4:異世界に響くはカチューシャの歌声
大戦争を!一心不乱の大戦争を!
初めて書く戦闘?シーン。やっぱり難しいです。
そして投稿が遅れてしまいすいません。次回はなるべく早く投稿できるように頑張ります!
午前5時00分、ロシア総合司令基地作戦指令本部。
「カマニディール、全軍準備完了しました」
各基地からの報告を聞いたカチューシャが司令席に座る佐藤に言った。
「分かった。マイクを貸してくれ」
カチューシャから無線機を受け取った佐藤は無線のトークボタンを押す前に一度深呼吸をし、そしてトークボタンを押し込んだ。
「おはよう諸君・・・いや違うな、おはよう!同志諸君!作業しながらで良いから聞いてほしい。1時間後我々はロシアで・・いや、人類で初めて異世界人と戦うことになる。我々ロシアは古代から今まで列強国の一員だった。そしれそれは異世界でも変わらない!異世界の連中に死の恐怖を教えてやろう!連中に我々の軍靴の音を教えてやろう!今日は我々にとって記念すべき日となるであろう。征くぞ同志諸君。侵略の狼煙を上げろ、全世界に見える程の狼煙を上げろ。全ロシア軍に伝達、バグラチオン作戦開始!」
作戦開始の命令を受けたロシア陸・空軍が一斉に行動を開始した。各空軍基地からはMig-21SM《15》戦闘機やMig-29《9.14》戦闘機、Su-24M戦闘爆撃機、Su-34戦闘爆撃機、Su-25 Грач、Su-25T攻撃機が離陸して目標に向かって行く。地上ではT-72B主力戦車とT-90A主力戦車の混合部隊と戦車支援用のBMP-T装甲戦闘車両が行き、その後ろからはBTR-82とBMP-2を主力とした兵員輸送部隊と2K22Тунгуска(自走式対空砲)部隊がが続く。Mi-8ヒップCやKa-60カサートカ、Mi-26などと言った輸送ヘリ部隊とそれを護衛/支援するMi-28D攻撃ヘリが各基地から次々と飛び立ち、兵員輸送用のMi-24VとMi-24D、支援攻撃用のMi-35MとMi-24攻撃ヘリもそれに続いて行く。
第1次侵攻部隊の戦力
戦闘機20機
戦闘爆撃機42機
攻撃機24機
戦車60両
歩兵戦闘車20両
装甲兵員輸送車18両
装甲戦闘車両20両
自走式対空砲10両
中型輸送ヘリ20機
大型輸送ヘリ14機
多目的ヘリ12機
強襲ヘリ(Mi-24VとMi-24D)20機
攻撃ヘリ(Mi-28DとMi-35MとMi-24VP)30機
空挺部隊総兵力2008人
機械化歩兵総兵力226人
本当はもう少し戦力を投入したかったのだが、佐藤が攻撃を急がさせた結果こうなってしまった。空挺部隊の兵士の数が多いのはMi-26大型輸送ヘリに120人も人を乗せることが可能だからである。機械化歩兵は第2次侵攻部隊から大量投入する予定。まず戦いの火蓋を切るのはアレウト国から2キロ離れたところに集結している砲撃部隊。第1次砲撃部隊第1部隊の編成は以下の通り。
122mm自走多連装ロケット砲BM-21「グラート」24
両
220mm自走式多連装ロケットランチャーBM-27「ウラガン」20両
300mm多連装ロケットランチャーBM-30「スメーチ18両
220mm多連装ロケットランチャーTOS-1「プラチーノ」18両
第1次砲撃部隊第2部隊
自走榴弾砲 2S19M1「ムスタ-S」18両
自走榴弾砲 2S19M2「ムスタ-S」10両
自走砲 2S3「アカーツィヤ」152mm自走榴弾砲20両
自走砲 2S7「ピオン」203mm自走カノン砲20両
これで砲撃支援の準備もバッチリである。
