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3:赤い津波がやって来る

ここの話しは飛ばしても良いかも。次回辺りから面白くなると思います。

パウダー状の真っ白な雪が降り積もる平原。日本の雪とは違い水分を余り含んでいないこの雪はフワフワしている。積もった雪に息を吹きかければ舞い上がりそうだ。そんな白銀の世界で自衛隊やアメリカ軍よりも先に異世界に喧嘩を売ろうとする軍隊がいた。

Коммандер(カマニディール)(司令官)こちら第1砲撃部隊。全ロケット砲の砲撃準備完了」

真っ白な平原に122mm自走多連装ロケット砲BM-21 「グラート」24両、220mm自走式多連装ロケットランチャーBM-27 「ウラガン」20両、300mm多連装ロケットランチャーBM-30 「スメーチ」18両、220mm多連装ロケットランチャーTOS-1「プラチーノ」18両が並んでいる。

《了解・・・攻撃を許可する!》

да(ダー)(了解)。全車、砲撃準備!」

全多連装ロケットランチャーが一斉に旋回し、ここから2キロ先にある中規模国「アレウト」に照準が向けられる。

Огонь(アゴーニ)(撃て)‼︎」



3日前・・・午後8時23分、アレウト国領内アイズ地方、ロシア軍総合司令基地執務室。誰よりも早くこの世界に転生した佐藤大翔(さとうひろと)は早速異世界侵略を始めようとしていた。

「気が早いなカマニディール」

背中まで伸ばした綺麗な銀髪が印象的な若い女性、佐藤の秘書であるЕкатерина(エカテリーナ) Тарасовна(ターラソヴナ)Виктория(ヴィクトリア)が言った。ちなみに、佐藤を含め皆んなはКатюша (カチューシャ)と呼んでいる。カチューシャは名前エカテリーナの愛称である。佐藤はテーブルの上に広げられた航空写真で作られた地図を見ながらカチューシャの質問に答えた。

「丁度近くにお手頃な目標がいたからな。それに、奴らだっていきなり自国領土内に現れた謎の軍隊をほっとか無いだろう。殺られる前に殺る、それが戦争のやり方だ」

すでに各基地では侵攻準備が進められており、ここ総合司令基地も攻撃機や戦闘機などの点検や空挺部隊の準備も行われている。執務室にもその準備の音が聞こえてくる。

「でもいきなり攻撃するのはマズイんじゃないのか?アレウト国を攻撃すれば同盟国の軍隊が反撃してくるのは火を見るよりも明らかだ。

「俺達はソ連軍の血を引き継ぐロシア軍だぞ?我々に敗北の2文字は無い。異世界の国が1つ2つ攻めて来たぐらいでは負けん!」

秘書は少し呆れた様な顔をしながら佐藤に警告した。

「強気なのは良いが慢心はダメだぞ?奴らだって一国の軍隊なんだ、舐めてかかると痛い目に合う。常に敵は自分の一歩先を行っていると思った方が良い」

「確かに慢心していたな。気をつけるよ」

カチューシャは佐藤に対して少し厳しいが、とても優秀なので佐藤も反論せず素直に言うことを聞く様にしている。

「ところで、探査の方はどうなった?」

秘書は調査報告書を出すとそれを見ながら答えた。

「味方の軍隊は発見できず。これと言って目ぼしいものも発見できず」

ここら辺は近くにあるアレウト国以外人間の住んでそうな場所が全く無い極寒の地。ずっと偵察機を出しているが人口物らしき物は発見できず、ずっと雪の大地が続いているだけ。

「はぁ〜やっぱり何も見つからんか。よし、偵察活動は中断。侵攻作戦に備えさせろ」

да(ダー)

佐藤はおもむろに立ち上がるとコートに手を伸ばした。

「何処かに行くのか?」

コートを制服の上から着てチャックを閉め、執務室のドアを開ける。

「外の様子を見てくる」

そう佐藤言って執務室を後にした。



ビュオォォォッと少し雪を含んだ冷たい風が当たり身震いをする。空は薄い灰色、パラパラと雪が降っていて、僅かに積もっている。

「旅行で北海道に行ったことあるけど、それ以上に寒いな」

ここの現在の気温は-12℃、九州出身の佐藤にとっては耐え難い寒さだ。手袋も持って来ればよかったと後悔しながら佐藤は自分の手にハァーハァーと息を吹きかけて手と手を擦り合わせる。これで手が暖かくなるのかと言うとそうでも無い。しかし雪の積もった基地を歩くと言うのは何だかワクワクする。周りの風景を見ながら歩いていると前方にハインドを発見した。何気に本物を見るのは初めてなのでテンションが上る。滑らない様に気をつけながら早歩きでハインドに近づく。

