夏の始まりの事でした。2
外に出るとおどろおどろしい曇天に覆われていた。
「うわ、振りそうじゃねえか」
傘を持ってきていないサツキは、足早に帰ることを決意した。
その帰り道、曇天がサツキを改めて考えさせる。
こんなにも俺は女の子になりたいと望んでいるのに、神様はどうして何もしてくれない。
やはりナギサの言うとおり、絶対起こりえないことなのだろうか。
所詮この世界は科学に支配された、平々凡々な世界なのだろうか。
「ふっ」
思わず鼻で笑ってしまう。
本当はずっと前から分かっていたんだ。
「神様なんて存在しないことをな!」
そう言い放ち、目の前に転がっていた空き缶を思いっきり蹴りあげた。
蹴り上げられた缶は、サツキの予想以上に高い弧を描きながら浮遊する。
「神様までは届かないよな」
サツキが落胆の色を浮かべながらそう呟いた瞬間。
ドガガガガガガ!!!
「うああああああああ!!!」
耳が壊れそうなくらいに激しい音と共に、サツキの目の前が凄まじい光に飲み込まれる。
「な、なにが起きたんだ…?」
始めは目が眩んで何も見えなかったが、だんだん視界が広がっていく。
ようやく状況が掴めはじめる。
粉々になっている空き缶を見る限り、それめがけて雷が落ちたようだ。
「し、死ぬかと思った…」
サツキは心臓の音を聞き生きていることを実感する。
「死ぬわけないだろう。殺すつもりなどないのだから」
「え…?」
サツキは驚き、急いで後ろを振り向く。
だがそこに人の姿はない。
「なんだ今の声…。まさか、直接俺の脳内に…」
「いや上にいるから」
サツキは驚き、急いで上を見上げる。
見上げたと同時に走る首筋の激痛。
目の前には、どこからどう見ても小学生くらいにしか見えない白い羽根が生えた幼女が浮かんでいた。
「お前…俺の首筋に何をした…!」
「いや何もしてないから」
そうだ、今日朝寝違えたんだ。
サツキは徐々に赤くなる顔を隠しながら、コホンと咳払いをし改めて見上げる。
「で、でたあああああ!」
「そうそう、その反応だよね!もうしっかりしてよね!」
「なんかごめんね」
「まあ最終的には丸く収まったし、おっけー!」
天使は親指をぐーっと立てている。
なんだろうこれ。
目の前のこの子どう見ても幼女…ではなく天使だよね。