7.5話クライン視点 僕の妹
補完です
僕の名はクライン=ドレイク=アンリューク=バリュッシュ。バリュッシュ家の長男だ。王都騎士魔法学校の小等部に在学している。上に2つ年上の姉がいるが、中等部なので来年までは別校舎だな。王都騎士魔法学校は3学年ごとに初等・中等・高等に校舎が分かれているからね。僕は8歳だから、初等部の最高学年になる。
僕は学校が長期休暇に入ったので、10週間かけての家族旅行に出かけていた。今まで行ったことのない地方までの遠方旅行で、まあ、家族旅行は楽しかった。聖都に行った時は学園都市を見学してたり、大教会に行ったりできた。しばらくミキ湖でバカンスを楽しんだりもした。
でも、旅行のことはこの際、今回関係ない。学校の休暇中、僕にとって見過ごせないことが、自宅で起こったのだから。
家族旅行から帰ってくると、いつもは忙しそうに出かけてしまい家にいないお爺様が、めずらしく出迎えてくれた。お爺様は僕にって憧れの人だ。強くて偉くて優しい。特に子供には超優しい。自分で孤児院をいくつも作っちゃうぐらいだ。
僕がお爺様に飛びついて、ただいまの挨拶をすると、ニッコリ笑って、お爺様も返事をしてくれた。でも、すぐまじめな顔をして、みんなに相談したいことがあるといって、あまり構ってくれなかった。
大事な話があるみたいで、荷物を執事たちにまかせて自分の部屋にも戻らずにお爺様の部屋に家族全員が集まることになったんだ。
「父上、こんな慌ただしく呼びつけて、どうされたのです?」
お爺様がすこし落ち着きないので、父上も不審に思われているみたいだ。
「うむ、実はな、お前たちが旅行中に、ラージュの森で大怪我を負った女の子を保護してな。その子の事で、お前たちと相談がしたくてな」
「父上!!ラージュの森に行かれたのですか!?どういうことです。お願いしていた政務はどうされたのです?」
「う、うむ、まあ、そのことは後で話そう。それより保護した女の子・・・」
「何を言っているのですか?頼んだ案件がどれだけ重要なことかはご存知でしょう?なぜ、ラージュの森なんかにでかけたのです?」
「あ~、実は、昔の仲間に誘われてな、魔獣討伐に・・・」
「魔獣討伐!!父上、いったい何を考えているのです。今、国政がどんな状況かご存知でしょう?なぜ私が旅行と称して調査にいったのか理解されていますか!?」
「う、うむ、それはよく分かっておるよ。」
「お分かり頂けていません。だいたい父上は・・・・・・・・」
父上が本気になると、お爺様も反論できない。父上は普段すごく優しいけど怒ると怖いんだ。強いお爺様でも、逆らえなくなってしまう。
「あなた、今はとりあえず、お義父様のお話を聞きましょう。お仕事の件は後でお話してください。それで、女の子がどうされたのですか?」
お母様が話を戻してくれて、お爺様があらか様にホッとしていた。
「ああ、女の子はシャークギルに襲われておってな、重傷じゃ。高位治療師の魔術で何とか命を取り留めたが、とても、日常生活をおくれる状態ではなくてな。今、この屋敷で保護しておる」
「え、うちにいるの?」
姉上はなんか嬉しそうだ。うちの家族は貴族なのに、お爺様が経営している孤児院にもよく手伝いに行くので、家族全員子供好きなんだ。
でも、女の子は怪我しているのだから、嬉しそうにするのは不謹慎だと思うな。
「孤児院に任せなかったのですか?うちの孤児院なら、父上が連れてくる孤児などの扱いには慣れているでしょう?」
「ああ、ちと訳ありでな。家でしばらくは面倒見ようと思っている」
「しばらく?バリュッシュ家で、ですか?」
「ああそうだ」
うちで一緒に生活するのかな?どんな子だろう。僕もちょっとワクワクしてきた。
「それは、将来的にうちで雇うのですか?それとも、養女にでもする気ですか?」
「まあ、どんな女の子なの?娘がもう一人できるなんて、素晴らしいわ」
え?娘ってことは妹かな?
