閑話:魔力暴走フラグを回収しました。
視点がころころと変わって申し訳ありません。以後気をつけます。
あれ、今回は勘違い要素が……次回から本気出す。
アルノルト視点
十数体ほどのゴブリンだったモノが転がっている場所で、僕は護衛の報告を聞いていた。
「付近を調査したところ、ここから数メートル離れた岩場で【蛇の首飾り】を発見致しました。恐らく、ナイトゴブリンが所持していた物と思われます。サーチに反応が無かったのも、この為かと」
「蛇の首飾り、か……」
それは、所持者の半径20メートル以内に存在する者の気配を包み込み、サーチに対する反応を打ち消すマジックアイテム。
諜報活動に便利だが高価なソレは、本来所持しているはずの者が限られてくる。
少なくとも、数十体のナイトゴブリンなどに勝てないような人間では……
何やら、嫌な予感がする。
「……報告ご苦労、戻って良いよ」
「ハッ!」
敬礼をして去っていく護衛を見送りながら、僕は辺りを見渡した。
数時間前のロベルトの魔力の爆発で、ほとんどのゴブリンは原型を留めないほどに吹き飛び、周辺には異臭が立ち込めている。
「副隊長、準備が整いました」
背後から掛かった声に振り返ると、僕の部下の一人である【リーネ】が悠然とこちらを見据えていた。
「ああ、では頼む」
「了解」
リーネに取り掛かって貰っているのは、魔物の残骸の浄化。
魔物は、その身体の大半を魔力で構成しているが、ある程度は血も肉も骨も存在している。
そのため、浄化しなければ肉が腐って異臭を放ち、その臭いにつられて別の魔物が集まってくるのだ。
魔物の残骸から少し離れた場所まで移動するとリーネが目で問いかけてきたので頷いた。
「かの血、かの肉、かの骨、我は其の穢れを祓う者なり。魔なる者の先に安らぎあらんことを。《浄化》」
リーネの言葉と共に、魔物の残骸が燃え上がる。
この光景を見る度、僕は浄化というより処理という言葉を連想してしまうんだけれど……それは恐らく術行使者への冒涜なんだろうね。
もう見慣れてしまったとも言える光景に取り留めも無い事を考えていると、街のある方角から馬に乗った護衛が駆けてくるのが見えた。
「旦那様、坊ちゃんがお目覚めになりました!」
僕を視界に捉えたらしい護衛の言葉に、僕は大きく安堵の息を吐いた。
魔力の暴走は、術者の魔力が尽きるまで止まる事は無い。
最も、魔力が尽きても気絶して目覚めた後に途轍もない疲労感が襲ってくるだけで、死ぬことは無いけれど、それでもロベルトの事が心配だった。
「副隊長、あとは私がやっておきますので、副隊長は早く坊ちゃんの所へ向かって下さい」
僕の様子を見ていたリーネの言葉に、今回だけは、と甘えることにした。
心配な事もあるけれど、ロベルトには聞きたい事がいくつかあるからね。
蛇の首飾りの効果で気付けなかったはずの魔物の襲撃、わざわざ魔物の群れの中心に突っ込んできた事、そして何より……
魔力をわざと暴走させたこと。
「少し、お仕置きしないとね」
僕の呟きは、魔物を浄化する炎の音にかき消えた。
おや、親バカの様子が……
リーネさんはインテリな眼鏡美人イメージです。
【蛇の首飾り】は適当に連想ゲームした結果です。
隠密といえば……ですよ。




