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第一章3歳編 第1話封印

初小説です。御見苦しい点はご容赦ください。

 『私』は困っていた。左腕にいつの間にかハメられた金色のリングを呆然と眺める。そうしている内にも、自分の体から力が消えていき、頭から【ホワイト・ペーパー】エリナ=パーソンとしての知識が霧散していく。

 『私』は慌てて、今自身におこっている事態を確認するために、自らをスキャンした。通常なら瞬間にすべてを把握できる『私』が2秒もかけて分かったことは、驚愕の事態だった。


 今の『私』の生体構成は人間。外観年齢3歳。そよ風でなびいているほぼ白に近いピンクの髪は細く、肩まで伸びている。白と桃色のワンピースに同じ色調の肩掛けを身にまとっている。膝の上に辞書のような大きな本をのせて、足を投げ出し土の上に直に座っている。表層意識の設定精神年齢は外観年齢に相当。と、ここまではいつも通りなので正常ね。でも今は困惑した表情で、うっすら涙目になっているだろう。脅威に感じているのは、思考機能が時間経過とともに低下中で、深層意識による表層意識への介入が困難になっていること。これは『私』の力も遮断されつつあることに他ならない。


 『私』は靄がかかったような思考の中で、今の自分に出来る手立てを行っていくことにする。この事態が左腕のリングによることや、すでに今の自分では、リングを自力で外せないことも分かっている。そして、このリングのせいで、外観年齢以上の力も能力も知識・思考も行えなくなりつつあることで、今『私』がいるこの場所では非常に危険なことであることも忘れてはいけない。『私』は今後3歳の子供がここで生き残るために今出来る範囲でこの事態に対応しようと試みる。非常に厳しい現状だけど・・・・なんとかなってほしいな~っと。

 内心はとても焦っているのだけど、性格上どうしても呑気な思考をしてしまう。平行並列思考能力も、たった今機能が停止した。ああ、もうだめだ。これから先、表層意識だけで何とか生き残れますようにと、神様にお祈りする。って、誰に祈ればいいの?知り合いの顔が浮かんだが、ダメだあてにできない。


プツン。

 




 気づくと、私は森の中にいた。どうしてここにいるのか、あまりうまく思い出せないな。たしか大事な用事があって、この森の中で、ずいぶん長いこと過ごしてきたような気がするよ。といっても何かしていたわけじゃなくて、大きな木の幹にもたれてじっと座っていただけだったと思う。ぼーと過ごしているだけで私の用事は事足りたんだと思うけど、もうどんな用事だったか思い出せないや。


「・・・・」


 私は、左腕にあるきらきらした輪っかを見た。綺麗だな。ジーと見ていたけど、何のために付けていたのか思い出せなかった。これからどうしよう。考えようとして・・・何も思いつかないので諦めた。

 周りを眺めてみる。そこは少しだけ森が開けた場所だった。目の前に小さな小川がある。遠くでなにかの鳴き声が聞こえる。まだ昼間なのかな、小川には日光が降り注いでキラキラいる。川のすぐ向こう側は暗い森が続いているみたいだ。

 立ち上がって振り返ってみる。腰かけていた木の後ろを見てみても、正面と同じような森が人の侵入を拒むように木枝と草や蔦で塞がっていた。

 ここまで来るのにどうやって来たのかよく分からない。ついさっきまでは、とても簡単にここまで移動してこれたはずなのに、もう今ではやり方が分からないよ。

 もうちょっと頑張って考えてみる。何かいくつか思い出しそうになるが、結局また考えるのを諦めた。頭がボーとしてうまく思いつかないんだもん。


 く~


「おなかすいたな」


 鳴ったお腹に手を当ててみるけど、やっぱりお腹は減ったまま。お腹が減ったという感覚がすごく懐かしい気がするな。あまり気持ちの良い感覚ではないからどうしたらいいの頑張って考えてみる。


