おうちに帰りたい
仕事がキツい。キツすぎる。
労働基準法はどこに行ったんだ。
今、思えば募集条件が良すぎた。
住居保証で家賃不要。3食付きで光熱費も不要。どれだけ使ってもタダ。
仕事内容はゲームのデバッグ。給与はウハウハ。思わず死語が出ちゃうような金額。
だって1日働いた金額が月給と同じとかウハウハしねぇ?
俺はしたね。そしてその時の俺氏ね。
受かれば数年遊べると仕事をほっぽり出して応募したかつての自分を蹴り飛ばしてやりたい。真っ当に働けと言ってやりたい。
そりゃ、食堂があって、好きなときにいくらでも食べられる会社に憧れた頃もあったけど、あんなの会社に拘束するための餌じゃないか。
今頃気づいた。俺、気づくの遅すぎ。
大体、日当が高すぎなのにどうして不安に思わなかったのか。
まじ帰りたい。家に帰りたい。パーッと遊びに行きたい。
『時間ですのでブースにお戻り下さい』
丁寧な口調の声が天井から聞こえる。
ブースに戻ろうが休憩中だろうが寝てようが24時間監視。
最初の2週間位は楽しかったんだけどなぁと思いながらノロノロと歩くが、無常にもブースと呼ばれる場所に着いてしまった。
『カウントダウン開始します。5、4、3、2、1、……』