第四話
忙しさのピークが過ぎ、久々に時間が空いたので広海に電話をかけた。
「もしもし??」
しばらくして電話に出た広海はもの凄い騒音の中にいるようだった。
「広海?私だけど何その音??」
耳から携帯を少し離して聞く。
「今ね会社の連中と近くで呑んでるんだよ。どうしたの?」
だいたいどこにいるのかわかる。私の会社と彼の会社は近くて同じ最寄り駅だから。会いたい、と言いかけてやめた。
「そっか。邪魔してごめんねっ。あんまり飲みすぎないように!じゃあ楽しんできてねー。」
もう結構酔っ払ってるらしく、なんで私がかけてきたのか全く気にする様子もなかった。
じゃあ今日はゆっくり寝るか、と足早に駅に向かう。途中、何軒かの居酒屋を通るから、この中にいるのかなとか思いながら歩いていた。
すると次に見える居酒屋の前にいる団体に目が行った。横を通り過ぎようとするとその中から
「江梨??」
と声がした。
「どうしたの〜?!今日はもう帰りなの??」
広海は案の定相当酔っ払っていておぼつかない足取りで近付いてきた。そして私に口を開かせる前に、
「そうだ!これから二軒目行くから、江梨もきなよ!みんなに紹介したいし。」
と強引に私を輪の中に入れた。
私が
「あっえっ…でも邪魔じゃない?」
と遠慮すると、みんな歓迎してくれたけど、
「いいですよ〜一緒に行きましょうよ〜。」
と、やたら馴れ馴れしい若い女の子がいた。でも、みんな酔っ払ってるんだなぁとしかその時は思っていなかった。