10:雪中の探索
お待たせしました!第10話です。今回の話は余り上手く書くことができず少し無茶苦茶なストーリーになっております。ご注意下さい。
アレウト国シベリア地方(旧ホライズ地方)。
空は雲1つなく、青空が広がっておりいい天気だ。周りには何もなく木が数本立っているだけで、どこまでも続く雪の平原は太陽の光に反射してキラキラと輝いておりとても美しい。右側を見る遠くにエベレストの如くそびえ立っているゲンリュク山が見える。その美しい雪の平原をダークグリーンと茶色を組み合わせた迷彩柄という場違いな色の車両が3台並んで雪を巻き上げながら走っている。先頭を走るのは汎用小型軍用車両であるパジェロタイプの73式小型トラック、その後ろに人員輸送用車両の高機動車が続き、最後尾にはブローニングM2重機関銃を車上に搭載した軽装甲機動車が走る。如月直属の命令を受けて来た第39普通科連隊、第1中隊の第1北大陸派遣小隊に所属する隊員15人はそれぞれの車両に乗って救出目標の乗った魔動飛行船を探していた。4日前、魔動飛行船はアレウト国が陥落したことに気づいてかなのか何なのか、針路を変えて北西に向かったそうだ。魔動飛行船が着陸できる場所は限られてくるのですぐにどこに向かったのかは分かった。おそらく魔動飛行船はホイズラに停泊・・・じゃなくて着陸していると思われた。ホイズラは小さな国だが貿易が盛んで、魔動飛行船用の発着場が5つもあるのでそこに行った可能性が高かった。アレウトから急いでホイズラに向かっていた第1大陸派遣小隊に昨日、新たに情報が届いた。なんと目標の乗っていると思われる魔動飛行船を哨戒中だったロシア空軍のMIG-31が見つけ、敵と思い誤って撃墜したそうなのだ。ロシア軍はすぐさま墜落したと思われる所に向かったが、大吹雪に見舞われ捜索は一時中止になった。第1北大陸派遣小隊は魔動飛行船が墜落した場所、アレウト国が陥落する前はホライズ地方と呼ばれていたシベリア地方に向かいそして今に至る。ここら辺を捜索し始めてから4時間を超えようとしていた。現在の時刻、午前11時28分。
「人っ子ひとりいませんね〜」
先頭を走るパジェロの助手席に座る小田がポケットから出した単眼鏡で辺りを見回しながらそう呟いた。
「せめて魔動飛行船の破片でも見つかれば良いんだけどな」
運転席に座り、安定しない雪の上を走らせている第1北大陸派遣小隊の隊長村松も同じように呟く。
「てか隊長、魔動飛行船ってどんなやつなんですか?」
「ん?俺もよく知らないけど魔法の力で飛ぶ帆船らしいぞ?」
魔動飛行船、村松の言う通り強大な魔力を発生させる魔動力の力で浮いている帆船だ。元々はガリルス帝国が軍用に開発した物で、魔動力が生み出す魔力を大砲に凝縮して攻撃することができるかなり強力な兵器だ。また、その搭載量を生かして輸送用としても使われている。しかし魔力を発生させる魔動力は作るのも整備するのも制御するのも大変で、技術力の高い国しか開発または運用はできない。最近では技術力の低い国でも作れる魔動飛行船として魔動力の変わりに強大な魔力を込めた魔石を使って飛行する魔動飛行船も登場している。村松達は知らないが今回探している魔動飛行船も魔石を使用しているタイプだ。
「もしかして昨日の吹雪で船体が雪に埋もれていたりして」
こんな真っ白な雪の平原なので墜落した魔動飛行船は見つけやすいと思っていたが、なかなか見つからないので小田が冗談半分で言った。
「いやいや、流石にそれはないだろ」
村松と小田が話していると後ろに座っていた志村陸曹長が地図を見ながら言った。
「隊長、この平原に堕ちたとしたらすぐに分かる筈です。見つからないと言うことは見つけ難い場所に堕ちたのではないのでしょうか?例えばあそことか」
志村は窓の外を指差した。村松達は志村の指差した方向を見る。志村の指差した方向には雪を被って真っ白に染まっている森林があった。そして志村の読みは的中していた。
