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第51話 みんなを捜そう

「エリナは大丈夫なのか? それ外した方が良くないか?」

「大丈夫だよ。この腕輪、外しちゃうと壊れちゃうみたいだから、後でお爺様に調べてもらわないといけないし、私は操られないみたいだから大丈夫」


 心配して腕輪を外すことを勧めるカイセル君に、粉々になった腕輪を見せながら説明すると、疑わしそうな目で見てくるんだけど、最終的には私を説得するのを諦めてくれたみたい。

 本当は自分で調べたいんだけど、見つかっちゃったからしょうがないね。外さない言い訳に、調べてもらうのに壊すわけにはいかないという理由はちょっと強引だったかな。

 私が操られないのは黄金の腕輪と黒い腕輪の能力が拮抗しているのかもしれない。お互いにお互いの効果を打ち消しあっているんじゃないのかな? 

 お爺様に調べてもらうにしても、私自身をあまり詮索されるのは困るな。以前の賢者様のように私をスキャンされると、当時以上に女神の力が減少している私の防御機能を突破されてしまうかもしれない。私が人間じゃなかったことを知られたら、お爺様達は私の事をどう思うだろう。

 す、捨てられたりするのかな。・・・・・嫌だな。


「お爺様達はもうお部屋に行ったかな? 2階の客間って言っていたよね?」


 カイセル君もネイリちゃんも疑いの眼だったけど、それ以上は詮索しないでいてくれた。

 私たちはそっと玩具部屋を出ると、耳を澄ませて当たりを窺う。


「静かだな。廊下には誰もいないみたいだ」

「気を付けてね。静かな分、物音発てると気づかれるかもしれないよ」

「ゆ、ゆっくり行こうね。エリナあんまり早く歩けない」


 二人がスタスタと歩き出そうとするのを慌ててテトテト追いかけると、カイセル君が戻ってきて、手を繋いでくれた。


「転ぶなよ。エリナは何もない所でもすぐコケるんだから」

「うん、ありがとうカイセル君」


 カイセル君はやっぱり優しいな。家族の次ぐらいに大好きだ。




 2階に上がるまでに、屋敷の使用人に見つからない様に、途中の部屋に隠れたり、大人の背丈ぐらいある大きな花瓶の後ろで身を潜めたりした。スワールや侍女さんを倒す時に大きな音がしたと思うんだけど、気づかれていないみたいだ。子供部屋が騒がしくても気にならないのかもしれない。遊びでたてた雑音だと思っているのか、それともお爺様のお屋敷みたいに防音が完璧なのかどっちかな。

 2階にもお部屋がいくつもあった。私たちは端っこから順番にそっと扉を開けて部屋の中を窺う。貴族の礼儀としてはノックもしないで黙って扉を開けるのは失礼な事だし、知らない人がいると困っちゃうけど仕方がないよね。屋敷の人に気づかれるわけにはいかないんだもん。

 抜き足差し足忍び足。ん~? 抜き足ってなんだっけ? 差し足? 義足の付け替えをして忍者のように音を立てずに歩くんだろうか? はて? 前に覚醒した時にも同じこと考えたような? 覚醒の状態が毎回異なるから、深層意識と表層意識のどちらが主体になっているかで思い出し方に違いがでているみたい。私、しょっちゅうコッソリ歩いているな。

 ちょっと変なことを考えながら部屋の中を確認する。誰もいない。


「誰もいないな」


 だれも使っていなさそうな客間がこんなにあるんなら、私達も2階の部屋にしてくれたらよかったのにな。子供達だけスワールと同じ1階の部屋にしたのは、他の人に気づかれない様にする計画だったのかな。

