5:アレウト国内侵攻
少しオーバーしてしまいましたが、一週間以内に投稿できました。やっぱり戦闘シーンを描くのは難しいですねぇ。
午前6時16分、アレウト国マリシ地区、第十二黒竜騎士団駐屯地。私、ビクトアが何時ものように愛騎の世話をしていると、同じ騎士団に所属しているジルが血相を変えて走って来た。
「大変だ!」
そのただ事ではない様子に、私以外の団員も彼の元に集まった。
「どうしたんだ?ジル」
ジルは切らしていた息を無理やり整えると大声で言った。
「さ、サマリア地区が何者かに攻撃された!」
「「「「⁉︎」」」」
私を含めその話を聞いた団員全員が驚いた。聞き間違えかと思い聞き直す人もいる。
「間違いない、ここからでも黒煙が見えている」
それを聞いた私達は我先にと建屋から飛び出した。そしてサマリア地区がある方向を見てみると、火山が噴火した時と同じ位の量の黒煙が見えた。
「敵は何者だ?」
まずそこが気になった。こんな事が出来る奴はそんなにいない。大規模な魔術師軍団による攻撃かともおもったが、それだと軍団がこの国に近づいた時点で分かる。
「分からない、敵の姿は見えないんだ」
こんなに大規模な攻撃を受けたのに敵の姿が見えないと言うのは不自然だ。団員1人が事故の多い火炎魔石を疑ったが、他の団員に否定された。
「火炎魔石が一斉に暴走したんじゃないか?」
「街中の魔石が一斉にか?いくら何でもあり得んだろ」
あーだこーだと色々意見を言い合っていると、空からキィィィィィンと聞き慣れない音が聞こえて来た。しかもその音はここに近づいて来ているようだ。音の聞こえて来る方向を見ると、灰色の竜らしき物をがこちらに向かって来ていた。
「・・・ッ‼︎」
そいつがここに向かって急降下して来たのを見て確信した。奴は敵だ。
「敵襲ッ‼︎」
しかし今の私にはこうやって叫ぶことしかできなかった。
第1攻撃目標を攻撃する為にアレウト国内に浸入した第一次攻撃機隊は24機は4機1組になって各敵駐屯地を攻撃しようとしていた。Su-25攻撃機4機が第1攻撃目標の1つである黒竜騎士団駐屯地に向かって一斉に60°くらいの角度で急降下している。すでにロケット弾の射程距離内に入っている。後は撃つだけだ。
「アゴーニ!」
両翼のハードポイントに搭載された合計6つのB-8M1(20連装)ポッドの外側2つから|80mm貫徹ロケット弾「S-8B」がシュバババババババッ‼︎と早い連射速度で撃ち出される。その光景は機銃掃射ならぬロケット弾掃射だ。竜がいる建屋は木製なのでS-8Bロケット弾はいとも簡単に天井を貫通し、中で翼を休めていた黒竜の背中に命中。いくら硬い鱗を身にまとっている黒竜でも800mmの硬化コンクリートを貫徹出来る貫徹弾に耐え切れるわけがなく、一撃で死に至る。竜は硬いと聞いたので念のために貫徹弾を持って来たが、黒竜相手では完全にオーバーキルだったようだ。まだ未使用のB-8M1ポッドが4つ、一度の攻撃でB-8M1ポッドを2つ同時に使うので後2回ロケット弾で攻撃できるがのだが、建屋は炎上しそのほとんどが使用不可能になっている。これ以上の攻撃は不要と思ったが、奴はファンタジー世界のファンタジーな生き物だ。もしかしたらまだ生きているかもしれないので再度攻撃を仕掛けることを決めた。
「クラーク01から各機、念の為だもう一度攻撃する」
《《да!》》
一度駐屯地を通り過ぎたSu-25 4機は右に旋回してさっきより低い高度から駐屯地の右側にもう一度ロケット弾攻撃を決行。ロケット弾がなくなるまで撃ち続けた。撃ち終わると機体を水平に戻し駐屯地の状況を旋回しながら確認した。建屋内にいた黒竜15匹は一瞬のうちに全滅し、建屋自体も跡形がないくらい崩れている。
「こちらクラーク01、第1攻撃目標の1つを破壊。次目標に向かう」
