夏の始まりの事でした。5
その叫びに呼応するように、天使の頭の光の輪が大きくなっていた。
「ほい」
天使は光の輪を素早くサツキの頭上へ投げ込み、しっかり操れるかどうかを確認したあと、ゆっくりと両手を下げていく。
光の輪もその動きに連動し、サツキを覆うように徐々に下降していく。
「ぐああああああああ!!!」
光の輪がサツキの頭を覆い始めた時、今まで険しい顔をして立っていただけのサツキがとうとう叫び声をあげた。
「あーだめだめだめ!痛い痛い痛い痛い!!!か、髪がッ!!ひっ引っ張られる!」
サツキは自分の髪が力の限り引っ張られているような感覚に陥っていた。
しかし実際はそうではなかった。
引っ張られているように感じるほどに、勢いよく髪が伸びているのだ。
その様子を見ながらも、天使は平然と黙々と作業を進める。
「目があああ!あっ、鼻あああと耳いいいい!次くち!口が裂ける!!ぎゃあああああああぐッ…か…か…」
今まで叫び散らしていたのが嘘のように止まり、不気味なほどに静まり返る。
光の輪はサツキの喉元を覆っていた。
声は出ないものの表情はより険しく、そして涙目になっていくサツキ。
「………………ぁ…ぁぁ…ぁああああ!?ううううう!!!」
光の輪が肩に差し掛かった辺りでようやく自分の声を取り戻したかにみえたが、明らかに以前と声色が変わっている。
だがそれに反応する間もなく、次の痛みが走る。
「つ、潰れるッ…!」
サツキの両肩に強烈な圧力がかかる。
ゴリゴリゴリゴリゴリ。
聞こえてはいけない音が轟く。
「ふぅ…」
天使が一息つくと、痛みの嵐も途端に止んだ。
「はぁはぁはぁ…はっ!声が…高くなってる…!髪も!こんなに長くてさらさらに…。すごい…天使すごい!!!」
サツキはさっきまでの苦しみを忘れたかのようにはしゃぎだす。
貯めに貯めた感動を一気に放出する。
「よーし、ここは念入りにっと」
天使が気合を込めた一言が後半戦の合図となった。
より真剣な眼差しをサツキに向ける。
それもそのはず、光の輪はついに胸に達していた。
「ん…」
両胸の中心あたりがむずむずしてこそばゆい。
「まさか…これは…」
サツキは顔を下に向ける。
いつもと視界が若干違う。
それもそのはず、いつも見えていた景色の一部が隠れている。
あんなに平坦だったYシャツが山を形成し始めていたのだ。
サツキは欲望のままYシャツのボタンを外し、すぐさま脱ぎ捨てる。