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11・5:最後の砦

遅くなってしまい誠に申し訳ありません。この話は本編に繋がる話ですが読まなくても大丈夫なやつです。次の話は2週間以内に投稿する予定なのでお楽しみに。

日本人転生者救出作戦から2日後、自衛隊総合司令基地にある執務室。第1空挺団第1普通科大隊に所属する第3中隊の隊長山口拓人(やまぐちたくと)一等陸佐から提出された今回の戦闘について詳しく書かれた報告書を見ていた如月は溜息をついた。

「結局、助けることはできなかったな・・・。遺体も一部分しか回収できなかったし」

「しかし、一部分だけとはいえ冷たい海ではなく温かい大地に埋めれたのは良かったと思います」

長い艶のある黒髪を今日はポニーテールに結んだ和葉はそう言った。あの戦闘でドラゴン化した日本人の体は対艦用ミサイルによって木っ端微塵に吹き飛んでしまったがなんとか回収した頭や手、足は一部分は研究用として使われるが頭などはちゃんとした墓地に埋めてやった。

「だと良いんだけどねぇ」

ちょっと鬱な気分になっていると電話の呼び出し音が鳴った。すぐに受話器を取る。

《よぉ、今回はご苦労だったな》

電話してきたのはアメリカ軍の司令をやっている長谷川だった。

「まったくだよ。で、何の要件だ?面倒な仕事だったら断るからな」

日本人のこともあり今の如月はあまり働きたくないと思っていた。

《確かに仕事の話だが、面倒ではないと思うぞ?》

「で?その仕事ってのは?」

《うちの艦隊の長距離遠征にそっちの艦も付き合って欲しいんだよ》

「う〜ん了解、考えとくよ」

《よろしく頼むよ、詳しいことは今度話すから。それじゃ》

如月は受話器を戻すと和葉に長距離遠征艦隊を編成するように指示した。

その頃、遥か北東の地では・・・




午後1時57分。ベルマ国領内サダク地方、バートクラ。今ここを上空から見ることができたらどんな酷い様になっているだろうか。塹壕内から顔を出して辺りを見回しているルイス・ベルク陸軍兵長はふとそんなことを思った。今ここは北西に少し行った所にあるイギリス軍基地とドイツ連邦軍基地の間にある邪魔な国を潰す為の戦争が行われていた。場所はバートクラ、今ここはドイツ連邦軍とベルマ軍による大規模な攻防戦が行われている。ベルマ軍は士気が異常に高くドイツ連邦軍の圧倒的な攻撃を前にしても一切臆することなく突っ込んで来る。ベルマ国へ侵攻を続けるドイツ連邦軍は今現在、ベルマ軍最大の防衛陣地があるバートクラで足止めを食らっていた。ここにはにはベルマ軍最大の要塞があり、強力な魔動兵器や攻城兵器などが多数設置し上級魔術師なども含めた兵士も師団規模で存在する。当初は機械化歩兵だけで侵攻は可能と考えられていたが、敵の量がとてつもなく多くドイツ連邦軍の機械化歩兵部隊は物量によって押され、そしてここの防衛線でドイツ連邦軍の侵攻は完全に停止していた。ルイス兵長の所属する第37装甲擲弾兵師団も例に漏れず足止めを食らって今は塹壕に隠れていた。時折敵の要塞に配備してある先込め式の大砲を改造して作られた魔動兵器から砲撃が飛んで来る。あの魔動兵器は155mm榴弾砲並の威力があるので下手をすると味方部隊が一撃で消し飛ぶ可能性があるので要注意だ。ルイス兵長が腕時計をチラリと見てみると1時59分20秒と表示されていた。

「そろそろだな」


イメージBGM宇宙戦艦ヤマト2199より「白色彗星ディスコアレンジ」


ルイス達ドイツ連邦軍は今からこの状況を打破する為にベルマ軍の要塞へ使える兵器をすべて使った大規模な攻撃作戦を始めようとしていた。その名も「黄色作戦」。まず戦いの火蓋を切ったのはここから南に約2500キロ行った所にあるアレスピ海に待機していたイギリス海軍に所属するアスチュート級原子力潜水艦の1番艦アスチュートから発射された計6発の巡航ミサイル、トマホークブロックIV(タクティカル・トマホークを魚雷発射管から撃てるようにしたタイプ)

だ。6発のトマホークは要塞に配備してある魔動兵器に的確に命中し、派手に爆発を発生させる。さらに、魔動兵器の爆発に誘発され近くにあった他の魔動兵器も爆発する。紫色の混じった黒煙が空高く舞い上がる。トマホークが命中し爆発したすぐ後にルイス兵長達の頭上を10機のトーネードIDS多用途攻撃機が通過して行き要塞に計90発ものMk.84無誘導爆弾を投下した。Mk.84無誘導爆弾はMk.80シリーズの爆弾の中で最も威力が高く湾岸戦争中にイラクで飛行したF-117 ナイトホークの搭乗者達は、この爆弾の相当な破壊力と爆風半径を見て、この爆弾を「ハンマー」と渾名したほどだ。バラバラと絨毯爆撃のように投下されたMk.84は防衛陣地に配備されていた攻城兵器や魔動兵器を次々と破壊していき一気に防衛機能を奪った。