街中が燃え上がり大量の黒煙の立ち上るサマリア地区上空をSu-25は飛行して行く。少し離れた所にはロケット砲の第2波が飛来し、辛うじて無事だった所もすぐに炎に包まれて地獄に早変わりする。しかし、そんな地獄の中からも反撃が来た。球体の淡い水色のエネルギー弾のような物が散発的にだが飛んで来たのだ。恐らく生き残った魔術師が撃って来ているのだろう。だが、弾速が遅いので高速で飛来中のSu-25には掠りもしない。パイロットは気にせず攻撃目標に向かった。サマリア地区の南西にある内地軍駐屯地、これが2つ目の攻撃目標だ。水平飛行のまま機首を内地軍駐屯地に向ける。
「投下用意・・・・投下‼︎」
Su-25の編隊が後少しで内地軍駐屯地上空に差し掛かろうとした時、1番内側にある2つの2連装パイロンに吊るされている合計4発のFAB-250(250kg)が一斉に投下される。無誘導爆弾なので多少のばらつきはあったものの4機から投下された16発のFAB-250は正確に兵舎などに命中。その豊富な炸薬で建物と人を吹き飛ばした。しかしSu-25の攻撃はまだ続く。
「グランドにまだ歩兵が残ってるぞ、逃すな!」
一旦駐屯地から距離を取ったSu-25編隊は先程と同じように旋回して機首を駐屯地に向けると、屋外にいた兵士達に向かって余っていたロケット弾を全弾発射した。直ぐにロケット弾が着弾し、爆煙と舞い上がった土煙で歩兵が見えなくなる。
「ついでに食らえッ‼︎」
グオォォォォォォォッ!っと機首左側に搭載しているGSh-30-2から重い発射音と共に対人/対装甲物用に用意していた30ミリ焼夷榴弾弾が毎分3.000発と言う恐ろしい連射速度で撃ち出される。なんとかロケット弾攻撃を免れた者や怪我をして動けなくなった者も含めて全員30ミリの餌食になった。A-10攻撃機のアベンジャーより威力は劣っているが、それでも30ミリの威力は絶大だった。
「クラーク01からCPへ、我々1班は全目標の無力化に成功。他の班と合流次第帰投する」
《CP了解、よくやった》
このようにして第1攻撃機隊は各基地や駐屯地を攻撃して無力化して行き、アレウト国の防衛力は著しく低下した。アレウト国の後方まで侵食した戦闘爆撃機隊も基地や駐屯地を爆撃して行き、さらに接近中だった敵増援部隊にも爆撃。これによりアレウト国に増援が来るのに時間がかかってしまう。増援が来るまでは今ある戦力で戦わなければいけないが攻撃機隊の攻撃により内地軍及び黒竜騎士団は壊滅状態、残りの戦力で今から来る“津波„には耐え切れないだろう。
アレウト国から南東に800メートル。ついに108両もの戦闘車両がアレウト国内に浸入しようとしていた。目の前には巨大な砦がそびえ立っており、これが魔法なのだろうか。砦から多種多様な色や形をしたエネルギー弾のような物が飛んで来て着弾と同時に派手に爆発する。T-72Bに乗る第2戦車中隊隊長兼車長のレナート中佐はその様子を外部カメラで見ていた。
「ビビらず進め、敵さんが、撃って来る弾は榴弾みたいなもんだらかこいつに効くわけない」
さっきから敵が撃って来ている弾は地面や装甲に当たった瞬間爆発している。つまりこれは貫通力が無いのだ。もし戦車に当たってもただ派手に爆発するだけで戦車には全くダメージが入らない。しかも射程距離ギリギリから撃っているようで、弾が当たる気配は全く無い。爆炎の中進撃していると突然通信が来た。
《Ягуарから戦車部隊へ、うるさいのは任せろ》
次の瞬間、レナート中佐の乗るT-72Bの上を低空飛行するMi-35M攻撃ヘリが通過して行った。Mi-35Mは砦に急速接近するとスタブウィングに2つ搭載しているB-13L1ランチャーから2発 S-13Tロケット弾(タンデムHEAT弾)が発車される。直径122mmの極太ロケット弾は白い煙の尾を引きながら真っ直ぐ砦に向かって飛んで行き、そして突き刺さった。このS-13Tロケット弾は厚さ約1メートルものコンクリートを貫くことができるので砦の壁なんて紙同然である。
派手な爆発が起こり、砦の壁の一部が崩れ落ちる。他の砦にも同じように攻撃し、砦からの攻撃がピタリと止んだ。砲塔上部にある戦車長用のハッチから上半身を出して周りの状況を確認したレナート中佐は砦の上を飛び去って行くMi-35Mを見ながら礼を言った。
