案山子の商人(スケアクロウマーチャント)ミキヒト
orz。
書いてる途中、新キャラを思いついて、出そうか迷ってたら書くのが遅くなりました。
しかもこれしか書けてないし。
ゲームにも少しはまってました。はい。
でもあの時書く気持ちがわかなかったし。結果オーライてことで。
新参者ですし皆さん期待してないと思うけど、少しでも暇潰しのために読んでくれる人のためにこれからも頑張って書きたいです。
よろしくお願いします。
僕の名前は安藤幹人。
二年ほど前に落とし穴に落ちてこっちの世界にやってきた中学三年生。いや二年経ったから、あっちでは高校二年生か。
今は商人の真似事をやりながらボチボチと生計をたてている。
「ミキヒト〜。まだ町に着かないのかー。お腹すいたー」
馬の手綱を握っている僕の背中に、だらりと体を預けている彼女はエリザベッタ。背がとても小さいが、れっきとした用心棒だ。
僕がこの世界に来て初めて会った人間であり、右も左も分からない僕の世話をしてくれた恩人でもある。
「さっき食べたばかりじゃん。ほんとにこの、エリザベッタめ!」
食いしん坊にはお仕置きである。
「んあ!?」
エリザベッタが案山子に変わる。正確には案山子を身代わりに彼女を移動させたと言ったほうが正しい。
行き先は上空。
すぐに落ちてくる。
そのまま落ちると大怪我だが、これはお仕置きなのでそんなことはしない。
彼女が何らかのダメージを受ける代わりに、案山子が入れ替わってすべてを肩代わりするように魔法をかけてあるから大丈夫。
「」
何かに当たって戻ってきたのだろう。放心状態になった彼女が僕の後ろに現れた。
これでしばらく大人しくなる。
紐なしバンジーの威力は効果絶大だ。
まあ、彼女の場合良くも悪くも忘れっぽいので、気がついたらまた言い出し始める。
「まったく」
何も知らない人からすれば、虐待と言われるだろう。
だが森に入る二十分前に、銀貨一枚(あっちの世界で約一万円くらい)もする焼き肉ブロック(たしか一キログラムだった)をいつの間にか注文して、一人締めして目の前で食べて、挙げ句の果てに森に入って一時間もしない内に、お腹が減ったなどと言われれば、誰だって少しは怒ると思う。
「早く大富豪になってエリザベッタにお腹いっぱい食べさせてやりたいなぁ」
初めて会ったときは土とか岩を食べてたし。でも彼女の種族的に空腹は仕方ないことではある。
とそこへ声が聞こえてきた。
「おーい! そいつから離れろ!」
声のしたほうに振り向くと大狼が走って来ていて、その後ろに人影が見えた。
危ないから逃げろということか?
だがあいにく大狼ごときは僕の敵ではない。
さっそく魔法袋から、戦闘案山子を一体取り出す。
「動け。スケアクロウ!」
魔法袋から取り出すと次第に大きくなり、二本のサーベルを持った一本足の案山子が現れた。
「ガサッ」
戦闘案山子が大狼に切りかかろうとすると、僕はそれを見た。
狼の、異常なまでに光のない真っ暗の目を。
「止まれ!」
考えるよりも先に戦闘案山子を止めた。
あれは攻撃したら何かがある。異世界にやってきて二年の、経験の直感で判断した。
だがこのまま野放しにしたらもっとだめだ。
魔法袋から新たに五体の案山子を取り出す。
「そいつを拘束しろ。スケアクロウ!」
拡大したそれらは木の根の腕を持っている。
「ガサササササッ」
命令を早急にこなすために一斉に大狼に襲いかかった。
案山子達は素早い大狼をものともせずに、足や首に絡みついて動きを止めた。
「ギャウアア!!」
大狼はもがいているが拘束が外れる気配はない。
「ふうー」
紙一重だ。攻撃していたらどうなっていたか、分からないが何かしら酷いことにあっていただろう。
この世界は初見殺しが多すぎる。僕が危ない目に遭ったとき、いつもエリザベッタが助けてくれていた。
「エリザベッタ様々だよほんとに」
食費が凄いけど。命を助けてもらってるから安いものと割り切っている。
僕は少し離れた場所で成り行きを見守っていた人物に声をかける。
「これで良かったでしょうか?」
正直に言って彼は不気味だ。この大狼と同じ目をしている。
それに魔族の中でも上位の者が着ている貴族服。どうしてそんな物を着ることを許された存在が人間の領土にいるのか。
しかし離れろと言ってくれたのは、間違いなく彼だろう。
「ありがとう。助かったよ」
魔族が人間に感謝する所なんて初めて見た。しかも感謝される側とは、一生に一度あるかないか、いや全人類に一人いるかどうかだろう。
「は、ひあ」
思わず声が裏返ってしまった。
咳払いを一つ。あと礼儀正しい魔族に馬上では失礼だと思い、馬から降りた。
「失礼しました。私は安藤幹人と言います。あなた様は?」
すると魔族は首を傾げた。無礼があったのだろうか。
今気づいたが魔気の漏れがない。よほど上位の存在なのだろう。それも最上位に近い。
「あ、ああ。俺は、……上を見れば分かると思う」
彼は頭上を指差した。
V−3455 ゼノ・エイリアン? 名前? 不思議に思ったのはそれだけじゃない。更にその上。
【弱者の身にて魔王を倒した者】
「何だこれ!?」
僕は叫んだ。