6話お爺さんの家族
私がお爺さんのお屋敷で目を覚ましてからたぶん2ヶ月ぐらいが過ぎたよ。この前、日にちの読み方のお勉強をして教わったの。1年が12カ月で、1カ月が30日だって。あと、1週間が6日。時間の呼び方はまだ教わってないから分からないの。
お爺さんはすごく偉い人みたい。王都に大きなお屋敷をもっている貴族様だってアンは言っていた。
私は何とか上半身を起こせるぐらいには回復したよ。でも、右腕が全く動かないの。最初は痛くても少しは動かせたのになんでかな。両足にも力が入らなくて立ち上がれなかった。まだまだ、治るには時間がかかりそう。
今日はね、なんだか朝から屋敷の中が少し慌ただしいみたい。アンもトロワもあまり部屋にやってこないの。お昼を持ってきてくれたアンにどうしたのか聞いてみたら「大旦那様のご家族が旅行からお帰りになられるので、その準備で忙しいんですよ」だって。
お爺さんには家族がいたんだね。どんな人たちだろう。怖くないかな。知らない人に会うのは不安だな。
「かぞく?」
「ふふ。そうですよ。旦那様と奥様とそのお子様たちです」
「・・・・」
「皆さま、とっても優しい方々ですよ。あとで大旦那様が紹介してくださると思いますよ?」
少し強張った顔をしてしまったのか、私を見てアンはニッコリ笑ってから出て行った。
お昼ご飯も食べ終わって、ベットの中で体を起こしてぽけーとしていると、廊下に沢山の足音が聞こえてきた。ノックの後、部屋に入ってきたのは、お爺さんだった。
「息子たちが旅行から帰ってきたのでな、エリナに紹介したいんだが、良いかな?」
私がコクリとうなずくと、お爺さんの後ろから、まず男の人と女の人が入ってきて、その後ろからさらに2人の子供がはいってきた。
「!?」
「あらまあ!」
「な!」
「きゃ~。可愛い!」
4人は私を見て、驚いた表情で近づいてきた。
「これは驚いた。父上。ずいぶん幼い可愛い子を拾われてきたのですね?」
背の高い男の人は目を見開いて手を額に当てて、本当にビックリしたみたいにしてた。
「ホントね~。信じられないぐらい可愛らしい子ね。お目々がクリッとして可愛いわ」
女の人はニコニコして、両手を握ってやっぱり驚いてるみたい。
「お爺様。僕こんな子見たことないよ!」
私より年上だと思う男の子は大きなお口を開けて、お爺さんにしがみ付いている。
「お爺様!抱っこしていい?いいでしょ!?」
男の子より背の高い綺麗な女の子は、今にもこっちに向かってきそうな勢いだよ。ちょっと怖いかも。
でも、みんなの何かあまりの高評価にちょっと恥ずかしくなってきた。お顔を見ることが出来なくて俯いてしまったよ。
「きゃ~。赤くなって、可愛すぎるわ。抱っこさせて!!」
「サーシャ、落ち着きなさい。エリナが驚いているだろう。まだ、ケガも完治していないんじゃぞ」
私に飛びついてきそうな勢いで走り寄ってきた女の子を、お爺さんは止めてくれた。
「あ、うん。ご、ごめんなさい、お爺様」
「エリナや。驚いただろう。私の息子夫婦と孫たちだ」
それから、一人一人挨拶してくれた。
「こんにちは。エリナでよいかな。私はカイ=ドレイク=アンリューク=バリュッシュ、父上に代わって、伯爵家を任されている。よろしくな。」
お爺さんより少し小柄で若いけど、それでも背が高くってお髭を生やしていないだけでそっくりなお顔をした男の人が話しかけてくる。とっても優しそうに微笑んでくれた。
「はくちゃく?えりゃいひと?」
伯爵といったら貴族の中でもかなり偉い人だったような?