「第2戦車中隊からヤグアールへ、支援感謝する」
《良いってことよ。俺達が支援してやるから戦車部隊の皆様は安心して進んでくれ》
「分かった。頼りにしてるよ」
レナート中佐は通信を終えると車内に戻ってハッチを閉めた。
《戦車連隊隊長から全車へ、これより我々はアレウト国に突入する。市街地戦になるからな、伏兵に注意しろ。BMP-Tは戦車の死角から突っ込んで来る奴を蹴散らせ。全車、突撃ッ‼︎》
「《Ураааааааа‼︎》」
戦車が一斉に加速し砦の残骸の山を踏み砕きながらアレウト国内、シルル地区に浸入して行く。ここはサマリア地区から南東に少し離れた所なのだが、サマリア地区へのロケット弾攻撃の際、サマリア地区の真隣であるここにも流れ弾が数発着弾し、大混乱になっていた。しかもそこに戦闘車両部隊の登場でさらに混乱が大きくなった。道は人でごった返していたが、戦車は容赦無く市民を轢き殺しながら進み続ける。さらに同軸に設置してあるPKT機関銃で前方にいる市民を容赦無く撃ち殺して行く。まるでドミノ倒しのように人がバタバタと倒れて行く。上空ではヘリ部隊が縦横無尽に飛び回り街へ機銃やロケット弾で敵ゲリラ兵掃討と言う名目で無差別攻撃が行なわれている。ドンッと言う爆発音と共に車体が揺さぶられる。
《敵兵、2時の方向!建物の3階から撃って来ている‼︎》
レナート中佐の乗るT-72Bのすぐ横にある建物の3階から敵兵が魔法で攻撃して来たようだ。目的が近過ぎて狙えないのでレナート中佐は他の車両に援護要請をした。
「近過ぎて撃てない!誰か頼む!」
誰よりも早く対応したのはこの様な状況の為に作られた戦車支援戦闘車だ。砲塔を素早く敵兵のいる所へ向け、砲身を上げる。砲塔中央部にオーバーヘッド式に装備されている連装式2A42 30mm機関砲から毎分300発と低速モードで撃ち出された榴弾が敵兵の潜んでいた部屋に着弾する。狭い部屋の中で榴弾が炸裂し、まるで自爆テロが起きたかのように部屋が爆発する。建物の破片がレナート中佐のT-72Bに降り注ぐ。
「Хорошо(素晴らしい)!」
人の死体や崩れた建物の瓦礫の上を戦車は進んで行く。ガガガンッ‼︎まるで機関銃に撃たれた時のような鋭い音が車内に響く。
《前方に敵兵!》
敵兵3人が建物の1階からレナート中佐の乗るT-72Bに向けて弓を構えているのがレナート中佐にも確認できた。しかしその弓には矢が装填されていない。レナート中佐が頭にハテナを浮かべていると、前方の敵兵が矢のない弓の弦を引いた。すると驚くことに弓の周りに矢の形をした青く光るものが複数現れた。そして敵兵が弦を離すと同時にその光る矢が一斉にこちらに向かって飛んで来た。何とか目で追えるくらいの速度で飛んで来た光る矢はT-72Bの砲塔に当たり、まるで銃弾が当たった時のような甲高い音を立てながら明後日の方向に弾き飛んで行った。流石にT-72Bの装甲を貫通させることはできないようだ。
「Игорь!奴らに榴弾をぶち込め‼︎」
レナート中佐が砲手にそう言うとイーゴリは素早く反応し、榴弾を装填して砲身を敵兵にいる建物に照準を合わせた。
「準備よし!」
「アゴーニ‼︎」
凄まじい爆音が車内に響き、反動で少し車体が後ろに傾く。125mmの砲弾は目にも留まらぬ速さで飛んで行き建物の1階に命中、大爆発を起こして建物が崩れて3回建ての建物が2階建てになった。先に行われた航空攻撃のおかげで、地上部隊に攻撃して来る奴は殆どいなかった。時々剣や槍を持って戦車などに無謀にも突っ込んだり、魔術師が様々な魔法でゲリラ的に攻撃したりと少なからずも抵抗して来る奴がいたが、戦車やBMP-Tによって呆気なく蹴散らされて行く。どんどんアレウト国内に侵攻して行く戦闘車両部隊。だか最終侵攻目標であるアレウト国の王宮までにはまだ時間がかかりそうだった。
次回は少し長めに書く予定なので投稿が遅くなると思います。なるべく早く投稿できるように頑張りますので、待っててください。それと、コメントお待ちしております。