もしそうなら、うれしいな。長男とはいえ、姉上しか兄弟がいないから、自分より年下の子は孤児院の子達しかいないし、最近は学校が忙しくて、孤児院に慰問にも行けない。だから僕、妹に憧れていたんだ。
「まてまて、養女にしなくても、養ってあげるだけでも問題はないと俺は考えているんだが。ただ、孤児院には任せられないだけで。」
「ふふふ、とにかく会ってみましょうよ。ね、そうでないと分からないじゃない?御義父様、その子はどちらにいるのかしら?すぐ案内してくださいな」
お母様も子供は大好きだから、いつものニコニコ顔でお爺様を急かした。
「私も会ってみたい」
「ぼ、僕も!」
僕も慌てて同意する。
そういう訳で、みんなして怪我をした女の子がいる部屋まで押しかけることになった。
お爺様がその部屋に入って、女の子に了承を得ることになった。
「息子たちが旅行から帰ってきたのでな、エリナに紹介したいんだが、良いかな?」
部屋の中でお爺様が女の子に尋ねると、どうやら、部屋に入ることを許してくれたらしい。みんなして部屋に入って、ベットにいる女の子を見ておどろいた。
その女の子は、ベットで体を起こして座っていた。右肩から腕全体を包帯でぐるぐる巻きにされている。 そしてたぶん昔姉上が着ていたピンクのネグリジェを着ている。
僕が驚いたのは、その子がとても、可愛らしかったからだ。薄い桃色がかった白髪で、細いサラサラの髪は肩よりさらに長いみたいだ。見る角度によって、瞳の色が青銀から緑銀色に変わる。透き通るような白い肌は柔らかそうにプニプニしている。今まで会ったどの子ともちがい、まるで妖精のように可愛らしい。大きな眼をクリクリ見開いて、こちらを見ている。こんな可愛らしい子は見たことない。
「!?」
「あらまあ!」
「な!」
「きゃ~。かわいい!」
みんなも同じように感じたのだと思う。だって、すごく驚いた様子で女の子に声をかけていたからね。
その後、姉上が女の子に抱き着いて、少し騒ぎになった。姉上、ちょっとは落ち着こうよ。気持ちは分かるけどさ。
大人たちは、ベットから離れて、ヒソヒソ何か相談している。よく聞こえないけど、女の子をどうするか決めているみたいだ。僕と姉上は女の子に色々質問したり、僕らのことを話して、仲良くなった。
「僕は初等部の3年生なんだ。エリナちゃんが学校に入学する頃は中等部3年ぐらいかな。一緒に登校は出来ても同じ校舎で勉強は出来ないな」
「私もね。残念」
「がっこう?」
「そう、僕はね、魔術と騎士としての鍛錬をしているんだ。まあ、初等部は基礎教育の方が多いけどね。早く本物の剣で戦ってみたいよ」
「何言ってんの。剣なんて高等部になってからよ。聖都の学園じゃないんだから、そんなに早く実戦訓練なんてしないわ」
「分かってるよ。でも、お爺様に頼んで修行してもらうんだ」
「もう!なにが良いのかしらね。野蛮だわ。エリナちゃんは私と同じで淑女教育ね」
「しゅくじょ?」
「ふふ、まだまだ先の話よね」
う~ん。エリナちゃんよく分かってないみたいだな。僕も少し落ち着こう。気づかない内に興奮していたみたいだ。エリナちゃんが目をキラキラして話を聞いてくれるから、ついはしゃいでしまった。
結局、その女の子、エリナは僕の妹になった。こんな可愛らしい子が僕の妹なんて、とっても嬉しいな。うんと大切にしよう。まだ、ケガが治りきっていないから、外には連れ出せないけど、お爺様が治してくれるから、そしたら一緒に遊ぼう。そうだ、友達に紹介してもいいな。色々計画を立てよう。女の子だし、僕のヌイグルミをあげたら喜ぶかな?
リーセ「解説しよ?」
フェリオー「・・・何?その上目遣い。気持ち悪いわ」
リーセ「うう、設定上、お爺さんの息子さんである伯爵は家族や子供にはとっても優しいですが、仕事の鬼です」
フェリオー「ああ、腹黒設定もあったわね」
リーセ「そう!ただ、しばらくずっと子供視点が続くので、そんな設定が生かされるのはずっと先になりそうです」
フェリオー「今回みたいな別視点で怖い伯爵がでてくるんじゃない?」
リーセ「そうね。でも、やっぱりずっと先の話になりそうね」




