それから
ゲーム世界内をふらふらしてたらうっかり雲の上に行っちゃって、雲と思っていた物が陸で人が住んでたとか、船を造って旅にでたら難破して海の底にいる人に回収されたりとか、いつぞや捕まって連れていかれた神殿ぽいところの地下が別大陸との入り口でしたとか、予想以上に成果を上げた俺は、気づけばゲーム世界と地球を結ぶ友好大使になっていた。
元々の本命テスターをを差し置いて大使とか意味がわからかったのだが、本命もとい、どっかの偉い教授とかどっかの研究員さんとかは、地球にアクセスできるような技術レベルの人達なら、自世界は完全に把握しているだろうという常識的な考えでゲーム世界内を探索しなかったようだ。俺だって単に観光気分だったし、まさか幻の一族が生きていたとは・・・!だよね。
遅ればせながら情報を入手したらしい諸国が国家の陰謀とか宇宙人の侵略とか異世界の脅威とか言ってて大変みたいだけど、そんなことより俺は婚活休暇が欲しいです、切実に。
「ぎゃー、もう嫌だああああ、休みくれえええ、休暇くれえええ、こんなキツい仕事なんて聞いてないよおおお、お金はもういらあああん、もう買える物は全部買ったから辞めさせろおおおお」
そうなのだ。お金で買える物はたくさんあるけど、自由や時間は買えない。
一日は24時間しかないし、俺は一人しかいないわけで、買っても消費する時間がない。圧倒的に足りない。
「行き遅れになるだろくそがああああ、結婚相手が欲しいいいい!!」
盛大に本音を吐き出し、だだっ子のようにゴロゴロ転がりながら叫んでいたら歯を床にぶつけた。
『よかったらお会いできませんか?』
痛みに蹲っていたら、いつもの天の声が天井から聞こえた。そんな餌に釣られクマーだ!
そろそろ解放して? わりとマジで。