時間はさかのぼり、昨日の午後4時頃、シベリア地方上空。目的地のアレウト国が何者かに侵略され陥落したとの情報を遅れながら入手した中型魔動飛行船「トレシム号」は急遽針路を北西に変えてホイズラに向かっていた。
「ルルさん、外見てみてください!夕日がとっても綺麗ですよ!」
船内にある牢の鉄格子の前で1人の若い女性がが牢の中にいる人に向かって興奮気味にそう話しかけた。牢の中で体操座りで座っているのは、雪のように白くそして美しい髪を肩くらいまで伸ばした美少女と言っても過言ではない20歳位の見た目の女だ。身長は話しかけている女とほぼ同じ位で、生地の薄い奴隷服のお陰でそのすらりとしたスタイルのいい体型がよく分かる。そして彼女の1番の特長と言えるが、頭に髪と同じ白色のフサフサとした獣耳が生えており、尾骶骨らへんからは同じく白色のフサフサとした尻尾が生えていた。手と足には勝手に逃げ出せないように手錠が付けられており、手錠は壁に固定してある鎖に繋がっている。ルルさんと呼ばれたその女性は耳をピクッと反応させて項垂れていた顔を上げた。彼女ルルは目の前の女性、ルルの監視兼世話係のカタリネだけは信用していた。カタリネは奴隷であるルルにも気さくに話しかけてきて、本当の友達のように接してくれるとても優しい人だ。どうしてこんな仕事をしているのか疑問に思うほどだ。
「外がどうかしたんですか?」
「夕日ですよ夕日!とっても綺麗ですよ!」
ルルは立ち上がると小さな丸い窓を覗いた。窓から見えたのは雪の平原と、それをオレンジ色に染め上げている夕日だった。
「確かに綺麗ですね」
「ですよね!私、南国の出身ですから雪を見るのは始めてなんですよ〜」
カタリネはこの雪景色に感動したらしく、目を輝かせている。
「・・・・北海道もこんな感じだったな」
カタリネは北海道と言う聞き覚えのない単語にすぐさま反応する。
「ホッカイドウって何ですか?」
「僕の住んでいた国の中の地名です」
「確か・・・ニホンでしたっけ?」
「そうです」
するとカタリネは申し訳なさそうな顔をしてルルに謝った。
「ごめんなさい、こんな所に閉じ込めてしまって」
「良いですよ。元々私のせいですし」
「でも・・・・」
カタリネはそのまま黙り込んでしまった。しかし静まり返ったお陰で外から聞こえて来るキィィィィィィィンと言う微かな音に気づけた。最初に気づいたのは普通の人間より耳が良いルルだった。耳がピクリと反応する。
「何の音?」
カタリネはいきなりキョロキョロとしだしたルルを見て首を傾げた。
「どうしたんですか?」
その音は、急速にこちらに近づいているようだった。ルルが小さい窓から音源を探している間にも音は接近し、カタリネにも聞こえて来た。
「な、何の音?もしかして竜?」
音がハッキリと聞こえて来たところで、ルルは音の正体に誰よりも早く気づいた。
「違う、この音はッ!」
ルルは窓に顔を押し付けて船の後方を見た。ルルの目は人間の目より視力が良いのでオレンジ色に染まった空で夕日に照らされてキラキラと不気味に輝く物体を見つけることができた。と、その物体が光ったかとと思うと、いきなり光り輝く物体が2つ出現し白い雲の尾を引いてこちらにとんでもない速さで接近して来た。ルルはそれが何なのか理解するとすぐさま伏せた。いきなり伏せたルルにカタリネが心配する。
「ルルさん⁉︎どうしたんですか⁉︎」
「いいからカタリネさんも伏せて‼︎」
ルルが叫ぶと同時に、ドゴオォォン‼︎と言う爆発音と激しい揺れが船体を襲った。意味も分からず立っていたカタリネはその激しい揺れでよろけて尻餅をついてしまう。もう一度後方を確認しようと窓から後ろを見るが、船尾から出ている黒煙で視界が遮られて何も見えない。
「ヤバッ!カタリネさん、これを外して下さい!」
ルルは自分の手錠に付いている鎖を引っ張りながら必死に言った。一方カタリネは状況が掴めておらず混乱していた。
「ななな、何何⁉︎何が起きてるの⁉︎」
「敵襲です!それも相手は戦闘機ですよ!」
トレシム号の操舵室では被害報告が飛び交っていた。
「艦尾にて爆発、火災も発生している模様!」
「左舷後方の牢獄で爆発!死傷者多数‼︎」
