ヒッチハイクの下準備!
「なぁ、やっぱ俺ヒッチハイクやるわ」
山田がカレーを口に含みながら答えた。
岡田と山田は学食で昼食を取っていた。ここのカレーは激しく不味く食べた後は必ずといっていいほど下痢になるため生徒はもっぱら下痢カレーと呼んでいる。
山田はやはり頭が弱いためこの下痢カレーを喜んで食べているのだ。その姿を見ながら、いつかこいつが味覚障害になったりしないだろうかと岡田は不安であった。
「どうした急に!いや全然いいけど?なんで気が変わったん?」
「なんとなくや」
さすがの山田も神様のバチが怖くなって…などとは口にしなかった。
「オッケーオッケー!じゃあいつやっちゃう? 俺的には明後日からの授業を全部休んで20日かけて東京を目指したいんだよね」
岡田も山田も愛知県の大学生である。へんぴな場所にあるこの大学は頭が悪くないと入れないような大学だ。試験は無く
面接のみである。もっともこの面接も瞬間で終わるらしく一人当たり2分で済まされてしまう。自己紹介でほぼ終わる。そんな大学だ。
「ええけど、けっこう休むやん」
「大丈夫っしょ!」
「やんねー!」
岡田と山田は馬鹿であった。というのもこの3日後に必ず出席しなければならない授業があり、これに出ない場合、即留年ということをすっかり忘れていたのだった。
この授業はエフランホイホイと呼ばれあまりに大学を休みまくる生徒らに対する大学側からの対策であった。
そんなこともすっかり忘れ2人の頭はヒッチハイク一色である…
ついさっきも「カレーを注文のかた!」と学食のおばちゃんに呼ばれたとき右手を親指を立てて僕でーすと返事していた。その姿を見て岡田は「やるじゃ〜ん」と山田にグッジョブしていた……
岡田と山田は翌日、ショッピングモールに来ていた。ヒッチハイクに必要なものを買いに来たのだ。親指を立てるだけじゃ気づいてくれない場合にスケッチブックなどを用いてアピールするためだ。他にも夜間にアピールで用いるライトを買い来た。それらの必要品を買ったのち岡田はふと言い出した。
「俺、ちょっとトイレ行ってくるわ」
「うい」
岡田はトイレには行かない。岡田はこのヒッチハイクであわよくば童貞を捨てようと出逢いを求めている。そのためのコンドームを買いに向かったのだ。
一方、文具屋に1人置いてかれた山田は考え込んでいた。
(このヒッチハイクで女と出逢ったときヤることになるかもしれへん。ほしたら…コンドームいるなぁ。)
山田は歩き出した。薬局に向かったのだった。
薬局につくと山田はコンドームエリアを探した。しばらく歩き回りようやくそれらしきコーナーを見つけた。
すると、そこにはしゃがみながら両手にコンドームを持ち
「サイズ分かんねぇなぁ」
と呟いている岡田がいたのだった。
「お前、トイレは?」
山田が訪ねた瞬間、岡田は飛び上がった。
「え、あーいや、終わったよ!?」
ついつい力みながら答えてしまった。
両手にあったコンドームの箱に指がけっこうめり込んでいる。
「あ、そう……
ここで 何しとんの?」山田は追い打ちをかけた。
「いや…なんていうかサイズの吟味だけども!?」
岡田は開き直った。コンドームを手にしていることを無視しその先のサイズの話をしだしたのだ。
「てか、おまえこそなにしてんの?」
岡田は反撃にでた。開き直ったこいつに怖いものなんて無い。
「や、俺は別に〜。最近下痢気味だから胃腸薬探しに来てん。」アホな山田は学食のカレーが原因であることに気づいていない。
「ふーん、胃腸薬はむこうだぜ?」
岡田は山田を追い払いだした。
「あ、そう?…ありがと、、」
山田はすごすごとむこうへ歩いて行った。
素直になれない男たちは薬局の中で会いもせずにただうろうろと歩いているのだった。
2人のヒッチハイクはまだまだ遠い。