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16.5話クーガ視点 検証

明日も投稿予定です

 王宮のある敷地の最奥に、大きな丸太小屋がある。城の裏手に残る原生林に挟まれるように建てられている。

 人の出入りを拒む木々を、それでも抜けてくるある意味強者(つわもの)の刺客を塞き止める最後の砦として存在するのだが、重要な施設にも関わらず、そこで暮らしているのはたった一人の女性だけだった。その女性、賢者ノーレムの自宅に今日は朝から4人の男女が押しかけていた。

 その筆頭である俺クーガは、ソファーに腰かけた4人の顔ぶれを見回し、それぞれにスキルスキャンとポイントスキャンを掛ける。この2種類のスキャンとは、他人の体力や魔力などの肉体の力を数値化したり、技能や才能、恩恵を表示する能力だ。これを使用できるのは極々一部の特殊スキル持ちの能力者のみだ。俺達全員はこの能力をある理由により有している。

 たぶん他の面々も同じことをしているのだろう。皆口をつぐみ、互いに顔を見つめては、また隣の顔確認する。

 うむ、問題なくスキャン出来る。それぞれが紙に結果を書きしるし比較しあう。


「うむ、間違いないな。きちんと機能しているな。」


 ドワーフである銀刃のゴルーセが右手で自分の髭を捻りながらつぶやいた。

 

「あ!てめー、いつの間にかレベルアップしてるじゃねーか。最近はレベリングも出来ねーってほざいていたのに!いつだ?いつ・・・」

「うるさいわね!いつでもいいでしょ。王宮魔導士はこまごました魔法をちょくちょく使うから、たまたまアップしたのよ」

「おい、お互いのレベル検証は後だ、今回の目的を忘れるな」


 魔導士サヨコのメモを覗き見ていた盗賊リュークが喚く。それを賢者ノーレムが諫めている。


「それじゃー、次はそれぞれがエリナちゃんに行ったスキャン結果を書き出して」


 次にサヨコの指示で俺達は別の白紙のメモを用意し、また結果を書き出し比較することにした。それは以前エリナをこいつらが見舞ったときにコッソリ行ったスキャン結果だ。


「スキャンが不完全だな。でも、お互いのスキャンは成功している以上、スキルそのものは行えているわけだよな」


 俺、サヨコ、ゴルーセ、リュークが行ったエリナのスキャン結果は虫食いだらけでほとんど分からない。やはりスキャンが阻害されているようだ。先ほどそれぞれが、念のために行ったスキャンは正常だったことから、スキルそのものは機能しているはずだ。


「それぞれの結果で補完すると、HP:10/10、MP:10/10だな。3才児ならこんなもんだろ?ちょっと少ないが異常ではない。というより、あの腕輪が作用しているなら、低すぎるな」

「そうね」


 ゴルーセの呟きにサヨコが答えた。スキャン出来た結果を見る限り、普通の子供と何ら変わらないのだ。

 3歳時なら通常HPもMPも10~20ぐらいだ。平民の場合、そこから成長しても多くてMPは50前後で打ち止めだ。HPならば鍛えれば平民でも上昇を続けるがMPはそうではない。しかし、貴族は違う。

 6歳になるころにはMP300にまで成長することもあるのだ。平民と貴族の素質の違いであり、貴族が選民意識を持ってしまう要因でもある。

 最後にノーレムがスキャン結果を書いたメモを皆の前に出した。


「これが私がスキャンした結果だよ」

「お!おい!これはどういうことだ?」

「俺たちの結果とはかなり異なるな」


 ノーレムの結果を見て、どう判断していいのか非常に頭を悩ますことになりそうだ。そこにはきちんとスキャンした数値が書かれていた。俺たちのような虫食い状態の不完全な結果ではない。一般的な3歳児の数値と言っていい。しかし、そのそれぞれの数値の後ろに赤字で”偽装表示”と書かれていた。これは通常のスキャン結果が偽装されたものであることを示している。つまり本来の能力は隠されているということだ。


「これは、エリナちゃんを治療しているときにサーチしたんだ」

「あの時か。あれはとても治療といえる処置ではなかったな。あまりの苦しみように、抱えている俺が耐えられなくなりそうだった」


 ノーレムの治療魔術は優秀だが、怪我の度合いによって苦痛を伴う。怪我をした直後であれば、たいした痛みではないが、エリナのように時間が経って不完全に治癒していたり、感染している場合は死ぬほどの苦しみを伴うのだ。


「ええ、よくあの激痛を乗り越えらてたと思うよ。いや、精神に異常をきたさない方がおかしい。だからこそ、我々でも見破れない偽装表示を突破できたのかもしれない」

「・・・・。これは、やはりそうなのか?」

「あの子も転生もしくは転移されて、こちら側に来たのか?」


 そう、俺達は全員この異世界キュートスとは別の世界から転生や転移されてきたのだ。いや今の俺達にとってはすでに逆か、具体的には異世界にある地球という星からキュートスにやってきたのだな。様々な状況と情報から、俺たちをキュートスに転移や転生で連れてきたのは神々らしい。直接会ったことはないし、声を聴いたこともないが、どうやらこの世界には神が実在するらしいのだ。