「左舷浮力発生装置故障、左舷の浮力低下ッ!船体が傾斜します‼︎」
「左舷魔力制御装置破損、魔力漏れ発生中!速力低下します!」
船長や副長が次々と部下に指示を出していく。
「左舷浮力発生装置を急いで復旧させろ!このままでは船がひっくり返るぞ!」
このトレシム号には左右に浮力発生装置と呼ばれる物が置いてある。浮力発生装置と言うのは人間が飛行する時に使う飛行魔法の力を増強させているもので、魔動力の次に製造するのが難しいと言われている装置だ。一部の噂だとこの浮力発生装置は古代兵器を真似て作った物らしい。しかしこの装置はちょっとした事ですぐに故障するので今の爆発でも簡単に壊れてしまった。左側の浮力発生装置だけが壊れてしまったので左右のバランスが取りづらい状況になっており、このままでは左側に船体が倒れてしまい最悪ひっくり返って墜落してしまう。
「火災消火は後だ!手の空いている奴を全員魔動制御装置と浮力発生装置の修理に向かわせろ、急げ‼︎」
今は何より魔動力系統の修理が最優先だった。魔動力系統はどこか1つでも壊れていれば船はまともに飛べないからだ。
「船長、後方に正体不明の飛行物体を確認!」
「今はそれどころじゃない!修理急げッ!」
ここで後方の飛行物体を無視したのがマズかった。何故ならそれがこの爆発を起こした犯人、MIG-31Bだからだ。
「後方の飛行物体から何かが発射されました!っ⁉︎は、速い!とてつもない速さでこちらに接近して来ます!」
「何⁉︎そいつは敵か!速力最大、逃げるぞ!」
「馬鹿!魔動力系統はまだ復旧していないんだぞ⁉︎」
船長と副長が言い争っているうちに2発のそれは船尾と船体の左舷に命中、先程よりは小さめの爆発を発生させる。
「被害は⁉︎」
再び起きた揺れによろけながらも船長は被害を確認しようとした。
「後方の飛行物体、急速接近!」
「クソッ!相手は何者なんだ!」
船長が後方を確認しようと窓に顔を近づけた時、船長の目にはトレシム号の左舷を黒煙を吹き飛ばしながら目にも止まらぬ速さで通り過ぎて行く何かを見た。
「何だアイツは⁉︎」
直後耳をつんざく轟音と衝撃波が船体を襲った。衝撃波で左舷側全ての窓ガラスが割れ、ガラス片で多数の負傷者がでる。無論、顔を窓に近づけていた船長も負傷し頭から血を流していた。それは一度トレシム号から距離を取ると右に旋回してこっちに戻って来た。
「敵、正面から来ます!」
しかも次はただ通り過ぎるだけではなかった。ヴゥゥゥゥゥゥッ!と言う虫の羽音のような奇妙な音を響かせてこちらを攻撃して来たのだ。敵の攻撃は甲板に命中し、甲板が吹き飛び人は血飛沫になった。通り過ぎてから再度旋回したそれは次は先程の爆発で穴の空いた左舷後方に同じ攻撃をした。すると船内で大きな爆発音が響いた。
「左舷魔力制御装置爆発!高度維持できません‼︎」
「左舷浮力発生装置の浮力低下、さらに傾斜します!」
MIG-31Bが搭載するGSh-6-23から毎分1万発というえげつない速度で撃ち出された徹甲榴弾がたまたま魔動制御装置に当たり破壊、魔力が暴走し爆発を起こしたのだ。こうなれば船はもう立て直せない。船の傾斜角は45度にも達し、人はまともに立っていられない状況になる。コントロールを失った魔動飛行船は左に傾いたままゆっくりと左に旋回しながら落下して行き、そして魔動飛行船は森林の中に左に横倒しになった状態で墜落、大量の雪が舞い上がった。
そして現在、午前12時02分。シベリア地方フェンリートの森。墜落した魔動飛行船から何とか脱出した乗組員達は辺りを探索したり大破した魔動飛行船の中から使えそうな物を探したりしていた。
「ルルさん、寒くないですか?」
カタリネは船内から見つけ出して来た毛布を両手に持って折れて倒れたマストに座っているルルに聞いた。
「私は大丈夫ですから、それはカタリネさんが使って下さい」
