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17:紅蓮の焔 前編

お待たせしました。エルフ殲滅作戦いよいよスタート。まぁ今回はそんなに戦闘シーンはないですが。

今は・・何時なんだろうか?時間を確かめる手段がないため分からない。早く爆撃予定範囲外に逃げなければ日・米による大規模爆撃に巻き込まれてしまう。しかし現在田中と井上3等陸曹はエルフに捕まってエルフの村に連れて来られていた。今2人は木製のツリーハウスのような建物に両手両足を縄で縛られた状態で閉じ込められており、全く身動きが取れない状況だ。さっきまで数人の男性エルフがエルフ語で何か叫びながら2人に殴ったり蹴ったりしていたがしばらくすると気が済んだのか何なのか帰ってしまった。田中は仰向けの状態のまま井上3等陸曹に話しかけた。


「あいつら・・エルフ語で何て言ってたんでしょうかね」


横向きに寝そべっている井上3等陸曹は口から血をぺっと吐き出した。


「さぁな。エルフの村へようこそ、とでも言っていたんじゃないか?」


「歓迎されているようには見えませんでしたけど・・・って言うか冗談言えるってことは結構大丈夫そうですね」


「いゃ〜ある訓練しているとは言え痛いもんは痛いからな?顔面痣だらけだからな?」


田中は井上3等陸曹の方をチラリと見た。本人の言った通り井上3等陸曹の顔面はまるで試合を終えたボクシング選手みたいになっていた。


「・・・それ、見えてるんですか? 左目。めっちゃ腫れてますけど」


「全く見えないって訳じゃないが殆ど見えんな。でも右目じゃなくて良かったよ。で、俺達 身ぐるみを剥がされた訳だが何か武器になるもの残っているか?」


エルフに捕まった2人は89式小銃は勿論、9ミリ拳銃やサバイバルナイフ、ヘルメットや防弾チョッキなどと言った装備品をほぼ全部取られていた。


「え〜と、腰のポケットに信号弾1発と信号拳銃1丁、予備として取っていたM26手榴弾1つですね」


これらの物は腰のファスナー付きのポケットに入れていたもので、ファスナーと言うのを知らないエルフ達はこれを見落としていたのだ。


「 三曹の方はどうです?」


「折り畳み式の小型ナイフ1本、信号弾1発と信号拳銃1丁。そしてスマホ」


「よし、じゃぁそのナイフでこの縄を切ってさっさと逃げましょう!」


「言われなくても」


そう井上3等陸曹が言うと、田中の手を縛っていた縄が解けた。足を縛っていた縄も同じように解けた。体を起こすと右手に折り畳み式の小型ナイフをドヤ顔で持った井上3等陸曹がいた。


「もうやってるよ」


田中はフッと笑うと井上3等陸曹の手を借りながら立ち上がった。


「流石です」


「まぁな・・ッ‼︎」


「‼︎」


2人が話しているとこの建物の玄関の方からこちらに近づく足音が聞こえて来た。こちらに来ているのは恐らく2人。井上3等陸曹がドアの右側の壁の方を指差し、それを見た田中は彼のやろうとしている事を察し指示された所に小走りで向かった。田中がドア右側の壁に着くと反対側の左側の壁に井上3等陸曹は着いた。お互い頷き合い田中は自分の手を縛っていた縄を、井上3等陸曹は折り畳み式ナイフを構えて音の主がやって来るのを静かに待った。ドアノブが回転しゆっくりとドアが引かれる。俺達の姿が見えない事に驚いたエルフ達が部屋の中に入って来た。まず最初に入って来たエルフの首に田中が素早く縄を巻きつけ部屋の中に引き摺り込み、首の骨りそうな勢いで思いっきり締める。次に後ろにいたエルフの首 目掛けてを井上3等陸曹がナイフを突き刺した。声もあまり出せず苦しむエルフを同じように部屋の中に引き摺り込みナイフを抜いた。首を思いっきり刺されたエルフはその場に倒れ大量の血を出しながらもがいていたが直ぐに動かなくなった。田中により首を絞められていたエルフも同じく動かなくなった。


