ヒロイン育成学校卒業につきシンデレラ役をやりましたが…
突発的短編第何段か!
《はいはーい、こちらヒロイン育成学校です!
え?ここは何をするのかって?名前の通りよ。ここは、物語のヒロインを育成する学校よ。そして、認可テストに合格したら本の世界へ送るの。……まぁ、ヒロインになりたい人の為の専門学校って思ってくれていいわ。》
「……やっと、卒業出来た〜」
こんにちは!あ、いや。御機嫌よう。今年度の卒業生が1人、カスミです。この度やっと卒業することが出来ました。辛かった…非常に辛かった。何故私がこんな怪しい団体に所属したかというとズバリ、ヒロインになりたかったからにほかならない。私は名前のカスミというように常に脇役のような人生を送っていた。
(親もどうしてこんな名前にしたのかしら?キラキラネームでも良いから、もっと輝かしい名前にして欲しかった…)
中学高校と髪を染めずに黒髪で三つ編み。コンタクトを入れるのが怖いので眼鏡。制服は改造もせずに丈が長いまま…そもそも校則違反で怒られるのが嫌だったので私は模範生として過ごしていた。そんなことをしていたらついた渾名は地味子。的確過ぎて悲しくなる。
このままじゃマズイ!
私は、こうしてヒロインを目指してこの学校に入った。今まで、目立つというようなことが無かった私はこの学校のカリキュラムにとても苦戦した。やはりヒロインを目指すだけあって可愛い子が多く、皆が舞台経験があった。文化祭とかで抜擢されたらしい。
演技とか歌とかの実技は微妙だが、私も皆に負けないように勉強だけは頑張った。特技は、地味な作業ですから!
そんなこんなで、卒業をした私は本の世界にとばされる。どの物語かは、学校側が決めるらしい。……楽しみだな。これで、人生の脇役から抜け出せる……
…………え……シンデレラ?
驚かないで聞いて下さい。なんと私がとばされた本はあの、シンデレラの世界。えーーーー!?
こりゃ、驚くわ!え、何で?間違えじゃなくて?だって、あのシンデレラ。世界中の女の子が憧れるプリンセス…(シンデレラのお姉さん役じゃなくてシンデレラ…)夢みたいだ。私の高校の文化祭でシンデレラの劇をやった時は木の役だった。
なんて、夢を見ていた時期もありました。いつまでたっても王子様の招待状が届かない…王子様役、つまりはヒーロー育成学校の卒業生だ。(脇役には無いが、主要キャラは殆ど卒業生がやっている。)
まぁ、何が言いたいのかというとここ数日間ずっとお姉様方にいじめられっぱなしなんですよ!見てよ、こんなに家事が上達しちゃったわ!元々地味な作業が得意だっただけに…
……何で、来ないのよ。
何処の世界へ行っても、それもヒロインの役になっても結局私は脇役のような人生ってこと?今日もまた顔だけは良いお姉様に「脇役がでしゃばるんじゃないわよ!」って言われたし…(…でしゃばれないから問題なんだよ、)
ふーーー、なんかもうこれならこれで良いかなって気がしてきた。地味でも家事が得意なら何処でもお嫁に行ける。だいたい王子様みたいな相手を選ぼうとするからこうなるのよね…そもそも、王子様とかそんなキラキラした人と生活とか大変そうだわ…地味な私には地味な人が合うのよ。よし、決めた!さっさとこの物語を終わらそう。そして、この家事力を活かして働こう。そんで、結婚資金を貯めてからLETSお見合いだ!
こっちから王子役を探して、物語を進めるように促そう。
やっと、お城についた。え、お姉様達?あはは、今頃はぐっすりと寝ているでしょう。もうヒロインを目指すことをやめた私にはそんな強行手段だってあるのです。皆が憧れるプリンセスのようなシンデレラみたいにずーーっと王子様を夢見ていじめに耐えるヒロインなどここにはいない。ここにいるのは、地味で細々とした幸せな生活を求める脇役だ。
って、カッコイイこと言ったけど無理でした。兵士さんがお城に入れてくれ無かった……。うん、兵士さんの考えは当たり前だよ。お化粧も何もしてない地味な女が「王子様に会いたい。だから、お城に入れて!」って普通におかしいよね。ついノリもあって来ちゃったけど…
あーあ、物語が終わらないと元の世界へ帰れない…ついでに家に帰ったら面倒くさいお姉様方がいるしな。そうだ、取り敢えずは住み込みのバイトをしよう!ちょうど、ここは国の中心地だしお店は沢山ある。当分はここで生きていくしかないしね!
………………
…………
……
…
《はい、ここで物語を紹介するのは中断させて頂きます。うん?あぁ、大丈夫、大丈夫!物語はまだ終わってないみたいだけど、あの子は幸せに生活しているでしょうよ。
王子様役の子だけど、なんかインフルエンザにかかっちゃったみたいなのよねー。元々、病弱体質だったそうだし。まだ絶対安静のようよ?当分の間は、舞踏会の招待状は出せないわねー。本の世界といえども、キャラクターにとっては現実みたいなもんだからね。
それにどうしてあの子がシンデレラ役だったか?……それはね、あの子が一番ガッツがあったからよ。ほら、シンデレラってさ最初いじめられまくるじゃない。皆、そこでダウンしちゃうのよねー。「元の世界に戻してー!」とか。シンデレラは幸せなシーンばかりが有名になっちゃってるけど現実ではいじめられてる時間の方が長いのよ?だから円滑に物語を終わらす為にあの子が適役かなーって思ってた訳だけど…王子様の方がダウンしちゃったかーー。
この世界ははあくまでパラレルだから、支障はきたさないけど…とはいってもあの子には関係ないわね。だいたいヒロインを目指す子、特にシンデレラ役になれた子って『自分が子供に夢を与えたいから』とかって子ばかりだから普通なら物語を終わらせられないと悲しむんだけど…あの子の目的は『人生のヒロインになりたい』だから目的は叶ったも同然ね。だって、ほら……
あの子はやっと自分の力で歩き始めたのだから!》
招待状を出したところで、その家には既にシンデレラ役はいないので困るであろう王子様がいるでしょう。……そして、偶然見かけたバイトに一生懸命なカスミに一目惚れ。