2話お爺様との出会い
その後の記憶は非常に曖昧で、とぎれとぎれだよ。
まず激痛で目を覚ましたの。
「い・・よ。いた・よ。いたいよ」
熱がある時みたいに、意識がボンヤリとしていた。意識がもどる前からうわ言の様に痛みを訴えていたみたい。少しでも体を動かすと耐えがたい痛みが頭に直接響いてくる。息をするだけでもとても痛いよ。
それでも何とか目を開けると、どうやら誰かに抱えられているみたい。視界がはっきりしないけど、誰かか私を覗きこんでいるよ。
「・・・た・しゅけ・て」
「ゆっくり、これを飲むんだ」
口の横からドロッとした液体を流し込まれた。ゆっくりだったので、何とかむせずに飲み込むことができた。味はよく分からない。
「治療師の所まで移動しなければこれ以上の治療は出来ない。それまで、応急手当しかできないから、眠っていなさい。その薬でだんだん眠くなるから。」
「・・・・・・・」
いつの間にか眠っていたみたい。気が付くと、誰かに抱えられて、移動していた。上下の激しい振動と痛みで目が覚めた。布に包まれて、お膝に抱えられているのかな。布の隙間から見えるのは、青空と髭を生やした厳ついお爺さんだった。左手で私を支え、右手にロープを握っている。手綱かな?動物に乗って移動しているのかもしれない。
動かせるのは目蓋だけだった。瞬きしようと目蓋を閉じると、また、気を失ってしまったみたい。
次に目蓋を開けると状況が変わっていた。
私は布団の中にいた。意識はかなりはっきりしているよ。目を開けると布団の横に誰かがいるみたい。体を動かそうとすると、激痛が走った。
「ふぐ!!あうう」
「#$%(’$%&)&’、?」
「あう。・・・だ~れ?」
「$&%$’))()!”#$%&)&’、’&%”$%&XCVBNM<>。」
「・・・・・」
何を言っているのか分からないよ。
「$%?>)(%#)(’&。」
「?」
首を傾げようとしたら、また激痛が全身にはしった。頭が痛くて目の奥がチカチカする。
「ひぐ!!・・痛いよ。動けないよ。ふええ」
あまりに痛いので、怖くなってきたの。目だけを声のする方に向けるけど、視界には入ってこないよ。
「}*+{‘RTY$%&(’&)IOPよ」
女の人の声だった。ベットの端から心配そうな顔をして覗きこんできたので、やっとどんな人か見ることができたよ。
綺麗な大人のお姉さんだった。お姉さんは、私に何か声をかけると、そのまま部屋から出ていってしまったみたい。どこ行っちゃったんだろう。
動くと痛いので、おとなしく寝たまま、ボーと天井を眺める。
「・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
誰も来ないので、すこし不安になってきたよ。これからどうしよう。
あの森で、気付いてから、頭がボンヤリしていて、あまり思考がさだまらなかったけど、今はずいぶん意識がはっきりしている気がするな。今なら、もう少し色々考えられそうかも。どうしたらいいのか、まだ分からないけど、今の自分がどういう状況なのか、もう一度思い出そうとしてみよう。
えっと、私はエリナ=パーソン。3才。女の子。うん、覚えてる覚えてる。何か大事なことをするために、あの森にいたんだよね。何だったかな?それ以前の記憶は断片的にしか思い出せないな。頭の中にいろいろ答えがそろっているはずなのに、うまく引き出せないようなそんな感じだよ。たまに、難しい言葉が思い浮かんでくるけど理解できなかったり、理解できるのに言葉が見つからなかったりする。うまく言えないけど変なの。
あ・・・、そういえば大きな本を持っていたけど、森の中に置いてきてしまったな。本以外にも何か抱えていたと思ったけど、気付いた時には持っていなかったような。
・・・・・でも、それを持っていないということは、私は切り離されてしまったんだ。
ふいにそう思った。
何から切り離されたのか分からないけど、とてもホッとしたと同時に、寂しくなった。これから私は一人で生きていかないといけないんだと、なぜか実感した。そのことに不安はあるけど、今は怖くないかな。
ガチャ
部屋の扉が開いて、誰かが入ってきたみたい。
ベットの横までやってきたのは、さっきのお姉さんともう一人。私を抱えて運んでくれていたお爺さんかな?ベットに腰を下ろして私を見下ろしてきた。
「まだ、辛いだろうから、そのままでいなさい。こんな小さい子供に話してもよく分からないだろうが、少し落ち着いたら、君が誰なのか話しておくれ」
お爺さんはニッコリ笑ってそう言った。よかった、お爺さんの言葉は分かるよ。
「なに、心配しないでも、最後まで面倒みてあげるからね。安心しなさい」
「おじいしゃん、だ~れ?」
「ん?私はクーガ=ドレイク=アンリューク=バリュッシュだ。お嬢ちゃんのお名前は?」
「・・・エリナ=パーソン」
「ほう。エリナか。貴族名があるのなら、親御さんも見つかるかもしれんな?」
貴族名?苗字のことかな?