「・・・さて、どうする?」


「逃げるしかないでしょ。て言うかそのスマホで連絡取れないんですか?」


井上3等陸曹はポケットからスマホを取り出して田中にホーム画面を見せた。


「圏外だ」


「あちゃ〜」


井上3等陸曹は殺したエルフが腰に下げていたククリナイフによく似た大型のナイフを手に取った。


「とりあえず、さっさとここから逃げないと爆撃に巻き込まれてしまう。まぁ89式とかは取られてしまったから武器は現地調達だな」


「はぁせめて9ミリ拳銃だけでもあれば心強いんだけどなぁ」


と言いつつ田中も殺したエルフからククリナイフを取った。


「無い物ねだっても仕方ない。今ある武器で戦うしかない」


「分かってますよ」


「・・よし、行くか」


「はい!」


井上3等陸曹はドアノブを掴みゆっくりと開け、近くに敵がいないか辺りを見回す。敵の姿も気配は無かったので井上3等陸曹は左手を振り上げて後方の田中に「来い」とハンドサインで指示する。先に井上3等陸曹が縄梯子を使って地上に降り、後から田中が続く。そんなに高さは無かったので直ぐに地面に着いた。


2人は身を低くしてなるべく足音がしないようにゆっくりと周囲を警戒しながら進む。向かうは森の中、そこに見つからず逃げ込めば追っ手もこちらを探し難いだろうと考えたのだ。しかし2人の入れられていた建物はこの村のほぼ中心地点にあり、どの方向に行っても森まで少し距離がある。なるべく人の少なそうな所を選びながら2人は進む。建物の横を通っている時に中から話し声が聞こえて来きた。どうやら中には複数のエルフがいるようだ、気づかれないようにしないと。と田中が考えていると先頭を歩いていた井上3等陸曹が急に止まり左腕を目一杯伸ばし手のひらを広げた。その合図を見た田中は直ぐにその場で止まった。ククリナイフを持つ右手首を他の指は広げたまま左手の人差し指、親指で掴み、そして左手を右手首から離して人差し指と中指を立てた。今までのハンドサインを訳すと「止まれ、敵2名発見」と言う意味である。


井上3等陸曹が家の角の方を指差す。こちらからは死角になっており見えないが少し近づいて分かった。話し声が聞こえて来たからだ。井上3等陸曹は田中の耳元まで近づき小声で話しかけて来た。


「奴らがいる限り前には進めれない」」


「音で誘き寄せる事とかできませんかね?」


「下手すると建物の中にいる連中まで出てくるぞ」


「う〜ん・・・ここを迂回して進みますか」


「そうしよう」


進路を右に変えて2人は進む。途中こちらにエルフが1人近づいて来たが、こちらの姿を見られるよりも速く井上3等陸曹が始末した。森に近い位置にツリーハウスがあったお陰で目的地の森はすぐそこまで近づいていた。人気のあまり無い道の端を歩いていると近くからパンッ‼︎と言う破裂音が聞こえて来た。


「銃声!」


その音は2人にとって聞き慣れた音、89式小銃の発砲音だった。田中は井上3等陸曹の方を見て小声で話しかける。


「どうします?行ってみますか?」


「・・・一応行ってみよう。そして取り返せそうだったら取り返す」


「了解」


2人は音の聞こえた左側に向かってゆっくりと進む。建物を4軒通りずぎたところで話し声が聞こえて来た。声のする方へ2人は慎重に進むと目の前に開けた場所があった。一瞬畑か?と考えたがそれらしいものが無い。だが大量に置いてある弓と矢、そして20メートル位先にある矢が何本も刺さった動物の絵が描かれた木の板を見てここは射撃場だと気づいた。建物の影からその射撃場を観察していると射撃場の右端でガタイの良い男性エルフが7人たむろしていた。


