女の子になりました。2
「記憶の操作って、お前そんなことも出来るのか?」
「うん、できるよー。人間の脳ってすんごく簡単な作りしてるからねー。楽ちん作業だよー」
人間自身は未だ脳を解明しきってないというのに、簡単な作りって…。
全脳科学者に果たし状投げつけやがった。
「なるほど。んで、記憶を操作って俺に関する記憶を消すってことか?それとも俺が元から女だったっていう記憶を植え付けるってことか?」
「うーんと、どっちも違うかなー」
「じゃあどういうことなんだ?」
「この世界自体を、君が女であるように再構築したってことー」
この世界を再構築?
全くもってしっくりこない。
SF?セカイ系?中二病?
そのどれにしたって現実感の欠片もない話だ。
でも流す。
「ということは既に誰もが俺は元から女だったと認識してる?」
「そういうことですー。女であることに矛盾が生じないように改築しただけで、他の記憶、思い出とかは全部そのまんまだから安心してねー」
な?会話が成り立っているだろう。
いちいちつっかからないのがコツだ。
目をつむってひたすら飲み込むんだ。
溶け込んできたぞ、この非日常に。
サツキは慣れてきた自分を噛み締めながら、もう一つ訊いてみる。
「再構築したって過去形だったけど、オプションとか言ってこっちに選ぶ権利があるように言ってたのはなんなの?もうやっちゃったんじゃないの?」
「再構築はね。オプションってのは記憶を消すでも植え付けるでもなくて、残すことが出来ることー。記憶を残す人を一人だけ指定出来るよー」
「記憶を残す人か…」
サツキはそれを聞いた瞬間、ある一人が脳裏に浮かんだ。
浮かんできて即納得。
あいつしかいないよな。
「まあこれは結構大切なことだからゆっくり…」
「いや、もう決めたよ」
サツキは決意を固めるように天使の言葉を遮る。
「ナギサ。あいつにだけはこのことをしっかり自分で説明したい…。そして…思いっきり自慢したい!」
「おっけー!」
天使は親指をぐーっと立てている。
これもまた一連の流れ。