「たべものないかな」


 お洋服のポケットを探ってみるが、入れた覚えもないからなくて当たり前だね。抱えていた大きな本を足元に置いて、よたよた川の方に歩いていみた。


「おみずのめるかな」


 川の流れはゆるやかで、そこに私の顔が映っていた。大きな瞳が不安そうにのぞき込んでいる。ちょっと丸顔が歪んで写ってた。

 しゃがんで手ですくってみる。とても冷たくておいしそうに思えたので、少し飲んでみた。


「!・・・。おいしい」


 そのまま口を川につけてごくごく飲んだ。顔と服の襟首が水浸しになっちゃったけど、おいしいお水が飲めたから、気にしないよ。

 お水でお腹満たされて、少しだけ空腹感がやわらいだよ。ちょっと元気がでた。

 もう一度周りを見回してみる。草が青々と茂っているけど、何が食べれるものか分からないな。

 また、どこか遠くで何かが鳴いた。そうすると、だんだん不安になってくる。何をしたらいいのか分からない。何かしなくちゃいけなかったけど思い出せない。私、なんでここにいるんだろう?

 私は寂しくなってきて、きょろきょろと何か気を紛らわせられるものがないか探してみた。私は本以外にも、抱える何かを持っていたと思ったけど、何も見つからない。仕方なく大きな本を抱えて、川の流れに沿って移動してみることにした。

 特に行く当てもなく、ただ思い付きで歩いているだけでなので、寂しさが徐々に大きくなってきた。


 くすん。ぐす。


 いつの間にか、涙が出てきて、鼻がなった。寂しいな。

 しばらく歩いて、疲れて後ろを振り返ると、さっき腰を掛けていた大きな木がまだ見えた。ずいぶん大きな木だから距離感がない。思ったほどの距離は歩けていなかった。不安がさらに大きくなって、頑張ってさらに歩いた。


 ひっく。すん。


 不安がどんどん膨れてくるので、一生懸命に何も考えないようにして歩いていると、いつの間にかあたりが暗くなっていた。

 ふと歩みを止める。


 ブル。どうしよう。

 

「おしっこしたい」


 私が前に尿意を感じたのは、もうはるか記憶の彼方で、いつだったのかも忘れてしまっている。すこし戸惑う。期待はしていないが、つい辺りを探してしまうが、もちろんトイレなんてないよね。仕方なく、川から離れ木の裏で、パンツを下してしゃがんだ。誰もいないけど、はずかしい。・・・・・誰もいないよね?


 それからさらにしばらく歩いていたら、すっかり暗くなってしまって、まわりがまったく見えなくなっちゃった。生茂る樹木のせいで、星明りもほとんど差し込まない。

 私はすぐそばの木を背にして腰かけ、眠った。遠くでまた何かが鳴いている。怖いしお腹も減ったけど、足も痛いし、疲れていたためすぐに眠れたよ。


「くしゅん」


 寒さで目が覚めた。うー寒いよ。いつの間にか膝を抱えて丸まって横倒しに寝ていた。立ち上がると、体が痛い。また、涙が出そうになったけど我慢した。

 辺りは少し明るくなってきているけど、うっすら霧がかかっている。

 周りを見てから、木の裏で、またおしっこをして、川で水を飲んでから歩き出した。顔は水が冷たいから洗っていない。手で目蓋をこすって終わり。


「・・・・・・・・おなかすいた・・・・・・・おなかすいた・・・・・ぐすん」


 だんだん空腹に耐えられなくなってきたよ。歩くのがつらい。


 ギャグルルルル~!


「!」


 すぐ後ろから、何かの唸る声が聞こえたので、恐る恐る振り返る。

 何かな?怖いよ。

 木々の間から現れたのは、見たことのない大きな獣だった。今ある知識で一番近い動物に例えるなら、オオカミかな。ただオオカミをもう一回り大きくして、頭にタテに2本角を生やして、しっぽがヒョウのように細く長くしたような姿をしてた。オオカミモドキだね。


 こわい。こわい。こわい。こわい。

 こんなに恐怖を感じたのは初めてだと思う。うん、命を脅かされそうな恐怖は初めてだよ。腰を抜かさなかったのは奇跡のようだ。私が奇跡を感じるなんてなぜか信じられなかったけど。

 オオカミモドキは口からヨダレを垂らしながら、一歩づつ警戒するように近づいてくる。


「あ!わああああ!」


 私は、恐怖によって何も考えられずに、とにかく走って逃げようとした。といっても、よたよたと一歩づつ、とても走っているとは言えないような速度だけれど。三歳児に俊敏な動作など期待しないでほしいな。‎

 オオカミモドキは、すぐには飛びかかってこようとはしなかった。なんで?