「ミーシャ。貴族名パーソン氏で調べてみてくれ」
「”#%。)’&%&$M?LIUHG。」
お爺さんがお姉さんに話しかけると、お姉さんは意味の分からない言葉で返事をしていた。それからお姉さんは、部屋から出て行ってしまった。
「エリナは何歳か答えられるかね?」
「みっつ」
「三歳か。お父さんかお母さんはどこにいるか分かるかい?」
「・・・・・」
お父さん?お母さん?・・・私にそんな人はいただろうか?
「分からないかな?どうしてあんな森の中にいたのか話してくれるかい?」
「・・・・・。わかんない」
「そうか。そうだね。なに分からなくても心配いらないから、今は治療に専念しなさい」
「せんねん?」
「ああそうだよ。まだ体が痛いだろう?」
「・・・うん。いたいの。うごかないの」
「ああ、無理して動かそうとしないでいいから。お前さんの傷は非常に深くてな、本当に生きているのが不思議なくらいっだったのだよ」
「・・・・・」
「そんなに不安そうな顔をしなさんな。大丈夫。必ず治してあげるから」
「・・・おじいしゃんが、お父さん?」
私は聞いてみた。私の知っている”お父さん”とは、無条件で私に優しくしてくれる男の人だったように思ったから。
「はは、私はお父さんではないよ。でも、もしお父さんが見つからなくても・・・・・、いや、なんでもない。さ、何か食べれそうなら、スープでも持ってこようね。お腹は空いているかい?」
そういえば、森の中から今まで水以外に何も口にしていない。今はお腹は減っていないけど、何か飲みたかった。
「おのどがかわいたの」
「おお、そうか。待っていなさい。飲み物と食べ物を持ってこさせよう」
お爺さんは、ベットの横の棚からベルを出してきて鳴らすと、すぐにさっきとは別のお姉さんがやってきた。お爺さんが要件を言うと、また出て行って、スープと水を持ってきてくれた。
体を起こそうとすると、また激痛がはしった。動かさなければ、それほど辛くはないけど、少しでも右半身を動かそうとすると、激痛がはしるよ。
「あうう」
ちょっと涙がでた。
「=)(’&$%(。_?+LKJ$%&’(IJPOJNYTFGHUH。」
「?」
やっぱり意味が分からない言葉で何かを話しかけてけてから、お姉さんがコップを口元まで持ってきてくれる。水を飲まそうとしてくれているのかな?横になったままだと飲みにくいけどしかたないや。ゆっくり、口の端から入ってくるお水を少しずつ飲んだ。川の水みたいに冷たくはなかったけど、喉のイガイガが流れるようですっきりしたの。
その後、スープも飲ませてくれたけど、スプーンに2匙で、飲めなくなってしまった。味がよく分からないな。
食事中も、お爺さんはそばにいてくれたの。その時、私にも分かるように話してくれた事によると、私を襲ってきたオオカミモドキはシャークギルという魔獣らしいよ。オオカミなのにサメなんだね。・・・・・サメってなんだっけ?魔獣って動物?
お爺さんは、あの森で増えすぎた魔獣を間引くために、お友達と探索をしていたところ偶然襲われている私に気づいて、助けてくれたんだって。
食事も終わると、だんだん眠くなってきたな。けどお爺さんはお話を続けてくれる。わたしはお爺さんのお話を子守歌の様にきいた。ふああ~。
私が本当に重傷で、手持ちの治療薬では止血が精一杯だったこと。痛みを少しでも取り除くため、睡眠効果のある薬を飲ませたこと。昼夜を問わず私を運んでくれたこと。この時は、もう朝まで私はもたないと考えていたんだって。それでも低位の治癒魔術と低級治療魔法薬で、何とか保たせながら王都までもどり、高位治療師に治療させて、今に至るらしい。それでも命を取り留めるのがやっとで、傷の完治には至らなかったんだって。魔術?魔法薬?魔法ってなんだっけ?
後半はほとんど微睡の中で聞いていたので、次の日、目が覚めた時にはほとんど忘れてしまっていたの。
リーセ「引き続き解説でーす」
フェリオー「・・・・・・」
リーセ「この物語エリナちゃんの一人称だから、なんだか全然話が分からないね」
フェリオー「・・・・・・」
リーセ「作者の文章がつたないから、丁度いいわね」
フェリオー「・・・・・・」
リーセ「作者の文章が3才児並ってことで許してね」
フェリオー「・・・・・・」
リーセ「それじゃー今日のここまででーす」
フェリオー「やっぱり、解説になってないよ」