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第3話

大変お待たせしました。

それを聞いたバロン伯爵は、ホッとしたような、娘が家のために決めたような気がして複雑な気持ちでした。

「本当にいいんだな、ファナ?」



「もちろんですわ、父上。伯爵家の娘として当然のことです。今までが恵まれていたのですから…。」

少し寂しそうに笑ってファナが答えます。



「ファナ、無理をすることはないのだぞ。父が頭を下げればすむことだ。」

少し複雑そうな表情でバロン伯爵が言います。



「父上、ご無理をなさらないで…。宰相さまのご不興を買うほどのことではありませんわ。家のために結婚するのは、貴族の娘として当たり前のことではありませんか?」



「うっ、まぁ…。確かにそれはそうなのだかな。」

気まずそうにバロン伯爵は答えます。



ファナはクスクスと笑って、

「だから父上は出世出来ないのですわね。これが他家でしたら、有無を言わさずに嫁がせるでしょうに…。でも、私はそんな父上が大好きです。」



「そ、それはどういう意味だ…?」

少し引き攣った表情でバロン伯爵は尋ねます。



「父上、すみません。私は、貴族らしくないかもしれないですが家族思いの父上が大好きなのですわ。」

少し困ったような表情でファナが答えます。



「あ、それは…、褒めているのか?けなしているのか?」

やや引き攣り気味にバロン伯爵が尋ねます。



「父上、私は大好きと申しましたでしょう?私のことを思って下さる父上を有り難く思っております。」



「そ、そうなのか…?」

バロン伯爵は父としては褒められたものの貴族としてはイマイチだと言われ複雑でした。



「すみません、父上。あの、でも…、これでわが家もきっと安泰ですから元気をお出しになって下さいませ。」

遠慮がちにファナがバロン伯爵を慰めるように言います。



「ファナ、私は娘を犠牲にしてまで出世は望んでおらぬぞ。」

バロン伯爵はきっぱりと言います。



「ありがとうございます、父上。そのお気持ち十分に感じております。」

ファナは涙ぐみながら答えます。



「ファナ…!また、だめなの?」

突然、扉が開いたと思ったらファナの母であり、バロン伯爵夫人・イザベルが現れました。



「母上!と、突然どうなさいましたの…?」

ファナが少し戸惑いがちに尋ねます。



「イ、イザベル…。突然入ってくるな。びっくりするじゃないか!」

バロン伯爵が穏やかに妻をたしなめます。



イザベルは首をすくめて、申し訳なさそうに、

「だんなさま、申し訳ございません。お声はおかけしたのですが…。あの、宰相さまがお越しになりましたのに、ファナが断ったのではと心配だったものですからお許し下さいませ。」



「ふむ…。まあいい。そのことで話しがあるからイザベルも座れ。」バロン伯爵は仕方なさそうに言います。



イザベルはホッとしたように、いそいそと席に座り、

「それで、お話しと言うのは何ですの?」




「ああ…。それはだな、ファナの結婚のことだ。」

バロン伯爵は少し緊張気味に話しはじめました。



「ファナの?それは、その…。」

イザベルは言いにくそうに言葉をつまらせてバロン伯爵と娘のファナの顔を見合わせます。



バロン伯爵は、いつもは強気な妻のそんな不安そうな様子に笑ってしまい、

「心配をするな。ファナは宰相さまのご子息との縁談を承知した。」



それを聞いたイザベルは心底安心したように、

「まあ…!それは本当ですの、だんなさま、ファナ?私をからかっているのではないのでしょうね。」



それを聞いたファナはクスクスと笑って、

「母上、本当ですわ。私、この縁談をお受けすることにしましたの。」



「まあ、ではファナ、ついに決心してくれたのですね!ありがとう、ファナ。母は嬉しいですわ。」

イザベルは我が事のように嬉しそうに話します。

「だんなさま、よろしゅうございましたわね。」



「ああ、肩の荷が降りたような気がするよ。」

少し安心したようにバロン伯爵が答えます。



それを聞いたファナは気まずそうに、

「申し訳ありません、父上、母上。ご心配をおかけしまして…。」



「いやいや、私たちはファナを邪魔にしているわけではないのだよ。だが、私たちがいなくなった後どうなるか心配だったのだよ。よもや、修道院に行くようなことはないかと…。」



それを聞いたファナは思わずドキリとしましたが、

「恐れ入ります。」



「では私は、明日にでも宰相さまの屋敷に伺ってこの縁談のお受けすると申し上げてこよう。」

ゆったりと笑ってバロン伯爵が言います。



「あら、まだお返事をなされてないのですか?」

イザベルが怪訝そうに尋ねます。



「ああ、突然の宰相さまの訪問だったからな。結果はどうあれ、改めてご挨拶に伺うつもりだったのだよ。」

やや複雑そうな表情でバロン伯爵が答えます。



「そうでしたか。では宰相さまの屋敷に明日、伺うと使いを出しておきましょう。」

明らかに安心したようにイザベルが言います。



「よろしく頼むぞ。ファナ、父は所用があるから後でな。」

バロン伯爵はそう言って部屋を出て行きました。



「はい、父上。」

ファナは微笑んでバロン伯爵を見送ります。



バロン伯爵が出て行った後、イザベルがファナが嬉しそうに話しかけてきました。

「…ファナ、よく決心してくれましたね。父上のお立場も伯爵家もこれで安泰ですわ。」



「母上…。」

ファナが複雑そうな表情でつぶやきます。



「ファナ、さあ、これから忙しくなりますわよ。宰相さまのご子息に嫁ぐのですもの、お披露目も華やかなものになるでしょう。」

イザベルが伯爵家を取り仕切る夫人らしく、ファナに言います。



「ええ…。あの、でも、それは華やかでなくてはいけませんの?」

ファナが遠慮がちにイザベルに尋ねます。



「ファナ、あなたは二度目でもあちらさまは初めてのことなのよ。ましてや宰相さまご子息の婚礼なのですから、こじんまりと言うわけには行かないのでしょう?」

当たり前のようにイザベルは娘のファナをたしなめます。



「ファナも気持ちも分かるけれど、何も申さずにおきなさい。あちらさまに悪印象を与えては、今後に差し支えましょう。可愛がっていただけるように、譲れるところは譲っていきなさい。それがファナのためなのですから。」



「はい、母上。あの、ところでお聞きしてもいいですか?」

殊勝げにファナはイザベルに尋ねます。



「何かしら?」



「お相手の方は私といくつ違いなんですの?」



「まあ、ファナ!そのようなことも知らずにお受けしたのですか?」

お読みいただきましてありがとうございます。

あともう少ししたらファナの結婚相手も出てくる予定です。

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