閑話:魔物遭遇フラグを回収しました。
感想を頂いたのでテンションが上がり、ノロノロながら続きました。ありがとうございます。
そして今回も親バカ視点です。
アルノルト視点
僕は馬車に揺られながら、向かい側の席に座るロベルトの、ここ1年の成長を振り返っていた。
そう、ロベルトに剣術と魔術を習わせ始めてから1年。やっぱりロベルトは天才だった。
多くの貴族の子供は7歳頃から剣術などの体術、魔術を習い始め、一年程度で適性を見て一つに絞り、それを極めていく。
でも、ロベルトは剣術も魔術も才能があって、本気になればこのまま一流の魔剣士も夢じゃないだろうと僕は思っている。
それに、ロベルト自身もかなり楽しんでいるらしく、朝も夕もなく庭で剣か杖を振っている。
最初は疲れて倒れるんじゃないかと心配で仕方がなかったけれど、昔から庭を走り回っていた上に魔力の絶対量も多かったロベルトが倒れることはなく、逆にメキメキと実力が伸びる一方だ。
だから、魔術や剣術については、今はあまり心配していない。
ただ、困っていることが一つ。
座学の時間がない。
貴族の子供、特に家を継ぐ嫡男には、幼い頃から貴族としての正しいあり方や幅広い知識を身に付けるための座学の時間が設けられる。僕も6歳の時から座学として地理や経営学や帝王学を習っていた。まぁ、その後から習い始めた剣術の方が好きだったんだけどね。
座学が大切なことは分かってる。でも、ロベルトから無理やり剣と杖を取り上げるなんて僕には出来ない。
ロベルトは賢いから座学も苦にはならない可能性もあるけれど、万が一それで嫌われるような事があったら、なんて考えただけでも恐ろしい。
だから僕は、
「魔物だとぅ!?」
考え込んでいた僕は、ロベルトという天使の声でハッと現実世界に引き戻された。
「どうしたロベルト!?急に魔物なんて言い出して……怖い夢でも見たのか!?」
展開しているサーチに何の反応も無いこと確認してから、『頼れる父親』を意識して問いかける。
「えっ、あぁ、いや、その。夢というか……」
僕の問いかけに、ロベルトは落ち着かなそうに目を泳がせている。
もしかして、夢で飛び起きたのを恥ずかしがってる?カッワイイなぁ、もう!
と、そこで、夢を見るという行為が意味することに気づき、少し前の自分を殴りたくなった。
ロベルトの寝顔を見逃した。
何故か昔から気配に敏感だったロベルトの寝顔なんて、もう何年と見ていない。つまり、滅多に無い『無防備なロベルト』を見るチャンスを、僕は、ぼくは……!
「っ、あれはナイトゴブリンの群れだ!」
「何!?」
再び思考の渦に巻き込まれそうになっていた僕を引き戻したのは、ありえないハズの知らせだった。
まだまだ勘違い要素は薄いですね……もっと濃くして行きたいと思います。