「しかし、あまりに幼すぎる。第一腕輪の効果がまるでないではないか!?」

「今までのあの子の言動を見る限り、自分の今の状況を分かっているようには見えないな」

「ああ。ちょっと早熟で頭の回転もよくて3歳児には見えないが、それでもせいぜい4~5歳児並だ」


 こちらに連れてこられた(もしくは転生した)俺達はある使命を課されていた。その象徴として左腕に金色の腕輪が嵌められていた。その腕輪は俺たちがこちらの世界で、元の世界の記憶を自覚した瞬間に左腕に嵌まった。そして、その瞬間腕輪の力で俺達には様々な恩恵が与えられた。例えばどのような言語でも翻訳できたり、常人では得られないような力や能力を得ることができた。

 また実際の能力をスキャンされない様に偽造表示をする機能も有していた。

 今、俺たちは腕輪をしていない。それは与えられた使命を完遂しているからだ。腕輪を外したため、今俺たちは以前のような能力はない。しかし、腕輪をしていたことで後天的に得られた能力があるため、我々は常人よりも優れた能力を得ている。

 だが、同じ腕輪をしているエリナは全く恩恵を得られているとは思えないのだ。そもそも腕輪の能力があればシャークギルなどという雑魚魔獣にやられるわけがない。


「本人に自覚なく、能力を隠されている?それでは、もし自覚なくその力を使ってしまったら?」

「偽装前の本来の力が分からん以上、対策も抑制もしようがなかろう。」

「ポイントスキャンはともかく、スキルスキャンが全く出来ないことも気になる」


 転生ならあの幼い容姿でもおかしくはない。生まれ変わって3年目ということになる。

 ただ腕輪をしている以上、前世の記憶を取り戻しているはずだ。しかし、あきらかにエリナは幼子だ。見た目は子供で頭脳は大人などではなさそうだ。まさか前世では幼児期に命を失ったのか?もしそうなら使命を全うするどころではない。いくら聡明なエリナでも理解の範疇を超えているはずだ。

 転移ならなおさら3歳児を転移させた神の気がしれん。この世界に直接干渉してこない神がなにを考えているのかなど考えも及ばないがな。


「やはり、一度ハク様にみていただいた方がよいでしょう」

「・・・そうだな。すまないが、その様に取り計らってくれるか?サヨコ」

「ま、しょうがないわね。今回は貸よ。いいわね」

「ぐ!わ、分かった。エリナのためだ」


 あの腕輪のために、えらく面倒な事態になったものだ。


「クーガもう一つ忠告しておくことがある」


 ノーレムが眉の間に皺をよせて俺を睨んできた。


「あのエリナという子供の治療は不完全だ」


 思いがけない爆弾宣言だな。


「何?完治したのではないのか?」

「日常生活に問題のないレベルまで回復は出来た。しかし、私の能力をもってしても完治できなかった」

「馬鹿な、お前の治療魔法は完全再生が可能だろう?」

「ああ、この世界の人間であれば可能だ。たとえイヤ転移体であっても、通常こちらに来た時点でこの世界に最適化されるから、条件さえ整っていれば完全再生可能だ。しかし、信じられないことだが、エリナはこの世界の人間に限りなく近いのに、肉体の一部がこの世界の人間と異なる。つまり最適化されていないようだ。そのためこちらの世界の魔術の効果が十分には発揮されない。偽装の有無にかかわらずスキャン結果に虫食いが出たのはそういう理由もあるだろう。あの子の身体には一部未知のところがあるため治療も不完全になった。それが今後どのような影響が出るか分からん」


 なんてことだ。いったいどう考えればいいのだ?

 その後俺たちは不毛な推論を繰り返すが、結局結論を出すことは出来なかった。

 時間も過ぎその日は、打ち合わせをして、切り上げることになった。

リーセ「さて平行世界も含めて1つの世界と見た場合よ」

フェリオー「重なり合っているちょっとだけ異なる世界もまとめて1つの世界と見てしまうのね」

リーセ「そう、その世界観こそ、この物語の世界よ」

フェリオー「まあ、知ってるけどね」

リーセ「その平行世界も含めた世界と異なる世界は、世界を支えるエネルギーの差によって生じる世界のこと」

フェリオー「エネルギーが大きい世界は高位世界とか上位世界と呼ばれているわね」

リーセ「その差は、平行世界のように重なるものではなく、例えるならば階層状になっているとみるとわかるかな?」

フェリオー「重なり合った無限に広がる世界の板の上に、別の板が乗っかっているのね」

リーセ「そうね。あえて分かりやすく例えるならばだけどね。その世界差には大きな隔たりがあるわ」

フェリオー「別の星や平行世界なら、方法さえ確立すれば移動可能だけど、上位世界には移動できないわね」

リーセ「普通の方法でわね。まあ、平行世界の移動も普通とは言えないけど、恒星間移動もちょっとやそっとの科学力では無理だから、説明としては理解してもらえるかな?」

フェリオー「でも、私達には階層世界も移動可能ね」

リーセ「次回はその辺について説明します」

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