「カマニディールこちら第1砲撃部隊。全ロケット砲の砲撃準備完了」
《了解・・・攻撃を許可する!》
「Да(了解)。全車、砲撃準備!」
全多連装ロケットランチャーが一斉に旋回しアレウト国に照準が合わせられる。
「アゴーニ!」
命令が発せられた瞬間、全多連装ロケットランチャーからロケット弾が凄まじい速さで次々と撃ち出されて行く。多連装ロケットランチャー合計70両からの一斉発射は凄まじく、発射した時に出る真っ白な煙での視界はほぼゼロになり、自分の声も聞こえないほどの騒音が辺りを支配する。2.036発ものロケット弾がオレンジ色の炎をたぎらせながら大空に・・いや、アレウトに向かって飛翔して行った。
午前5時54分、アレウト国サマリア地区。
「・・・・んぅ・・」
ふと太陽の暖かくて眩しい光を感じて、私、アリサは目を覚ました。でも布団からは出ない。少しだけ目を開け微睡む。暖かい気候のスミール国からここに来た私にとってはアレウトの朝はやっぱり冷える。この自分の体温で良い感じに温まった布団がとても心地いい。二度寝したいという誘惑に負けそうになるが、渋々起きることにする。
「ふぁぁ・・・・うぅ・・寒い」
あくびをしながらゆっくりと体を起こして布団から出ると、外の冷気が一気に襲いかかってくる。目を擦りながらヘッドから降りてのろのろとリビングに移動すると壁に描かれた手のひらくらいの大きさの小さな魔法陣に手を当てる。すると壁の中に仕込まれた火炎系魔法石が作動して徐々に部屋が温められる。これは北国の裕福な国だけが持つ物で、暖炉より早く部屋が暖まる。でも火炎系の魔法石を使っているので時々暴走して火災や爆発事故を引き起こす事があるとここ出身の友達が言っていた。部屋が充分に暖まったところで私は寝間着を脱いで何時もの私服に着替え、背中まで伸ばした自慢の金髪を1つに纏めた。身支度をしていると不意にコンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「はぁーい」
ドアを開けるとそこにはアレウト人特有の銀髪を肩にかかる位まで伸ばした若い女性がいた。私の親友ミラだ。
「あ、おはようミラ。」
「おはよう。お邪魔しても良い?」
「良いわよ」
私はミラを家の中に入れるとドアを閉めた。ミラはコートを椅子に掛けて座った。
「今日はちゃんと起きれたみたいね」
「起きれるわよ、子供じゃ無いんだから」
私がそう言うとミラはクスッと少しだけ笑うと私の声に似せて喋り始めた。
「うぅ〜寒い〜とか言ってなかなかベッドから出てこなかったのは誰だったけなぁ〜」
そこまで古くも無い恥ずかしい過去を掘り起こされて、私は顔を赤くした。
「もぉ〜恥ずかしい過去を振り返らないでよぉ」
「あぁ〜あの寝起きの可愛い姿を見ることができないと思うと寂しいよ」
「そのまま忘れてくれれば私は嬉しいんだけどね」
でもミラは記憶力が良いので多分これからもずっと言われ続けることになるんだろうなぁと思った。
「で、どう?もうここには慣れた?」
私がここに来てから5ヶ月くらいたった。でもやっぱり雪国の暮らしはまだ慣れない。
「うーん、やっぱりまだ余り慣れない」
「そっか、まぁそうだよね。南国の暖かい所からここに来たんだもんね、そりゃぁ慣れないよ」
「小樽に溜めていた水が凍っていた時なんてビックリしたわ」
確かその時私はミラに「これは魔物の仕業に違いないわ!」と言ってミラに爆笑されたっけ。雪でさえ初めて見る私にとって、ここは知らないことだらけだ。
ドゴォォオォォン!