「ははは。エリナは賢いな。私は城に勤めているんだよ」
伯爵は、優しく頭を撫でてくれた。気持ちよくてうれしかったので、ニッコリしたよ。そしたら、また目をパチクリしてた。
「!。ふむ。ホントに天使じゃなかろうか」
「エリナちゃん、私はメアリよ。よろしくね。」
伯爵の隣にいた女の人が、我慢できないといった感じで顔を寄せてきた。
とっても綺麗な人だった。腰まである金色の髪と青い瞳がすごく綺麗なの。メアリさんは私の頬を両手で包んでナデナデした。ちょっとくすぐったいな。
後で教えてもらったんだけど、伯爵は35歳で、奥さんは28歳だって。
「私は、シャーサよ。10歳。ねえ、お姉さまって呼んでみて」
次は綺麗な白いドレスを着た女の子だった。この子もすごくかわいい。お母さん似だと思う。金髪で青い瞳をしている。とても興奮しているみたい。ちょっと圧倒されてしまうよ。
「おねえしゃま?」
「きゃ~、可愛すぎるわ」
私が首を傾げながら答えると、勢い余った感じで抱き着いてきた。うわ、ビックリしたよ。
おかげで、体に激痛がはしる。
「あう!!いちゃい」
「あ、あ、ご、ごめんなさい。大丈夫?ど、どうしよう。お母さま、エリナちゃんにケガさせちゃった!」
私が、痛がると、女の子は慌てて飛びのいて、半泣きでおろおろし始めた。
ケガしたところを触ったり動かしたりするとまだ痛みが走るけど、痛み止めのおかげなのか、すぐに落ち着くから大丈夫なんだけど。
お爺さんがすぐに寄ってきて、わたしに確認してくれる。
「さっきも言ったが、まだ完治していない。右腕と肩、胸に大きな傷があって動かせん。立ち上がるのもまだ無理じゃ。気をつけなさい」
「ごめんなさい。お爺様。エリナちゃん、ごめんなさい。痛かったよね」
すぐに女の子は謝ってくれたの。もう痛くなくなったので大丈夫だよ。
「もういたくないよ」
動く左手で、女の子の手を握ると、少しホッとした顔になった。女の子の手はスベスベで柔らかくって、なんか気持ちがいいな。
「お姉様は、大雑把すぎるんだよ。大丈夫かい。エリナちゃん、僕はクライン。よろしくね」
男の子が心配そうにしながら自己紹介してくれた。ちなみに8才だって。この子もどちらかとう言うと母親似で綺麗な顔立ちをしている。でも父親のように眉が太く意思が強そうだね。
「えりな=ぱーそんです。・・・みっつなの」
左手の指をなんとか3本立てようとしたけど、うまくできなかった。あうん。
全員の自己紹介が終わると、大人たちは私がいる部屋のテーブルを囲んで座り、何か話し始めた。2人の子供は、ベットの両脇に座って、私に色々話しかけてくる。
「エリナちゃんはどこからきたの?」
「ん~、わかんない」
「シャークギルに襲われたんでしょう?怖かったね?」
「・・・うん。ん~とね。がうってきて、がぶってなったの。そんで、あううってないちゃったの」
「そっかー。それでお爺様に助けられたんだね?」
「・・うん。おじいしゃま、たしゅけてくれた」
「さすが、お爺様!すごいな。僕もお爺様が戦うところを見て見たかったよ」
「何言ってるの。エリナちゃんが襲われてたんだから、ダメよ、そんなこと言ったら」
「おじいしゃま、つよいね」
私も、みんなのようにお爺様って呼んだ方がいいよね。それから二人は、私の分かりづらい説明を真剣に聞いてくれたよ。
「体まだ痛いんでしょ?さっきはごめんね」
「もういたくないよ。でもうまくうごかないの」
私が不安そうな顔をしたのか、2人が心配そうにしながら、後ろのテーブルで話しているお爺様に振り返り確認してくれた。
「お爺様。エリナちゃんは治るのよね?」
「ん?ああ。治るぞ。ただ、賢者級の治療師の治癒魔術でないと、無理のようじゃ」
「え!?それじゃあ、エリナちゃん、もしかしてずっとこのまま・・・・」
「・・・・・」
なんか、ちょっと不安がましてきたよ。賢者とか魔術とか、よく分からない言葉が出てきたうえ、なんか無理とか言われているような。
「大丈夫、安心せい。俺の知人にその賢者級がおる。今、連絡を取っている最中じゃ。奴なら、今以上に元気な体にしてくれる。エリナもそんな心配そうな顔をするな。もうしばらくの辛抱じゃからな」
よかった。今の体は人間とほとんど変わらないから、治らなければ一生そのままだと思う。ずっとこのままは嫌だな。・・あ・・・うん・・私・・・・人間?・・だよね?
「よかったね。エリナちゃん」
「お爺様はすっごく偉いんだ。絶対治してくれるよ」
励ましてくれる二人に、私はホッとしてからニコッと微笑んだ。
2人は私の顔を見てから、やさしく頭を撫でてくれた。やっぱり頭を撫でられるとうれしくなっちゃうな。
それから2人は、今度は自分たちのことを話してくれた。どんなことが好きか。今なにをしているかなど。
リーセ「急に登場人物が多くなってきたね」
フェリオー「こんなに増やしてキャラ分け出来るの?」
リーセ「さっさあ?」
フェリオー「はあ。まあ、いいわ。それじゃー裏話でもしようか?」
リーセ「え?変なこと言っちゃだめだよ」
フェリオー「2章はあるそうよ」
リーセ「あ、そのことね。まだまだ、先なので乞うご期待ということね」
フェリオー「3章もあるそうよ」
リーセ「フェリオー!!そこまで暴露しちゃ駄目!作者がプレッシャーに負けてしますかも!」
フェリオー「なによ。情けない。折角だから、100章ぐらいまで書きゃいいのよ」
リーセ「そこまで書けるなら、第2部とかに分けるんじゃない?」