ルルは今奴隷服の上に船内から適当に見つけてきた長袖の服とズボンを着て、その上に外套を着ているだけと他の人と比べたら比較的薄着だが、ルルは白狼族と言って寒さに強い種族なので問題なかった。。因みに白狼族と言うのはこういった雪原地帯などに住む少数種族のことで、美女が多い種族として知られている。が、数が少ない種族なので白狼族の奴隷は高値で取引される。
「まぁまぁそう言わずに、いくら白狼族と言っても寒いものは寒いでしょ?」
カタリネはルルの隣に腰掛け、ルルと一緒に毛布に包まった。
「えへへ〜ルルさんあったか〜い」
そしてカタリネはにへらと笑いルルに寄り添った。その行動にルルは顔を赤くしてカタリネから距離を置いた。
「ななな、何ですか急に⁉︎」
「何って、ルルさんで暖をとっていただけですよ?」
カタリネはそれがどうしたの?と言いたそうに首を傾げて言った。
「そ、そういうスキンシップはダメだと思います!」
「すきんしっぷ?それどう言う意味?」
「え〜と、人同士の触れ合い?みたいな意味です」
カタリネはまたルルに近づき引っ付こうとして来るがそれに合わせてルルも逃げる。
「何で逃げるの〜?」
カタリネが頬を膨らませて聞いて来る。ルルは顔を赤くしたまま言う。
「いや、だって普通そう言うのは仲の良い男女同士とかがやるものなので・・あの、なんて言うかその・・私とカタリネさんでは色々と問題があると思います」
「何でさ〜私とルルさんは女同士だし問題は無いじゃん」
実際スキンシップ(skin ship)は、互いの身体や肌の一部を触れ合わせることにより親密感などを高め、一体感を共有しあう行為を指す言葉であるので女性同士でも問題は無い。
「いや、確かに私は女だけど・・女同士の方が問題があると言うか・・・何と言うか・・・うぅ〜〜」
上手い言い訳ができず唸りながら頭を抱えてしまうルル。それを見て観念したと思ったカタリネはもう一度ルルと一緒に毛布に包まった。ルルも顔を真っ赤にしながらも抵抗はしなかった。
そんな2人の空間をぶち破るかのように森の奥から「雪〜の進軍氷を踏んで」と何やら歌が聞こえて来た。さらに歌に混じってグォォォォンと言う音も聞こえて来る。
「誰か来る?」
ルルとカタリネが歌の聞こえて来る方に注目していると、木と木の間から何かが見えた。それが何なのか分かったルルは驚きを隠せなかった。
「あれはッ⁉︎」
それはこの世界ではもう見るこのは無いと思っていた自動車と言うものだった。
日清戦争時の陸、海戦と軍人の内面的生活を歌った軍歌、「雪の進軍」を聞きながら森の中を走っていると前方に船らしき物を発見、近づいて見ると多数の人がいた。
「もしかしなくてもアレですよね?」
小田が後部座席から前に見える横倒しになった帆船を見ながら言った。
「だろうな」
村松は無線機を手に取ると全車に繋いだ。
「総員、何時でも撃てるように準備しておけ。ただし俺が良いと言うまで発砲するな」
《《了解》》
村松の指示を受けて各車両に乗る隊員は89式小銃のセレクターレバーを「ア」から「タ」に移動させた。軽装甲機動車の上に備え付けていたブローニングM2重機関銃も何時でも撃てるように初弾を薬室に装填しておく。あちらもこっちに気づいたらしく剣や弓、または魔法攻撃の準備をしている。パジェロを先頭に異世界人どもの目の前に停車する。村松はパジェロから降りると89式小銃をスリングベルトで肩に掛けたまま1人前にでて、こちらを警戒している異世界人に話しかけた。
「安心しろ、我々は日本人を探しに来ただけだ。戦う気は無い」
と言っているが村松の後ろでは全隊員が何時でも撃てるようにスタンバってる。村松は辺りを見回しながら聞いた。
「ここに日本人はいませんか?」
「「・・・・・・・?」」
「・・・・・?」
「えっ・・・・」
大多数の人が首を傾げたり何言ってんだこいつと言いたそうな表情をしているなか、20歳位の女がハッとした様子で隣にいる人を見た。
「・・・・ ・はい」
そう言って手を上げたのはケモ耳娘だった。白髪を肩辺りまで伸ばし、頭からは同じく白色のフサフサとした狼?のような耳が付いている。そして背中から白色のこれまた狼のような尻尾がチラチラと見え隠れしている。青色の瞳はとても美しく、胸はさほど大きくないがスタイルは良い。控えめに言って美少女だ。