 今の私は逃げることしかできない。最初せせらぎだった川は、ここまで来るうちに幅も広く、とても越えられないくらい深くなっていた。走る右手の森も深くてとても小さな体では走って入り込むことは出来そうにない。


「はあ、はあ、はあ」


 息をきらしながら、頭だけ振り返ると、オオカミモドキは辺りをきょろきょろと見ながら、でも確実に距離を詰めつつ迫ってきていた。ふとオオカミモドキがこちらを凝視すると、一息に跳躍し、私めがけて口を開いて飛びかかって来た。うわ!!


 ぎゃうううう。がる!!


「や。あううう・・!」


 避けることもできず、やたらゆっくりと感じる時間の中で私は、オオカミモドキの牙が右肩から脇に食い込むのを実感した。もしかしたら首を狙っていたのかもしれないけれど、首だけ後ろに向けていた私はちょうど体勢を崩してこけているところだったからズレたみたい。


「ううう。い・・つ・・」


 痛い、痛い、痛い。熱い、熱い、熱い。

 咬まれた瞬間、耐えがたい痛みに襲われた。そして次に痛みは熱に変わった。私の体は、なすすべもなくオオカミモドキに咥えられたまま待ちあげられる。


 バキバキバキ。


 私の体から、聞いたこともない音がなる。もう、痛みはないけど、息が苦しいよ。うまく体を動かせない。咬まれた瞬間に閉じた目蓋を開くことができない。意識があるのかないのかよく分からない。でもそんなふうに考えているんだから、まだ気を失っているわけではないよね。 


 ビチャ。ゴロン。


「あう」


 体に再び衝撃が加わる。どうやら、地面に落とされたみたい。頬にぬるっとした感触と、ザラッとした感触を感じる。土と自分の血かな?顔に感覚はあるけど、それ以外はよく分からないや。

 ゆっくりと目蓋を開く。私は横倒しになっているみたい。体には全く力が入らず、目蓋も半分しか開かないからあまり視界がよくない。もう頭もあまり働かず、ぼーとしている。体はどんどん寒くなっているのに、震えたりしないみたい。

 意識がどんどん暗闇に落ちていく感覚がある。寝るときの感覚とはまるで違う強制的な意識の喪失感。でもオオカミモドキは簡単に私が意識を手放すのを許してくれないみたい。

 自分の獲物を主張するように、前足で私を踏みつけてきた。そこたぶん傷口!


 あああああああ・・あああ・あ。


 再び味わうことになった激しい痛みに、私は呻いたと思うけど、声は出ていたのだろうか?

 再度、痛みと熱にさらされながら、今度こそ私は意識を手放そうとした。

 その時、遠くから破裂音とすぐ真上でオオカミモドキの張裂けるような声を聴いたような気がするが、もうよく分からない。


リーセ「こんにちは!解説の妖精リーセです」

フェリオー「魔法使いフェリオーです」

リーセ「フェリオーなんでそんなに離れているの?もっとこっちで一緒に解説しようよ」

フェリオー「ねえ、この第1話の頃って、私も貴方も敵対関係のハズでしょ?しかも、両方とも存在していないはず」

リーセ「だからよ。この解説は本編とは直接絡むことはありません。私たちも、名前ぐらいしか登場しない予定です」

フェリオー「あなたの予定ほどあてにならないならないものはないわ!」

リーセ「ええ!?フェリオー酷い!っとか言ってる間に今日の解説は終了でーす」

フェリオー「・・・なにも解説していないわ」

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