、緑の綺麗な自然に汚らしくぶち撒かれる。目の前の泉には夕日が映り、今が夕刻であると伝えてくれているようだ。だが、そんなことを今分かったところでどうにか出来るような話ではなかった。緑と赤の綺麗なコンストラストに目が眩む。だんだん景色がぼやけてきてぐらっと頭が回った気分になる。

今更ながらに目が眩んだのは自分の血が足りていないからだと理解した。人間の血は何割か減少すると致命傷まで発展してしまうらしい。もちろんそれ以上の血を排出すればそれだけ死亡率も高まる。

今出てきている血の量自体は少ないのだが、傷が深すぎた。このままでは自分の意志とは関係なく血が溢れ、いつか死に至るだろう。

血の足りていないこの脳では物事を考えるのは非常に限度があった。


Lv1。ステータスも何もかもが綺麗に1という数字で揃っている。今朝、異世界転生し冒険者になった俺には逆らう術など一つも無かったのである。


Lv1の新米冒険者でも倒せるような魔物を倒しに行った。はずなのだが、会ったのはこの魔物だ。

血を求めていたのか、俺を見るなり急に襲ってきた。俺はこれが一番弱い魔物かと思っていたが違うのかと悟った。攻撃力が段違いである。俺はもう長く続かなくて、すぐ息が絶えるだろう。


目の前で「がルルルゥ……」と声を荒らげる狼に何度も何度も執拗に全身をいたぶられた。その苦しみから逃れようと、照り輝く夕日を映す泉に身を投げる。

ぐちゃぐちゃと自身の身体が蝕まれていく。半分意識のない脳内でこれは毒なのか、はたまた蟲なのかとそんなことを考える。

どちらであろうが、もうすぐで生命の灯火が燃え尽きる俺には関係の無い話なのだろうが。


ーー「世界一短い異世界だっただろうな。」


そんな場にそぐわないことを心に思いながら。



星狼スターウルフは獲物を殺せて満足したようでその場を去ってゆく。きっと次の対象を見つければその者を襲うのだろう。

彼が去った後、死体のみが残された空間で一つの声が響いた。それはさながら機械のような声で、女性のようだった。音程が取れておらずところどころおかしい所もある。

機械の声を響かせる彼女は誰に聞かせるでもなく義務のように言うのである。


『《Day1夕刻》に死亡を確認。これより《Day1Part2朝刻》に移ります。確認作業が入ります。

>【持ち物:魔物図鑑】を追加しました。

>【魔物図鑑:星狼スターウルフ】を追加しました。

>【称号図鑑:初めての魔物】を追加しました。

>【称号図鑑:初めての他殺】を追加しました。

>【スキル図鑑:爪斬クロウスラッシュ】を追加しました。

>【スキル図鑑:爪斬クロウスラッシュ】の解析を実行します。失敗しました。

>【魔物図鑑:蟲毒之泉バグポイズンフォウンテ

>【スキル図鑑:蟲毒バグポイズン】を追加しました。

>【スキル図鑑:蟲毒バグポイズン】の解析を実行します。成功しました。

>【スキル図鑑:蟲毒バグポイズン】の解析により【スキル図鑑:蟲召喚バグスモンス】【スキル図鑑:ポイズン】を追加しました。

>【死に図鑑:殺害死(斬)】を追加しました。

>【死に図鑑:毒死】を追加しました。

また、このスキルなどは次に起きた場合実行可能になります。消費されるHPやMPは0です。

そして、死亡回数が1から2になったため、レベル以外の能力値などを1増やします。詳細は、

>【HP:1→2】

>【攻撃:1→2】

>【防御:1→2】

>【回避:1→2】

>【回復:1→2】

です。

確認作業が終了した為、これより《Day1Part2朝刻》に移るための解析を実行します。成功しました。

解析の成功により 《Day1Part2朝刻》に移ることが可能となりました。

時間を戻し身体を復活させます。成功しました。

これより《Day1Part2朝刻》に移ります。』


機械の女の声は、それを言うと何も無かったかのように黙ってしまった。そこには死体のみが転がっていた。

初投稿の作品です。


異世界の説明が多いのですが、わざとです。是非この回の説明覚えておいてください。


お絵描きするのも好きだからいつか表紙描きたいなとか思ってたりするけど、絵に自信が無いから描けない。


ー作者の日記ー


そう言えばこの前、知ったんだけど傀儡ってかいらいって読むんだね。ずっとくぐつだと思ってて、授業で聞いた時目が点になった。

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