「陸上自衛隊の村松2等陸尉です。そちらの転生前のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
日本人とは程遠い容姿なので村松は目の前の女を疑い幾つか質問してみることにした。質問はここの世界の言葉ではなく日本語で話した。
『陸上自衛隊の村松二等陸士です。貴方を助けに来ました。』
『・・すいません。転生前の自分の名前は分からないんです。今はシュマーヤ・ルルと言う名前です』
う〜ん、まだこの人が目標の転生者なのかは分からないな。まず本当に転生者なのか簡単なクイズを出してみることにした。
『日本の首都は?』
『東京です』
『地球最大の海洋の名は?』
『太平洋』
『兵庫県南部で発生した大地震の事を何と言う?』
『阪神・淡路大震災』
うん、恐らくこの人は日本人で間違えないだろう。しかし報告と色々と違うな。報告だと目標の髪は黒のツインテールで、ドラゴン化する可能性ありと書いていたが、目の前にいる女はドラゴンではなくケモ耳娘だ。もしかして俺達が探しているのとはまた別の日本人?
『ここにはどうやって来ました?』
『交通事故に遭って、気づいたらこの姿で野原に倒れてました』
『誰かに連れ去られたりしましたか?』
『連れ去られたって言うか・・・街に不法滞在していたので捕まったんです』
間違いない、このルルとか言う名前の女は俺達が探している目標ではない別の転生者だ。てかこの世界転生者多過ぎだろ。
「あの〜ルルさん?何を話しているんですか?」
さっきからずっとルルの方を見ていた女がルルに聞いて来た。ルルは1度村松の方をチラリと見た後に女の方を見て答えた。
「彼ら、私を探しに来たみたいです」
「やっぱり!ニホンの人達だったんですね!」
村松達が日本の人と分かるとルル以上に喜んだ。
「良かったですね!ニホンに帰れますよルルさん!」
「・・・ねぇカタリネさん。私と一緒に来ない?」
あ〜何だかややこしい事になりそうだと村松は心の中で思った。しかしカタリネと呼ばれた女は首を横に振った。
「私はここに残る」
「え、どうして?」
「だって私のせいでー」
2人が色々と喋っている間、村松は本部にいる如月司令に指示を仰いでいた。
「転生者はいましたが、目標ではありませんでした。話を聞いてみた感じ普通に転生して来た人のようですが・・・どうします?」
《ただの目標でないならそのまま逃しても良いぞ。ついて来たいと言うなら連れて来ても良いし。そちらの判断に任せる》
「了解」
村松は一緒に来いだの来ないだのと話してる2人に話しかけた。
「このままこの世界に居ても良いですよ?」
「「え?」」
2人が同時に反応する。
「我々は日本人が何者かに連れ去られたと聞いて助けに来ただけです。ルルさん、貴方はこの方と一緒にいたいんじゃないんですか?」
ルルは女の方を見て少し恥ずかしそうに頷いた。
「それに、必ず日本に帰れると言う訳ではありません。それよりはここでお2人仲良く暮らしていた方が良いかと。後の判断は貴方に任せます」
ルルは数秒間考えた後に女の方を見てから言った。
「私は・・・ここに残ります」
午後5時37分、北大陸上空、高度8000メートル。C-2輸送機機内。自衛隊基地に向けて飛行するC-2の機内で小田が村松に話しかけた。
「あのケモ耳娘に言わなくて良かったんですか?」
「何がだ?」
「俺達がここを侵略しに来た事ですよ」
あの後村松達はロシア軍の魔動飛行船探索隊と合流し、ルル達を近くの街まで送って、アレウト国には近づかないように警告してから別れた。
「あいつらには幸せに生きて欲しいからな」
「相変わらず優しいですね〜隊長は」
村松は自分の89式小銃を見ながら言った。
「だがもしその時が来たら、俺は引き金を引く」
今回の小説、変な終わり方をしてしまいすいません。
次回位で自衛隊側のお話は一旦終わりで、その次からはイギリス軍の話になります。お楽しみに。
ご感想お待ちしております