「全員潰されたくなかったら頭引っ込めろ!」

隊長に言われた通り頭を引っ込めると後方からギュォォォォォッ!っと4ストロークV型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼルエンジンの音が聞こえてきた。程なくしてルイス兵長達のいる塹壕の上をドイツ連邦陸軍の主力戦車であるレオパルト2A4とその改良型のレオパルト2A5が通過して行き、その後をフクス装甲兵員輸送車が続く。

「よし、行け行け行け‼︎」

車両が全て通過して行ったのを確認した隊長はルイス達に命令する。戦車や兵員輸送車を盾にしながら第37装甲擲弾兵師団は久しぶりに進撃を開始した。敵要塞からは魔術師による魔法攻撃が始まり、車両群に雨あられと降り注ぐ。しかし第3世代主力戦車で複合装甲を持つレオパルト2や重機関銃の弾ももろともしない装甲を持つフクス装甲兵員輸送車にはほとんど無意味で装甲を少し焦がす程度だ。たまに生き残っていた魔動兵器から砲撃が飛んで来るが構わず進み続ける。

「おぉスゲェ!MARSだ!」

1人の兵士が空から白色い尾を引きながら降ってくるロケット弾を目撃してそう叫んだ。MARSもといMLRS(M270)はアメリカ陸軍が開発した多連装ロケット砲で、今回はM30と呼ばれる精密誘導ロケット弾を使用しており、60〜100キロ先の目標を的確に破壊することができる。227mmロケット弾は生き残っていた魔動兵器や敵兵の隠れていると思われるポイントに次々と着弾しそのポイントからは黒煙が上がる。

順調に進撃していたが車両群に新たな脅威が現れた。突然、車両群の上を黒色の何かが通り過ぎて行く。

「クソッ!ドラゴンだ‼︎」

「撃て撃てェ‼︎」

現れたのはこの世界の軍隊がよく使用する黒龍だった。黒竜は口から火炎を放射したりはできないが、足の鋭い爪で甲冑を纏った人をいとも簡単に引き裂くことができる。戦車や装甲兵員輸送車は大丈夫だがルイス兵長を含む 歩兵部隊は殺られる可能性が高かった。ルイス兵員も隊長からの命令を聞くより前にアサルトライフルのG36Kを構え標準で装備してあるキャリングハンドル上部のダットサイトも覗かず黒竜に向かってフルオートで発砲。しかし5.56mmNATO弾で黒竜の鱗を貫くことはできず弾かれる。

「うわぁあぁぁ⁉︎く、来るなぁぁぁぁ! グガッ」

黒竜はその爪でルイス兵長の後ろにいた隊員の体を引き裂き、隊員は臓器などをぶちまけながら倒れた。

「ベン!・・・クソッ!」

いきなりの黒竜登場に混乱していたレオパルト2A5の車長コニーはペリスコープに写り込んだ真っ黒な黒竜の胴体を見て直ぐに状況を把握し、砲塔のハッチを開けて上半身を砲塔から出し、砲塔上部に備え付けてあるMG3A1 機関銃で反撃を試みた。元々がアメリカ軍からヒトラーの電動ノコギリと言われ恐れられたMG42なのでこのMG3A1も毎分1000発ほどの速さで7.62×51mmNATO弾が撃ち出される。しかし7.62×51mmNATO弾程度では黒竜の鱗を貫くことはできるわけもなく弾かれてしまうが、黒竜の上に乗っていた兵士に弾が当たり兵士は地面に落下した。操縦者を失った黒竜は敵討ちの為なのか何なのか、コニーの乗るレオパルト2A5戦車に爪を立てて突っ込んで来た。それを見たコニーはすぐさま指示を出した。

MPAT(多目的榴弾)装填!ドラゴンを撃ち落せ!」

コニーの指示によりMPATが装填されら。今回使用している多目的榴弾はアメリカ製のM830A1と言う物で、砲弾内に近接信管を組み込んでいるので低空を低速で飛行するヘリなどを撃ち堕とすことも可能だ。主砲が素早く回転し砲口が黒竜に向く。コニーはMG3A1を黒竜に撃ちまくり挑発する。黒竜が絶対に外さない距離まで近づいたのを確認するとコニーは叫んだ。

