ヒッチハイクのお誘い!
「お前さヒッチハイクとかやったことある?」
岡田が唐突に言った。スマホのアイドルを育成して、しゃにむにタップしまくるゲームにハマり込んでいる山口は岡田を無視した。
「いや、なんか言えよ。てかお前それ音無しでやってて楽しいの?」
「ちょマジ黙ってて。今キてるから。すげぇキてるから」
少しイラついた岡田は鼻くそをほじり割とでかめのやつを山田のシャーペンの消しゴムんとこにネジつけた。山田はまだアイドルの顔面をタップし続けている。タップのやりすぎで山田の指紋がなくなったりしないのか岡田は少し不安でいた。
「あぁっ!……ミスった。。」
山田のハイスコア更新はならずに終わった。
「ほんでなんやった?」
山田はようやく岡田の質問に質問で答えた。
「いや、だからヒッチハイクとかやったことない?って聞いてたんだけど。」
「普通ないやろ。そんなしょうもないこと聞いとったんかよ。おかげでハイスコアとれやんだんやけども笑」
「しょうもなくねーよ!ロマン溢れるじゃん!?」
「まぁまぁ女の車にのれてあわよくばヤれるってんならロマン溢れるけどもそんなことまずあらへんし…。正直、知らない人に話しかけんのとかキツいし…別に企画モノでそういうのあるやろ?」
山田はすぐに話を下ネタにすり替える癖がある。この癖のせいで3人に2人ほどの女子は山田のことを心底嫌っている。
「シモにシモにもってくのやめよーぜ?俺、ガチでヒッチハイクやりたいんだけど?」
「やりゃええやんけ!」
「いやいやいや。1人でやるとかこえーよ。
お前もやろうぜ?」
「いややわ笑 1人でやって来いや!」
「頼むって!マジで頼む!今度最新のオナホ貸すから!」
「きもっ」
岡田はけっこう傷ついた。というのも明らかに自分よりキモい存在であるはずの山田に素できもっと言われたからだ。
「お前よりマシじゃ!ボケ!死ね!」
岡田は捨ぜりふをはいて自分の席へと戻っていった。
山田は少し悪いなぁと思いつつアイドルの顔面をタップした。
ちょうどチャイムがなり3限が始まる。3限目は経済だ。選択科目であるにもかかわらず99パーセントの生徒が経済を選んだため他の選択候補であった科目はなくなり全員が経済を受講することになった。
経済以外の教員は即、首を切られたようだ。なんでも文学の教員が乱心して学校の創設者の銅像にロープで亀甲縛りをかましハンマーでアキレス腱を根こそぎほじくったことからリストラされたことが伺えると生徒らの中でもっぱら噂である。
経済の授業が始まった。代弁が効くこの授業では見た感じ全生徒の半分ほどしか出席していないにもかかわらず全員の返事が聞こえてくる。山田は声真似が上手くよく人に頼まれがちである。嫌いなやつの代弁はしていない。そのためそいつは学期末になって出席がたらず留年することになるがまだ知らない。
先生が黒板に文字を書き出す。山田はスマホのゲームがひと段落つきノートを取り出して黒板の文字を写そうとする。シャーペンをクリックすると親指に緑色のねちっこいものが付いた。山田は何かのゴミかと思い近づけて目にすると鼻くそだとわかった。
「おひゅっ!?」山田は思わず変な声が出てしまった。
その様を後ろからみて岡田が笑いを堪えているが山田は知らない。
(なんで鼻くそが付いてんのやろ)
頭の悪い山田は岡田を軽くあしらったバチが当たったのだと思いだした。そんなわけがない。
山田は岡田のヒッチハイクに付き合うことにしたのだった……