夏の始まりの事でした。6
そこには、平地に小さく存在する小汚い男のそれではなく、2つの丘にぷっくりしっかり主張する、ほのかに桃色に染まる女のそれが存在感を放っていた。
「ゆ、夢にまでも見た、おおおおおおぱっぱおぱおぱおぱおぱおぱ、おっぱいじゃねぇかあああああああ!!!」
サツキは静かにおっぱいに手をかぶせ、そして強度を確かめる。
なんて魅力的な造形美…。
そしてなんなんだ、どんだけ柔らかいんだよ…。
これが自分の体なんて信じられねぇ。
「そしてこれが…」
サツキはその頂に、震える人差し指を向かわせる。
手始めに一度、少しかする程度に突っついてみる。
ビクッ。
声は漏れないものの、体全体が一瞬揺さぶられる。
「すげぇ…なんだこの感覚…」
何も考えられなくなるような感覚に陥る。
そのまま流れるように親指と人差し指で挟んで、擦り合わせる。
「ん…あ…」
き、気持ちいい…。
今度は息混じりに声が漏れてしまう。
だめだこれは、癖になる。
こんな路上でやっていいことではない。
「路上!?」
サツキは突然我に返り、周りを見渡す。
人一人いない。
「あっぶねぇ…。客観的に見たら完全に痴漢野郎じゃねぇか」
いや、今は痴女になるのか。
サツキは冷静になり、とりあえず左手でおっぱいを隠す。
「ん?あれ?なんかさっきより大きくなっているような」
至極当然のことだった。
光の輪は未だサツキの胸の周りで停滞している。
それは、まだ胸は開発途中であることを意味している。
「おいおいこれ、今まさに成長してるってことかよ…って痛い痛い」
前半戦までの激痛には遠く及ばないが、おっぱいに少し痛みを感じる。
「これが成長痛…」
風船が膨らんでいくように成長するおっぱい。
目で見て分かるほどの成長の早さへの感動が、痛みよりも遥かに上回るサツキ。
たった数秒しか経っていないのに、もう左手だけでは隠せないほどに成長していくおっぱいをじっくり堪能しつつも、いい加減隠さないとまずいのでYシャツを拾いに行く。
一歩歩く度に揺れる自分の胸に不思議な感覚を覚える。
「くっ…非常に名残惜しいが、もう隠しきれないし着るしかないか」
サツキは心底悔しそうにYシャツのボタンを閉めていく。
いつもなら片手でも閉められるが今となってはそうはいかなかった。
第二、第三ボタンは両手でシャツを強く引っ張らなければ閉まらない。
そして閉まったとしても…。
「胸が苦しい」
今までのまっ平らサイズを想定していたYシャツでは、対応しきれるはずがなかった。
「やばい、これ以上は破れる!」
そうサツキが危惧した直後、成長は止まった。
サツキのおっぱいは、胸を張ったらボタンが数個飛んでしまうくらいに大きくなっていた。
「うわ…足元が見えない代わりに谷間が見える…」
ここまで即決できる交換条件は他にないだろう。
本当にツイている時にしか見られないはずの希少な光景が、首を動かすだけでいつでも見られる。
至福すぎる。
「よし、ラストスパート!」
天使がそう呟いてからは早かった。
「えいっ!」
ヒュンッ…。
「あひ!?」
股間がスースーする。
サツキはズボンを下ろし、そーっとパンツの中身を覗く。
「ない…ない!」
「やあ!」
ポンッ。
「ぐっ!?」
パンツがきつい。
サツキは自分の尻をぺしぺしはたく。
「大きい!柔らかい!」
「ていっ!」
ギュッ。
「ああああああああ!!!」
骨を砕くように足が圧縮されていく。
「足のサイズまで…天使さんわかってらっしゃる…」
光の輪が地面に到達したのを見計らって、天使は躊躇いなく光の輪を全力で浮上させる。
「ぎいいいいいいいい!!!!」
その速さによって巻き起こった風により、サツキのありとあらゆるムダ毛が一斉に抜かれる。
「とりゃー!」
天使は仕上げと言わんばかりの雄叫びをあげ、光の輪を一枚の板に変化させ、それをサツキに突き落とした。
サツキは声を上げる間もなく、回避する間もなく、頭一つで受けた。
「はーい!これで終わりー!」
サツキは最後の一撃で、20センチ以上身長が縮んでいた。
終わってみれば、もうどこからどう見ても華奢な女の子にしか見えない。
「モ、モウムリ…」
「あ、あれ?」
サツキは全体力を使い果たしたのか、その場で気絶してしまった。