 とにかく、これで捜していない2階の部屋が残りあと2つになった。


「気を付けて、慎重にね」

「ああ」


 出来るだけ音が鳴らない様にゆっくりとカイセル君がドアノブを回した。

 どこの部屋も間取りは同じみたいだ。入ってすぐのところにソファーが置いてある。今までと異なるのは、ソファーに誰か座っていたところだろうね。


「お母様!」


 ソファーに座っていたのはお母様だよ。後ろ姿で頭しか見えないけど、私には分かるよ。大好きなお母様だよ。

 私たちは駆け寄って、お母様の正面に回った。お母様はソファーに持たれて眠っているみたいだ。


「奥様も眠らされたのかな?」

「そうかもしれないけど、分かんない。顔が赤いからお酒に酔っているだけかも」


 たしかに、お母様、お酒臭い。でも、私は酔って寝ているわけじゃないとすぐ気づいた。


「違うと思うよ。ほら、さっきと同じ腕輪を嵌められているもん」


 私の腕輪と同じ腕輪を嵌めている。さっき別れるまではしていなかった腕輪だ。


「本当だ。じゃあ薬を使われたんだな」

「見て、この腕輪私達のより、色が薄いわ」


 たしかにネイリちゃんが指摘したとおり、2人がしていた黒い腕輪よりどちらかというと灰色に近い。ただ・・・・

 はうん。


「ネイリちゃん、エリナの腕輪も同じ色になってるよ」

「え? ほんとだ。灰色になってる。時間がたつと色が変わるの?」

「なあ、やばくないか。エリナ具合は大丈夫か?」

「うん、エリナ元気だよ。なんともないよ」


 実際は“力”を使った影響で頭が痛くて、スワールを吹き飛ばしてからは胸もちょっと痛いんだけど、まだ我慢できる。ただ、今腕輪を外すと『私』の意識は失いそうだな。

 色が変わったというのは、なにか変化が続いているんだろうな。腕輪の効果が切れてきているなら問題ないんだけど、逆に悪い作用が進行しているとすると深刻だな。今のところ私自身になにか影響が出ている様子はないんだけど、お母様の腕輪は外しちゃったほうがいいよね。


「低治癒! 解毒!」

「すげえ! 魔術だ」

「エリナちゃん、すごいわ」


 お母様から腕輪を外して、治療のため”力”を使って魔術を掛けると、カイセル君もネイリちゃんも、目を瞬いて私を見た。なんか尊敬の眼差しってこんな感じかな。そんな大したことしているつもりはないので恥ずかしい。あうん。

 腕輪は外してしばらくするとまた粉々になってしまった。先ほどより砕けるのが早いみたいだ。


「なあ、エリナの腕輪もやっぱり外しといたほうがいいんじゃないか」

「そうよね。心配になってきちゃった。悪い予感がするわ」

「うん、でも大丈夫だよ。まだ、サヨコさんやお爺様やみんなを助けないといけないから、このまま行こうよ」


 お母様まで眠らされて、他人を操る腕輪をしていたのだとすると、フェルス侯爵家の全員が知っていて、こんなことをしている可能性が高いよね。他のみんなも同じ目に合っているだろうから、まだ私の覚醒状態を解くわけにはいかない。

 でも、カイセル君達は、腕輪をつけたままにしておくのはとても心配みたいだ。さっきのように誤魔化されてくれない。


「えっとね、この腕輪をしていると、魔術がうまく使える気がするの。お爺様達を助けるのに魔術はうまく使えた方が良いから、このままにしておくのがいいの」


 私の説明で、どこまで納得してくれたか分からないけど、しぶしぶこれ以上私を説得するのを諦めてくれた。


「奥様起きないわね」

「うん、どうしようか」

「とりあえず、治療もしたし、腕輪も外したから、お母様はこのままにして他の部屋に行ってみよう?」

「う~ん、そうだな。俺達じゃ運べないし、このままにしておくしかないな」

「じゃあ、毛布だけ掛けておくわね」


 ネイリちゃんが隣りの寝室から毛布を持ってきてお母様に掛けてくれた。


「ありがとう、ネイリちゃん」

「さ、そしたら隣りの部屋に行きましょう。隣りはサヨコ様よね」

「きっとそうだな」

「お爺様かもしれないよ」

「クーガ様が眠らされたり、腕輪で操られたりするか?」

「そうよね。英雄のクーガ様の事だから、もしかしたら侯爵と戦っているかもしれない。だから、こっちに来れないんじゃない?」


 そんな物語みたいなことになっているかな? お爺様は強いけど酔っ払ってから薬を飲まされたら、さすがに気が付かないんじゃないかな。2人のお爺様への信頼が大きすぎてちょっと、呆気にとられちゃった。

 私もお爺様を信頼しているけど、英雄とはいえ人間だもの。完璧じゃないよね。お爺様、よく失敗だってするしね。それともなにかその信頼に対する裏付になるようなことがあったのかな? 昔のお爺様は完璧超人だったのだろうか?