その1人が黒光りする物・・89式小銃を持っていた。男達は89式小銃や9ミリ拳銃を眺めたり触ったりしていたが、これが何なのか全く分からないという感じだった。そりゃそうだ、弓矢や剣などの武器を主に使うエルフ達にとって89式小銃などの銃と言う物はオバーテクノロジーの塊でしかない。


89式小銃を持っていた男性エルフが的に89式小銃の銃口を向け、おぼつかない手つきでトリガーを引いた。バンッ‼︎と5.56ミリ弾が放たれるがちゃんとと構えずに撃ったため的には当たらず大きく右にそれて木製の壁に穴を開けた。先程聞こえた銃声の犯人はこいつだろう。つまりこのエルフは89式小銃の撃ち方を理解していると言うことだ。これはマズイ。


「どうします?あいつ銃の撃ち方分かっちゃってるみたいですが・・」


「そうだな・・このまま大人しく回れ右して森に向かえば俺達は誰にも気づかれずに逃げれるかもしれんが・・・もし、あいつらが銃の撃ち方を他の仲間に教えたりしたらその話は伝言ゲーム方式であっと言う間に他のエルフ達に広まるだろう・・・それは阻止した方が良いかもしれん」


「でも銃の使い方を理解しているエルフがここだけとは限らないですよね。既に他のエルフが使い方を理解して仲間に言いふらしている可能だってありますし。それに、もうすぐでここら辺は爆撃で吹っ飛びますし俺達が殺す必要はないと」


井上3等陸曹は顎に手を当て数秒間考えた。そして顔を上げると田中に言った。


「そうだな。ここでドンパチする必要は無い。あそこに置いてある89式と9ミリ拳銃だけ取ってここから逃げる」


「了解」


2人はなるべく音を立てずにゆっくりと射撃場に近づく。運良くあのエルフ達は先程撃って開いた穴を見に向こうの方に行ったので89式小銃と9ミリ拳銃を置いている机周辺には誰も居なくなった。その隙に井上3等陸曹が机に駆け寄り89式小銃と9ミリ拳銃を素早く手に取り、近くに置いてあった9ミリ拳銃の予備マガジン2つをポケットに突っ込んでダッシュで田中の隠れている小屋の裏側まで戻った。田中に9ミリ拳銃と予備マガジン2つを渡すと自分は89式小銃のマガジンを取り残り弾数を確認する。弾は23発入っていた。銃の中に入っているのと合わせると24発だ。


マガジンを89式小銃に戻した井上3等陸曹はセーフティーレバーをレからタに変更した。予備マガジンの無いこの状況で連射して撃つのは好ましく無いと考えたからだ。


「行きましょうか」


「そうだな。行こう」


2人は再び森に向かって歩き出した。井上3等陸曹が先に数メートル進んで隣の建物の壁に隠れて、周辺にエルフがいない事を確認してから田中が9ミリ拳銃を構えながら小走りで井上3等陸曹のいるところに向かう。田中が来るとまた井上3等陸曹が隣の建物の壁まで走り、その後を田中が追いかける。と言うのを繰り返しながら2人は地道に進んで行く。約9分後、2人はようやく森の目の前にまで来た。身を屈めて歩くのをやめて2人は森の中に向かい走ー


「動クナ!」


ーろうとした時、後ろから片言の日本語が聞こえて来た。同時に強い殺気も感じたような気がした。田中は片手に銃を持ったまま手を上げようとしたが、井上3等陸曹は声が聞こえた瞬間に89式小銃を構えながら素早く振り返り声の主に銃口を向けた。


遅れて田中も振り返り9ミリ拳銃を構えた。そこには弓矢を構えた若い赤い瞳が特徴的な女性エルフが立っていた。いつの間に?声を掛けられるまで全く気づかれなかった。しかもこいつカタコトだが日本語を話してやがる・・・。


「・・ふむ、結構な美人さんじゃないか」


女エルフの顔をまじまじと見ていた井上3等陸曹は真顔でそう言った。


「・・武器、ステロ」


「い・や・だ」


井上3等陸曹はエルフにも分かるようにわざと区切りながら言った。井上3等陸曹の言ったことは通じたらしく女エルフは険しい顔になった。しばらく睨み合いが続いたが、突然エルフがエルフ語で叫び出した。