「「⁉︎」」
ミラと楽しく雑談をしていると、突然外から爆発音が聞こえて来た。
「な、何⁉︎」
窓から外を見てみると少し離れた所から黒煙が上がっている。驚いている私に対し、ミラは落ち着いていた。
「あちゃ〜また火炎系魔石が暴走したのかな」
暖房器具として使っているこの火炎系魔石は利点が沢山あるが、暴走して炎上または爆発することが多々ある。今の爆発もそれだとミラは思ったが、その予想はすぐに覆された。ボン、ボンボンッ!と同じような爆発音が別の所から連続で聞こえて来た。その回数の分黒煙が上がる。何かがおかしいとミラがそう思った瞬間だった。街のあちこちで爆発が起き始めた。彼女達いや、この街の人達は分からないだろう。これがロケット弾による攻撃であることを。9M528、9M552破砕性弾頭とサーモバリック爆薬弾頭合計2.036発がサマリア地区に無慈悲に降り注ぐ。破砕性弾頭が建物や人を吹き飛ばし、気化爆弾の一種であるサーモバリック爆薬弾頭も同じように街を消し飛ばしていく。さらに最悪な事に、家の中にあった火炎系魔石も誘爆しとんでもない大爆発が発生する。運悪くロケット弾の着弾した所にいた人間は爆発に巻き込まれて身体がミンチより酷いことになり、火炎系魔石の爆発でも同じように人間が消し飛んぶ。近くにいなかった者も爆発した時に飛んで来た破片が当たり身体がズタズタにされる。そこかしこで大爆発が起こり、火の手が人間を飲み込んでいく。いきなりの事で状況が飲み込めず、街の焼けていく様子を見ていたアリサとミラのいる家の近くにも220ミリサーモバリック爆薬弾頭が着弾し、爆発。爆風で窓が窓枠ごと吹き飛び、アリサ達も吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。気を失いそうになったが何とか持ち堪えた。しかし聴力が奪われ、キーンと耳鳴りがするだけで何も音が聞こえなくなった。サーモバリック爆薬は燃料気化爆弾とは違い個体の化合物を気化させることで粉塵と強燃ガスの複合爆鳴気を作り出し、爆発させている。つまりサーモバリック爆薬は爆発する際、スタングレネード並の爆音を発生させるのだ。
「・・・ッ」
額に生暖かい物を感じたので触ってみると、手にヌメッとしたものが付いた。見てみるとそれは血だった。音は聞こえないが、ズンズン、ズン!っと地面の揺れを感じるのでまだあの爆発は続いているのだろう。私は怖くなり、目を瞑り背を丸めて爆発が終わるのを待った。直ぐに爆発は終わった。聴力も少し回復して来たので目を開けて立ち上がってみると、 目の前には地獄が広がっていた。爆発した時に吹き飛んだ大小様々な大きさのガラス片が身体中に刺さり泣き叫んでいる男性、出てくる臓器を必死に身体に戻そうと踠き苦しむ女性、下半身が無くなって虫の息の人など、ついさっきまで平和な時間を過ごしていた街とは思えない光景が広がっている。
「あ・・・あ・・・・」
私はただ呆然とその光景を見ていることしかできなかった。
ロケット砲の第1波がサマリア地区を火の海にしている頃、ほぼ同じ同じタイミングで空でも戦闘が起こっていた。アレウト国本土より南、哨戒飛行をしていた黒龍4匹がロシア空軍のMig-21戦闘機4機とコンタクト、すぐさま戦闘に突入する。
「食らえ!」
ヘッドオンしてこようとする黒龍にMig-21が短距離空対空ミサイルを1発発射、ミサイルは慌てて回避行動を取ろうとする黒龍の胴体に命中爆発。黒煙の中から黒龍の上半身と下半身が煙に包まれながら出て来てそのまま地面えと落下して行った。
「残りは俺が殺る!他の奴らは手ぇ出すなよ?」
Mig-21は大きく宙返りをしてもう1匹の黒龍の背中を取る。機首に搭載してある23ミリ連装機関砲が毎分3000発と言う凄まじい早さで23ミリ弾を発射し黒龍に乗っていた騎士もろともミンチにする。しかし流石黒龍と言ったところか、背中に23ミリ弾を食らっても原型を留めていた。短い悲鳴を上げて黒龍は落ちて行く。
《キーマ!前‼︎》
「ッ⁉︎」
