女の子になりました。5
「スミノフ」
「ん?」
「スミノフ」
あ、まずい。
これは確実に踏んだ。
間違いなく踏んでしまった。
サツキは必死に取り繕う。
「あ、あー!スミノフね!うん、いい名前だね!」
「今、なんかイメージと違う…って思ったでしょ!」
「いやいやそんなことは…思ってない…こともないけど…」
サツキは声にデクレシェンドをかけるように口ごもる。
「天国耳だから全部聞こえてるよ!」
「天国耳…」
きっと地獄耳の意味だ…。
天使だけにねってやつだ。
わざわざ考えてるのかなこういうの。
「名前のこと気にしてるのに、ひどいよ!」
天使は今まで向けていた視線を足元に落として、純白のスカートの裾をぎゅっと握りしめる。
「そうだよね!ごめんね!ほ、ほんとにごめん!」
サツキは子供のアイスを落としてしまったかのように誠心誠意、心から謝る。
それを聞き小刻みに震えて反応する天使。
「…フが悪い」
「え?」
聞き取れなかったのではない。
ただ単純に意味が理解できなかった。
「フが悪いんだよ!スミノまではまあいいよ。最後の一文字で大どんでん返しだってあるんだよ。なのにどうして?どうしてよりにもよってそこでフをチョイスしたの!」
知らないよ…。
「知らないよ…」
しまったつい声に出してしまった。
「そうだよね。知らないよね。そりゃ知らないよね」
どうしよう。
この天使…スミノフちゃん、急にやさぐれちゃった。
やさぐれスミノフちゃん…かわいい…。
「ん?」
天使が腕を組みながら、それでも可愛く圧迫している。
嫌だなぁこの空気、困ったなぁ。
とりあえずさっとフォロー入れてみようかな…。
少々面倒くさくなったサツキは、捨て身のフォローに徹することに決めた。
「いやでもほんといい名前だと思うけどなー!」
「ふんっ」
この程度では屈しないようだ。
何度もされたんだろうなぁこのフォロー。
「じゃ、じゃあ愛称考えてやるよ…!」
「え…?」
見切り発車で挙げた代替案が、予想以上に響いた。