 屋敷の人に気づかれない様に再び慎重に隣りの部屋に行くと、サヨコさんが床に倒れていた。薬の所為で、途中で倒れこんでしまったようだ。腕には灰色の腕輪がしてある。

 私は腕輪を外し、魔術で治療した。


「お爺様いないね」

「うん。どこにいるのかしら」

「まだ居間にいて、侯爵と戦っているんだ!」

「なら、私たちが行っても、足手まといになっちゃうわね」

「ああ! 俺達は仲間が人質にされない様に助けに回った方が良いな」

「そうね。じゃあ、あとは屋根裏かしら?」

「・・・・・・」


 すごいよ、お爺様。お願いだから、2人の期待を裏切らないでね。

 私たちは、サヨコさんにも毛布を掛けてから、屋根裏に続く階段を上がった。このお屋敷は2階建てで、その上の階は屋根裏だ。どこのお屋敷もそうなのか分からないけど、このお屋敷もお爺様のお屋敷同様に屋根裏といってもしっかり廊下があっていくつも部屋が分かれていた。


「よし! 行ったぞ! 今の内だ」


 作業をしていたこの屋敷の使用人をやり過ごし、カイセル君の合図で屋根裏部屋の1つに入った。

 やった、気付かれなかったよ。

 屋根裏部屋には2段ベットがあって、アンとトロアが眠っていた。床にはメリーが倒れている。メリーはお母様の侍女で同じ部屋のはずなのに、いないと思ったら、こっちに来ていたんだ。侍女同士の話し合いとかのために来たのかな?


「腕輪はしてないな」

「眠っているだけみたいね」

「低治癒、解毒」

 

 薬で眠らされているだけみたいだけど、念のため治療魔術もかけておくよ。

 やはり3人ともすぐには起きそうになかったので、メリーには毛布を掛けて、私たちは他の部屋も探すことにした。屋根裏部屋には執事のマッキーや護衛騎士のライトさんを始め、使用人全員が各部屋で眠っていた。みんな腕輪を付けられていなくて眠らされただけみたいね。

 だから私は全員に医療魔術を掛けるだけだ。


「お爺様いないよ」

「やっぱり一階にいるんだ」

「どうする? 念のために見に行った方が良いわよね」

「クーガ様ならもう侯爵なんて倒しちゃってるよな」

「でも、ならなんでお爺様、エリナのところに来てくれないの?」

「・・・・・」

「・・・・・」


 2人とも黙らないでよ。何か言って! そんなまさか!?みたいな顔しないで! さっきみたいに自信満々に大丈夫だと言ってほしいよ。


「あーと、えっと、とにかく様子を見に行こう」

「そ、そうね。たぶん大丈夫だと思うけど、万が一の時は助けないといけないわよね」

「・・・・・・」


 それは、お爺様も眠らされているということかな? まさか戦って負けちゃったってことじゃないよね。

 し、死んじゃってたりしないよね? 

 ゾワッと寒気がして、怖い考えを何とか振り払おうとするんだけど、ダメだった。 涙で視界が滲んでくる。


「ふえっ! エリナお爺様の所に行く!」


 私は部屋を飛び出て走って、そして廊下でこけた。


「はう!」

「エリナ!」

「エリナちゃん!」


 うう、覚醒しているのになんで、こんななんにもない所で転ぶの!? 私ってそんなにどんくさかったっけ? ううう、勢いで走ったのに、結局カイセル君達に追いつかれて、立たしてもらった。なんかかっこ悪いよ。

 ばつが悪くて、ちょっと顔を上げられない。


「慎重に行こう。見つかったら何されるか分かったもんじゃない」

「・・・うん、御免なさい」


 先走ったことを怒ってないか、ちらちら上目で確認する。それに気づいたカイセル君はなぜか頬を赤くして視線を逸らした。怒ってないのかな?

 落ち着こう。お爺様が簡単に死んじゃったりするはずないよね。大丈夫、大丈夫。すうーはあー。

 落ち着いたところで、みんなで階段を降りて一階へ。居間があるのは階段を挟んで子供部屋とは反対方向だよ。

 お爺様を助けなきゃ!っと心の中で気合を入れて、前を見るとそこにはこの屋敷の執事のお兄さんが立っていた。私達が屋敷に招かれた時にうちの使用人たちを案内していた時にいた人だ。


「はう!!」


 見つかっちゃった! ここまで隠れて来れたのに、あとちょっとで居間にたどり着けるのに。

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