撃墜した黒龍に気を取られており、前方から突っ込んでくる黒龍に気づくのが遅れてしまった。黒龍は足の鋭利な爪をこちらに向けておりどうやら引っ掻いて落とすつもりらしい。ミサイルは間に合わない、23ミリ機関砲で応戦する。ばら撒かれた弾は黒龍の右手翼をもぎ取ったが黒龍との距離が近すぎたため、真っ正面から衝突してしまう。時速900キロ近い速度でぶつかったのでコックピットを含む機体の前半分が粉々になり、機体の残骸が木の葉の様に落ちて行った。
《キーマぁ!・・クソッ、同志の仇!》
最後の1匹をMig-213機が機関砲を撃ちながら追いかけ回す。黒龍は生物ならではの高い機動力でMig-21の攻撃を躱し、オーバーシュートさせる。攻撃しては躱され攻撃したら躱されというのが何回か続く。
《これならどうだぁ!》
黒龍と距離をとったMig-21がK-60Mを2発連続発射、1発目はぎりぎりで避けられてしまったが2発目が急旋回して速度を失っていた黒龍に命中。更に外れた1発目のミサイルが追い打ちとばかりに落下中の黒龍に命中、合計2発のミサイルを食らった黒龍はバラバラになって落ちて行った。
《こちらПика02、制空権を確保。後は頼んだ》
尊いパイロットの命が犠牲になったが、わずか4分ほどで制空権を確保することができた。
《こちらКулак01、了解した。これより作戦行動に移る》
敵機がいなくなった空をSu-24MとSu-34からなる戦闘爆撃機隊とSu-25とSu-25Tからなる攻撃機隊が編隊を組んで我が物顔で飛行して行き、アレウト国内にまんまと侵入した。
《クラーク01からЛук隊へ、我々は予定通り第1攻撃目標へ向かう。ルーク隊は第2・3攻撃目標に向かわれたし》
戦闘爆撃機隊から緩やかに右旋回して攻撃機隊が編隊から離脱して行く。
《ルーク01了解した。デカい狼煙を上げて来い!》
《任せとけ》
攻撃機隊が一気に加速して速力を上げて目標に向かう。第1目標は竜騎士団駐屯地及び各内地軍駐屯地。
地上では108両もの戦闘車両が航空優勢を確保しているうちにアレウト国目指して前進する。雪を巻き上げながら進む光景はとても迫力がある。砲塔の横にУбить!Убить!Убить!(殺れ!殺れ!殺れ!)と書いているT-72B主力戦車に乗る第2戦車中隊中隊長兼車長のРенат中佐は操縦士のЗахаpに呼ばれた。
「車長、前方に村らしきものがありますが・・・どうします?」
車長は砲塔上にあるハッチを開けて上半身を外に出して双眼鏡で確認した。前方に報告通りイグルーや木製の小さな建物などが集まったそこまで規模の大きくない小さな村がある。
「構わず前進し続けろ、村は潰して行け」
「Да(了解)」
現在この戦車は時速42キロで走行しているのであっと言う間に村に近づく。V-92 V12気筒ディーゼルエンジンの奏でる騒音が聞こえたのかイグルーや木造の建物からちらほらと人が出て来た。村の住人は雪煙をモウモウと上げながら向かってくる戦車部隊に驚いたようであたふたし始めた。それを見たレナートは抵抗してくる奴はいないと判断、無駄に撃たないように言っておく。
「全車、火器は使うな。弾の無駄だ」
村人はもう直ぐそこにまで接近した戦車部隊に危機を感じたのか我先にと逃げ始めた。全員が村から逃げ終わるよりも前に戦車部隊が村に到達した。雪で作られているイグルーは重量45トンのT-72Вに耐え切れるわけもなくあっさりと潰されて行き、木造の建物も簡単に破壊されて行く。イグルーや建物内には逃げ遅れた者や状況を把握していない人などが居たが構わず人ごと潰して行く。レナートの乗ったT-72Bが木造の建物を破壊しながら進んでいる時に車体の下から人の断末魔が聞こえ、同時にキャタピラが人を潰して行く感覚が足に伝わって来て操縦士のザハールは少しゾッとした。前方を走るT-90A主力戦車が潰したイグルーからは大量の血が滲み出て積もった雪を黒っぽい赤色に染めている。戦車部隊の通り道となった小さな村は1分程で壊滅してしまった。しかし、そんなのはどうでも良い。我々の目標は目の前に見える幾つも黒煙を上げている街いや、国だ。
次回、大量虐殺。色々とおかしな部分があったかもしれませんが大目に見て下さい。感想お待ちしております!
「さぁ諸君、地獄を創るぞ」