Feuer(フォイヤ)!」

次の瞬間砲口から音速に近い速度でMPATが発射され、黒竜は避けることもできずに首の付け根辺りに砲弾が命中する。多目的榴弾が炸裂し、爆煙が黒竜を包み込む。黒竜の死体は地面に墜落し2、3回転げてやっと止まった。120mmの多目的榴弾をまともに食らっときながらもほぼ体の原型をとどめているところを見ると、流石ドラゴンと思う。いや、HEAT(成形炸薬弾)とかAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)みたいな対戦車用の砲弾だったら流石のドラゴンも粉微塵だろう。戦車を中心した侵攻部隊は敵からの少ない反撃をものともせずに前進し、着実に要塞へ接近していた。要塞の周りにある塹壕内から魔術師や弓兵が戦車に攻撃を仕掛けるが複合装甲の前には無力で、傷を付ける程度しかできない。しかし戦車や装甲車の後ろを歩いていた歩兵部隊に曲射で飛んできた矢が降り注ぎ防具のおかげで致命傷にはならなかったが、複数の負傷者を出した。お返しとばかりにレオパルト2A5とA4が120mm砲で塹壕に隠れている奴を塹壕ごと吹き飛ばす。やぶれかぶれに突撃してくる兵士にはレオパルト2の同軸と車上に備え付けてあるMG3A1で掃射していく。

「敵に反撃のチャンスを与えるな!塹壕らへんに制圧射撃!」

数十両のレオパルト2戦車とフクス装甲兵員輸送車がゆっくりと前進しながら備え付けてあるMG3で敵の潜む塹壕らへんを撃ちまくる。緑色の曳光弾が塹壕の近くの地面に突き刺さったり跳弾したりたりして敵兵はその未知の攻撃に怯み塹壕に隠れる。そのうちに戦車は前進しついには敵の塹壕との彼我の距離が100メートルを切った。

「中隊止まれ!」

全戦車が敵の塹壕の前で停車する。自身も車上に備え付けてあるMG3A1で撃っていたコニー車長は撃つのをやめて、歩兵部隊に前に出るように言う。

「歩兵部隊、展開!」

「展開!」

ルイス兵長達は戦車や装甲車に隠れるのをやめてG36Kを構えてゆっくりと敵塹壕に前進して行く。戦車や装甲車は何時でも撃てるようにMG3の弾を装填してを構える。

「「ベルマ国万歳ッ‼︎」」

「うおっ⁉︎」

突然、塹壕の中から短刀や剣を持った敵兵が叫びながらルイス兵長達に突っ込んで来た。反射的にルイス兵長は銃口を敵兵に向け、トリガーを引き絞った。毎分750発の速度で5.56×45mmNATO弾が撃ち出され、敵兵は身体中に風穴を開けて倒れる。しかし別の敵が現れ剣をルイス兵長に向かって振りかざして来た!ルイス兵長は咄嗟にG36Kで剣を受け止めると、ホルスターからP8自動拳銃を取り出して敵兵の腹に5発撃ち込んだ。敵兵は鎧を着ていたが、9×19mmパラペラム弾にとっては紙切れ同然で敵は吐血するとその場にへたり込んで動かなくなった。休む暇もなく敵兵が襲ってくるので手にしているP8でまず右にいる敵に3発食らわせる。そしてこちらに向かって突撃してくる敵に4発撃ち込んで殺した。

「「うぉぉおぉぉぉッ‼︎」」

右から敵2人が短刀を手に突撃して来たので、まずこちらとの距離が近い方の奴に銃口を向け発砲。が、3発撃った時点でP8のスライドが下がりきっている、つまりホールドオープンしていることに気づいたルイス兵長は弾切れしたP8ではなく、右手に持っていたG36Kを右から左に振り回しながらトリガーを引き弾をばら撒いた。上半身に弾を食らった敵兵は勢い余ってルイス兵長にのしかかるようにして倒れた。

「臭いんだよこの野郎!どけ!」

ルイス兵長は敵兵の死体を別の敵の方に投げて敵が怯んだ隙にG36Kで死体ごと撃ち抜いた。あらかた周りの敵を排除したのを確認するとルイス兵長はP8から空になったマガジンを出して、代わりに新しいマガジンを入れてスライドストップと呼ばれるレバーを下に押し下げてスライドを元の位置に戻した。G36Kもほぼ弾切れの状態だったので新しいマガジンに交換しておく。ルイス兵長達は敵の潜んでいた塹壕内に入るとまだ生きた奴がいないか死体に弾丸を撃ち込んで確認して行く。

「クリア!」

「クリア」

「クリアッ!」

あちこちから異常なしとの報告が聞こえてきたので師団長は次の指示を出す。

「第371大隊はこの地下通路を調べろ、そして行けそうだったら地下から要塞に侵入しろ。第391 大隊はこのまま予定通り敵要塞に正面から乗り込む。いいな?」

「「jawohl(ヤヴォール)‼︎」」

ドイツ陸軍が要塞内に侵入してから要塞が陥落するまでにさほど時間はかからなかった。

本当は要塞内に入って制圧するまで書く予定だったんですが、そこは割愛させていただきました。

次回もおたのしみに!

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