お気の毒ですが私はゾンビのようです
すごく短いです
船の中でダウンした私は誰かが近づいてくるのを感じとった。
前の世界での経験は生きているようで、少しほっとした。
仰向けの状態で首だけを動かして外を見ると、ゼノが誰かを連れてきたようだ。
でもさっき逃げていったデカい狼を縛りあげている人形の挙動が気持ち悪い。
「何あれ気持ち悪っ」
思わず声がでるほどだった。
うぐ、お腹が。叫ばせるなよ。
「お前、どうしたの?」
「分かんないよ。腹筋一回やっただけなのにつったとか。この世界ってなんなのよ」
「それは、ご愁傷様。でもさっきのこともあるし、原因がわかるまでじっとしてたほうがいいんじゃないか」
「うぐぐ」
じっとしている。私はそんなこと大嫌いだ。
生まれてこの方、体を動かすことを生きがいにしてきた。
前の世界では研究者の姉とは正反対に軍人として生きてきたし、なよっちい男どもを差し置いて隊長をやっていた。
「絶対、絶対に見返してやる」
涙目でこの世界に宣戦布告をした。
「誰にだよ」
つっこまれたが気にはしない。
「それでそこの人とかは?」
さっきから私を見て焦ってるけどなんなの?
「犬を捕まえてくれた人だよ。名前はアンドウミキヒトだってさ」
「ふうん。私はメイティア・ローゼルト。よろしく」
興味はない。ゼノよりカッコよくないし。
?????????????
あれ?
「おーい、どうした」
「ふぇ?」
ゼノの顔が近くにあって少し焦る。
私、何考えてたんだっけ。
「あ、あの。すみません。この方はゾンビですよね?」
「「え、何て?」」
くっ、被った。
「いや、あの。メイさんってゾンビだったんですか?」
「な、何言ってるのよ。私はちゃんと生きてるじゃない」
「言いにくいのですけど、、」
「はっきりして」
「あなたの種族がゾンビになっています」
えーと、ゾンビってあれよね。動く屍とかそういう意味よね。つまり私は死んでるってことよね。それじゃあ心臓が動いてなかったり、体が冷たかったりするのは私が死んでるから? でもゾンビってすごい力とかあって走って追っかけてしてくるって本に書いてあったし、私がゾンビになっても腹筋とかできるってことよね。あ、この世界ではゾンビってゆっくり動くものなのかな。すごい貧弱なやつ。あ、あはは。あはははは。
「ゾンビとかふざけるな!!」
私は右拳で床を叩いた。
右拳が、すごく痛い。
痛みに悶えて転げ回った。