「デケェな」

近づいて改めて思った。兵員輸送能力と攻撃能力を合わせ持つこいつは全長が21.5メートルとかなり大きい。そのため運動性が低下しているのだが・・・良いところも沢山あるヘリだ。ちなみに、ハインドと言う名は北大西洋条約機構が命名したNATOコードネームであり、ロシア軍からはКрокодип(クラカヂール)(クロコダイル)と呼ばれている。ここにあるハインドは薄い灰色と白色を組み合わせた冬迷彩仕様になっている。茶色のハインドはよく見たことがあるのだが冬迷彩のハインドもなかなかかっこいいと佐藤は思った。機首下に付いているターレットを見てみるとYakB-12.7(4銃身ガトリング式12.7ミリ重機関銃)が搭載してあった。と言うことはこれはDかV型だろう。DとVは中身こそ色々と違うが見た目はほとんど同じなのでどっちかは分からない。しかし佐藤でもはっきりと種類が分かるのがいた。ハンガーの中で整備を受けている真っ黒なハインド、この基地の主力ヘリでもあるMi-35Mだ。Mi-35MはここにあるMi-24の改良型で固定脚にして計量化したり、夜間戦闘能力を向上させたり、YakB-12.7の変わりにGSh-23L(23ミリ連装機関砲)を搭載して火力を向上させたりしている。一通りハインドを見た佐藤はまた歩き始めた。時々佐藤に気づいた兵士が佐藤に向かって敬礼をして来る。佐藤も敬礼で返しながら歩く。

「お、こいつは!」

それを見た瞬間、佐藤は思わず足を止めた。視線の先には近代的な見た目のヘリがあるКа-60Касатка(カサートカ)多目的ヘリだ。1998年に初飛行したこのヘリはロシアのヘリらしくないスリムな形で、フェネストロンを採用したりしている近代的なヘリだ。余り知られていないヘリだが、普通に性能は良い。これは見ることも聞くことも少ないレアなヘリなのでハインドのときより佐藤はテンションが上る。しかしはしゃいでいるところを部下に見られたらいけないと思い平然を装った。

カマ二ディール(司令)こんなところで何をしているんですか?」

「⁉︎」

誰もいないと思っていたカサートカのキャビンからパイロットスーツを着た兵士が出て来たので少し驚いた。ヘリから降りた兵士は佐藤の目の前に立ち敬礼する。

「失礼しました。равиль(ラヴィル)少尉であります」

佐藤も敬礼をして話しかける。パイロットスーツらしき物を着ているので恐らくこの兵士はこれのパイロットだろう。

「こいつを見るのは初めてでな、少し見惚れていたよ。君はこれのパイロットか?」

「はい、自分は副パイロットです」

「準備は?」

「何時でも行けます!」

「やる気は?」

「あります!」

佐藤は満足そうに頷くと笑顔で彼の肩をポンポンと叩きながら労りの言葉をかけた。

「カサートカが飛ぶところを見るのは今回が初めてだから、今回の作戦でかっこいいところ見せてくれよ?」

「ハッ!任せてください!」

短く会話を済ませて佐藤はまた歩き始めた。ヘリコプターの格納庫群を抜けると次はロシア空軍が使用している格納庫群が見えてくる。勿論エプロンにはMig-29やSu-27、Su-25が所狭しと並んでいる。ロシア軍の名機が1箇所に集まっているのだ。なんと壮観なことだろうか。滑走路の方を見ると戦車や装甲車を満載したAn-124大型輸送機が次々と前線基地へ向けて離陸して行っている。戦争の・・いや、殺戮の準備は順調に進んでいる。佐藤は不敵な笑みを浮かべ、アレウト国のある方向を見ながら言った。