『私達が何をしたっていうの⁉︎ 何もしてないじゃない‼︎ 皆んなと森で静かに暮らしていただけなのに何で殺されなきゃならないの⁉︎ お父さんも兄さんも、サハナもミマも!あんた達が殺した!あの村の人達皆んな、皆んな死んだ!ねぇ!何で殺したの⁉︎何で⁉︎』


女エルフはその赤い目に涙を溜めて、構えた弓を震わせながら叫んだ。何と言っていたのかは全く分からないが、だいたい言いたいことは察することができる。


「お嬢ちゃん、悪いが俺達はー」


井上3等陸曹は女エルフに何か話しかけようとして、途中で動きが止まった。女エルフが突然その笹の葉のような尖った耳をピクンと動かして後ろを振り向いたからだ。


『な、何の音・・・?』


突然振り返りキョロキョロとしている女エルフを見て不審に思っていた田中達だったが、その音は2人にも聞こえて来た。ゴォォォォ〜と言う不気味な音が空から聞こえて来た。しかもその音は徐々に大きくなっていく。聞いたこともない音に女エルフは戸惑っていたが、田中達はこの音の正体にいち早く気づき青ざめた。音に驚いたのか木にとまっていた鳥達が一斉にバタバタと飛んで行く。


「・・・井上三曹、確かスマホ持ってましたよね?」


「あ、あぁ。持っている」


井上3等陸曹はポケットからスマホを取り出しながら言った。


「・・今、何時ですか?」


ホーム画面に表示される時間を見た井上3等陸曹は顔を引きつらせた。


「1時・・2分」


そう言った瞬間、不気味な音を出していた主がエルフ村の上空に現れた。8つのターボファンエンジンを搭載し、ベトナム戦争では第二次世界大戦時に投下された爆弾を大きく上回る量の絨毯爆撃を行い「死の鳥」と恐れられた大型戦略爆撃機、その名も


「び、B-52‼︎」


「田中走れッ!」


2人はその巨大な機体を見た瞬間女エルフを無視し全力で森の方へ走った。B-52の方に注意が向いていた女エルフは2人が逃げたことに気づくのに遅れてしまい、慌てて田中に狙いを定めて矢を放つが矢は掠りもせず横の木に刺さった。


『逃げるな!待てッ!』


女エルフも2人を追うために走り出す。その頃B-52は主翼内側下のパイロンに搭載していたMOAB(大規模爆風爆弾)をエルフ村に向けて投下していた。投下されたMOABはコースを調整するためのグリッドフィンを展開し、コンピュータとGPSによる制御によって事前に決められたターゲット(エルフ村)へとMOABを導く。音も無く落ちたMOABは地面に激突する直前にすさまじい爆発を起こす。具体的には地上から約1.8mの位置で爆発する。その威力は11トンのTNT火薬に匹敵すると言われている。MOABが空中で爆発し、爆風は下方を含めた全ての方向に広がる。だが下方への爆風は地面にあたって跳ね返り、ほんの一瞬前に発生した熱く、薄い空気中に戻ってくる。熱くて薄い空気の中だと、爆風はより速く伝わる。地面で跳ね返って戻ってきた爆風は、最初の爆発が起こした爆風に追いつき(最初の爆風は通常の空気中を進むため跳ね返ってきた爆風より広がるスピードが遅い)、2つの爆風が1つにまとまることでマッハステムと呼ばれる衝撃波が生まれ爆発の威力はより大きくなる。村の直上で爆発したMOABの強力な衝撃波は村の建物もそこにいたエルフも、森の木々も全てを吹き飛ばした。強力な爆発で大きなキノコ雲が発生する。田中や井上3等陸曹、2人を追いかけていた女エルフもその爆発に巻き込まれてしまう。

どうだったでしょうか?次回からはエルフ視点で描こうと思っています。次回の方が戦闘シーンなどは多くなる予定なのでお楽しみに。

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