女の子になりました。1
「んー……はっ!」
サツキは思い切り掛け布団を蹴りあげる。
「夢じゃねぇかああああああああん!?」
あれ、声が高かった気がする。
「んーあーあーあーあーあー」
サツキは試しに発声練習を行ってみる。
うん、高い。
間違いなく高かったな今のは。
あの忌々しきクソ汚い男の低音とは違う。
あれ?天使の歌声かな?と間違うがごとく透き通った声が俺の喉から確かに発せられている。
「夢じゃないのか…夢じゃないんだな!よっしゃあああああ!」
ベットの上に立ち上がり渾身ガッツポーズ。
歓喜の叫びもまた高い。
「ん?そういやここ…」
サツキは部屋の隅々に目をやる。
「俺の部屋じゃねぇか。どうやって戻ったっけ。まあいいか!それよりー!」
サツキは寝起きとは思えない程のテンションですぐさま角に置いてある鏡…なんてものはあるわけないのでスマホの画面を暗転させて顔を確認。
「これが、俺…?かわいすぎんだろおおおおおお!!!」
画面を覗くと、自分の思い描く理想の女の子がそこに立っていた。
いや、立っていただけではない。
自分が呼吸するのにあわせて目の前の女の子の胸もゆれる。
口も首も腕も足も指も全部、自分が動かした通り動くのだ。
ということはだ。
サツキは妙案を思いついたのか、左手は胸を乗せるように、右手は小指を口元に伸ばしたポーズを取り艶やかな声で鏡に向かって話しかける。
「もう…サツキくんったらいじわるなんだから。で…も…。そんなサツキくんが…好き」
うおおおおおお!!
これは…これはあああああ!
サツキはベッドに飛び込みブリッジしながら悶える。
「かわええええええええええええええええ!!!」
相当な興奮状態に陥り、間違いなく大きくなっているだろうなと男の象徴を意識した瞬間、付いてる感が全くないことに気付く。
「そうだよ、あたりまえだよ。女なんだもん」
そうだよ、もうれっきとした女の子だ。
さっき鏡で確認したとおりだ。
そうなってくるとだ。
「超えなきゃいけない問題はたくさんあるな。まずこの状況をどう説明するか」
親、妹は勿論、あとはナギサにも。
流石に簡単に納得してくれることではないしなぁ。
あとは服装とか…。
ん…?というかあれだな。
俺今女物の服着てるな。
俺には女装の趣味はぎりぎりないので持っているはずはないのだけれど…。
にしてもとてつもなくセンスいいなこのコーデ。
「今後のために用意したよー」
サツキが必死にない頭も振り絞って考えていると、突然逆さまの天使がサツキの視界に入ってくる。
「うお、びっくりした!まだいたのかお前」
「酷いなーせっかくここまでしてあげたのにー」
天使はほっぺを膨らませて露骨にぷんぷんしている。
「その説は本当に心から感謝いたしております、天使様」
そう言いながら即座に土下座の体勢に入るサツキ。
反動でベッドの上を少し跳ねる。
「それは置いといてー」
両手で置いとくジェスチャーをしながら天使は質問を投げかける。
「オプションで記憶の操作があるんだけどー使うー?」