「待ってろよ異世界人・・・我がロシア軍の力!見せてやる!」



その頃、自衛隊総合司令基地の会議室ではアメリカ軍総司令長谷川と自衛隊総司令如月による「第1回日米戦略会議」が行われていた。

「はぁ⁉︎総兵力250万⁉︎」

アメリカ軍の兵士の数を聞いた如月はぶったまげていた。

「まぁ予備兵とかも合わせてだから、現役軍人はもう少し少ないから」

まぁまぁ落ち着けと言わんばかりの態度で長谷川が言う。

「それでも充分多いわ!」

如月は机をバンバンと叩きながら反論した。

「もうお前らだけで異世界侵略しろよ!」

「それは無理だよ数では異世界人の方が圧倒的に多いし」

いくらアメリカ軍の兵士が多くても異世界全土を敵に回しているので数ではどうしても負ける。物量で負けるのは火を見るよりも明らかだ。

「そこでだ」

長谷川は手を組んで何時ものゲンドウポーズをする。

「まともに戦っていたら戦力が足りなくなって異世界侵略はできなくなる。それはお前も分かるだろ?」

「あぁ」

「だから俺は”核„を使って敵を殲滅するアルマゲドン計画を考えている」

如月と如月の後ろにいた秘書の和葉は長谷川の発言に絶句した。

「おいおい正気か⁉︎核兵器を使用するなんて・・・」

もしアメリカとロシアが本気で核ミサイルとかを撃ちまくったら敵どころかこの異世界が核の炎に包まれてしまう。

「落ち着け、これは飽くまで最終手段だ。それに世界全土に核を撃つんじゃなくて相手にしたらめんどくさそうな国だけに撃つんだ」

「それでもなぁ・・・」

如月は背もたれにもたれ懸かりながら考えた。しかし実際核を使えば簡単に敵を殲滅できる。

「まぁ今度皆んなが集まった時にこれは話すつもりだからゆっくり考えとけ」

「・・・分かった、考えておく」

長谷川はゲンドウポーズをやめて普通の姿勢に戻って話し始めた。

「それと、アメリカと日本を繋げる鉄道を作りたいと思っているんだけどさ、鉄道建設予定地の偵察をそっちに頼みたいんだけど・・・良いかな?」

アメリカ軍の基地はここから南東に1000キロ行った所にある。

「いやお前も手伝えよ、自衛隊だけで1000キロも偵察すんのは無理がある」

「じゃぁこうしよう。アメリカ軍はアメリカ軍基地から500キロの所まで偵察する。自衛隊はここ総合司令基地から同じく500キロ地点まで偵察する。合わせて1000キロだ。OK?」

「オーケー。で、その鉄道の名前ってもう考えているのか?」

長谷川は自分のバッグから「鉄道建設計画書」と書かれた紙を出して如月に見せた。

「三千里鉄道って名前でどうよ?」

「三千里ねぇ・・・まぁいいんじゃね?って、この鉄道あの密林の中を通るのかよ。絶対何かいるだろ」

アメリカ軍基地と自衛隊基地の間には密林が広がっており、ここを避けようとしたらかなり大回りになってしまう。

「何かいるだろうな、絶対。森の中だから・・・エルフとか?」

「うわ、それ絶対俺達に抵抗してくるだろ」

エルフは森と共に生きる種族、木を伐採して鉄道を通そうとする俺達に抵抗してくる確率は高いだろう。

「奴らは森を熟知しているだろうからな、ゲリラ戦法で攻撃して来たら厄介だ」

「森の中でゲリラ戦とか・・・ベトナムかな?」

ベトナムと聞いて長谷川はあることを思いついた。

「あ、そうだ・・・ナパームで焼くか」

「でたぁ米帝お得意のナパーム爆弾」

ベトナム戦争の時、アメリカ軍はベトコンのいるであろう場所をナパーム爆弾で焼きまくっている。

「核と言いナパームと言い、お前はそう言うのばっかだな」

「アメリカ軍ですから」

長谷川はドヤ顔をしながら即答した。

「あぁそうだった忘れてたよ」

「じゃぁ俺は森焼くからエルフ狩りよろしく」

そう言って長谷川は手で銃の形を作り撃つふりをした。

「さらっとひでぇ事言うなお前」

「アメリカ軍ですから」

「それに俺達は自衛隊だぞ?元々は自分の国民を守る為の組織だ。そんな自衛隊がエルフを虐殺するのはどうかと思うんだけど」

「諦めろルーキー、これが戦争だ。そして俺達は侵略者なんだ、相手を殺すのを躊躇っていたらダメだ」

「・・・・まぁそうだな、でもお前も半分は手伝えよ?」

「りょーかい」

こうして着々と異世界戦略への準備を進める日米であった

諸君、私に付き従う大隊戦友諸君。

君達は一体何を望んでいる?

更なる戦争を望むか?

情け容赦のない糞の様な戦争を望むか?

鉄風雷火の限りを尽くし三千世界にカラスを殺す、嵐の様な闘争を望むか?

次回、アレウト国侵略開始

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