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7話エリナの家族

明日も投稿予定です

 子供たちが私の相手をしている間、大人たちは、私のことを話し合っているみたい。

 私が幼いから、話しても理解されないだろうと考えているのかもしれないね。まあ、実際話の内容は現時点では理解できなかったけどね。でも話し声は聞こえるし、それを無意識に記憶していたので、後日理解できるようになってから、何を話しているのか分かったのだけどね。


「パーソンという貴族名の人物は見つからなかった。少なくともわが国には存在しない」

「すると、他国の貴族か、豪商でしょうか?」

「調べられる範囲の隣国にも、そのような人物はいないようだ。まあ、ちょっとした商家がかってに貴族名を名乗っていれば分からんがな」


 お爺様が肩をすくめていた。


「あの森の近隣の村や町での行方不明者や捜索対象者も確認したが、いないようだ」

「そうですか。・・・かわいそうに。よっぽどの訳があるのかもしれませんね。あんな森の奥に小さい女の子を置き去りにするなんて・・・」

「置き去りにされたのか、はたまた、すでに親は他の魔獣に餌食なったのか・・」


 カイさんはチラッと私の方に目を向けたみたい。すぐ、視線をお爺様の方に戻してしまったけどね。


「あの子の言葉は、俺の知る限り、この国と関わりのある国の言葉ではない」

「それで、お義父様、あの子をどうされるのですか?」

「実際に話してみて、分かっておるだろう。あの子は見かけ以上に聡明な子だ。この2か月で言葉もかなり覚えてしまった。今の自分の状況は話せば理解できるだろう」

「そんな!いくら賢い子だとはいっても、あんな年端もいかない子にそんな現実を告げるなんて酷すぎます」

「メアリ・・・」


 メアリさんが大きな声を出したので、私達は何かな?とちょっと大人たちの方に顔を向けると、お爺様が何でもないよと言うふうに、軽く手を振ったので、私達はすぐおしゃべりに戻った。

 メアリさんは声を小さくしてお爺様とのお話を再開してる。ちょっと聞き取りずらくなっちゃった。


「よろしいではないですか。あの子をうちの子にしてしまえば。次女として、エリナ=ドレイク=アンリューク=バリュッシュとして育てれば」

「しかし・・・・」

「父上。私もメアリに賛成です。ただ、すべてを正直に話すのではなく、あの子にとって良いことを、あの子に決めてもらいましょう」

「エリナ=パーソンとしてこの家で育てるか。エリナ=ドレイク=アンリューク=バリュッシュとしてうちの子になるか。あの子に決めるせるのか?どちらを選んでも、もしかしたらあの子にとってつらい事になるかもしれんぞ。俺達に、いや俺に関わらない生活の方が幸せな日常をおくれるかもしれない。」

「もう、この屋敷に連れてこられた以上、御義父様も覚悟の上ではございませんか?」

「う・・・む」

「それに父上、我々家族がこのような愛らしい子供を手放せるはずないではないですか。バリュッシュ家は昔から、どのような子供でも慈しみ、その成長を喜びとしてきた一族ですよ」

「あ~、まあそうだな。まったく誰に似たんだかな」


 かなり重要で深刻な内容なのに、意外と大人たちは簡単に話を進めてしまっているような気がするよ。しかも、どちらにせよこの家で育ててくれるのは決定事項のようで、他に預けるとか放り出すという選択肢はないようだよ。

 ああ、良いお家に拾ってもらったなーて随分後になって思ったんだよ。


 しばらくして、メアリさんがこちらにやってきた。


「エリナちゃん。あのね、私がエリナちゃんのお母さんになったら嫌かしら?」

「・・・?」


 急に話を振られて私は首を傾げるしかなかったの。だってお母さんがどんなものか、実際私はあんまりよく分かっていないからね。ただ、なんかドキドキする。お母さんってなんか胸が温かくなるような。

 すると今度はカイさんが振り返り「私がお父さんだ。どうだ?」と言った。

 お父さんってお爺様が前に言ってたよね。カイさんがお父さんなの?


「・・・おとうしゃん?・・・おかあしゃん?」

「やった!じゃあ、僕はお兄ちゃんだ!」

「私はお姉さまね」

「・・・・」


 両脇の二人もうれしそうに声をあげた。

 お父さんにお母さん、お兄ちゃんに・・・・・お姉・さま?

 どうすれば、一番良いのか、よく分からない。でも、周りにいる人たちがとっても嬉しそうにしているのを見て、私もなんか嬉しくなってしまったんだよね。私には本当の意味での産みの親も、赤ん坊のころからの育ての親もいたことはないと思う。

私はずっと独りだった。ずっとずっと一人きりだった。孤独を望んだのは私。他人との接触を避けたくて、余計なことを思い出したくなくて、心と記憶にフィルターを造った。子供でいればもう悲しいことはなくなる。幼いままなら、あんな気持ちにならなくて済む。そう思って、分かんなくなるぐらい長い長い時を過ごしてきたはず。

 ずっと三歳児のまま、一人でいるか、他の多くの孤児の子供たちといっしょに生活してきた時もある気がする。たぶん・・・・・・。だから、私は・・・・・・。でも、今の私は・・・・・・・もう違う。


「うん」


 こくりと頷いて、そのまま泣いてしまった。あまり自覚のなかった不安や孤独を実感してしまった。魔獣に襲われるまでの一人ぼっちの寂しさも、助けてもらった時の安心感も急に私の中で現実味をおびて頭の中で再現される。お部屋で一人きりになったときはとても心細かった。そして、私を拾ってくれたこの家族といると、とても暖かい気持ちを感じた。とってもとってもずっと昔、私の大切な人がいなくなってから、私は親しい人をつくるのを止めてしまった。一人の方が気が楽だった。子供の方が何も考えなくて心が痛まなかった。でも、今は誰かと一緒にいることがとても嬉しい。なんでだろう?今はやっぱり思い出せない。

 慌ててみんながベットのそばまで寄ってきて、オロオロしながら慰めてくれる。お母さんが、痛くないように優しく抱きしめてくれる。心が温かくなる。だから涙が止まらないよ。


 こうして、私エリナ=パーソンはエリナ=ドレイク=アンリューク=バリュッシュとなった。また、私の中で時が動き始める。止めていた体の成長が始まる。私に施された『私』自身の仕掛けが発動し始める。この時から私は完全な意味で【ホワイト・ペーパー】エリナ=パーソンではなくなった。



リーセ「はーい、解説でーす」

フェリオー「最後にエリナが言っていた”仕掛け”は第一話の冒頭で行っていた仕掛けのことね」

リーセ「そうね。でも、今まで全く発動していなかったのね」

フェリオー「まともに発動していたら、こんな大怪我しなかったのかな?」

リーセ「さあ?所詮は3才児に出来る範疇のことだからね」

フェリオー「これからはなにか起こるの?」

リーセ「さあ?」

フェリオー「・・・・・・・」

リーセ「だって、今のあの子の状態じゃどうなるのかなんて分かんないよ」

フェリオー「ねえ、本当に解説するつもりあるの?」

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