夢落ちフラグが立ちました。
その名の通り。
今回は少し長めです。
久々に主人公視点書いたら話し方が定まってない気が……少しだけ書き直すかも知れません。
定期試験当日、ピリピリとした雰囲気が学校全体に漂っていた。
教室にも廊下にも試験直前までノートを広げ暗記する生徒ばかりで、客観的に見るととても異様な光景だ。
まあ、高校で留年したとあれば将来の就職口にも影響するし、当然といえば当然か。
「現実逃避してんと、お前も何かやりいな」
背後から聞こえた呆れたような声に振り返ると、ノートを広げた友人がやはり呆れたような目で俺を見ていた。
「俺さあ……いっつも思うんだよな」
俺は友人の肩越しにも見える異様な光景を見つめ、呟く。
「どうせ下らん事やろ」
「いや、これは一般意思と言っても間違いじゃない」
聞く気が無いとでも言うようにノートに向き直った友人に、俺は静かな声で反論した。
「じゃあ言ってみいや」
ノートから顔を上げないまま面倒臭げに言う友人に、俺はスポーツ少年並みの爽やかな笑顔で言った。
「テストってどうやったら滅びるんだろうな!」
「……909年、ファーティマ朝成立。969年にエジプトを征服し、」
「おーい、無視は傷付くんですけど」
中学からの付き合いのコイツは、かなりの頻度で俺のハートにヒビを入れてくれやがる。
「しくしく、ひどい。友達だと思ってたのは俺だけなの?」
なおも反応を返さない友人に泣き真似をすると、やっとノートから顔を上げたソイツに睨まれた。
「お前ちょぉ黙っとき。世界史みたいな暗記物は直前が勝負やねん」
ドスの利いた声に少し腰が引けるも、俺は喋り続ける。
「いつもはそんなに真面目じゃないだろ。というか、今さら足掻いたって無駄だとか思わないのか?」
俺はノートを開いた途端に「無駄な足掻きフラグ」が立つから、何もせずにボーッとしてるんだが。
「俺はお前と違うて記憶力ええから、直前でも結果が変わってくんねん」
「んなっ……」
サラッと傷付く事を言われ、唖然とする。
数秒後に我に帰り、慌てて口を開く。
「俺だって記憶力そんなに悪くないし」
「悪いやろ」
あまりの即答に、ついムキになる。
「何を根拠に言ってんだよ」
「だってお前……」
静かな声で友人が答える。
「俺の名前すら覚えてへんやん」
「……はあ?」
何言ってんだ、コイツ。
思わずそんな目で見てしまう。
「あのなぁ、三年以上前から付き合いのある奴の名前、覚えてねえ、わけ……?」
あれ?
コイツの名前、何だっけ?
中学の時に転校してきて、それ以来ずっと同じクラスだった腐れ縁の友人。
、中学で転校生なんて居たか?
急に目の前の「友人」が、他人に見えてきた。
こんな奴、知り合いに居たか?
地面が揺れているかのように、足元がぐらつく。
鼓動が速まり、手のひらが汗ばむ。
コイツ、誰だ?
そもそも俺は今、何処にいる?
――ルト
俺は……誰だっけ。
「ロベルト!」
聞き覚えのある声に、ハッと目を覚ました。
瞬間、視界に入ったのは、何となく見覚えのある部屋と、心配そうな顔をした二人の男。
「ぎょしゃさんに……とうさん?」
何でそんな心配そうな顔を……
ふと思い出した。
そういえば俺、魔力暴走させて気絶したのか。
あれからどうなったのかは知らないが、二人の様子から見て結構な時間が経ってるんだろうな。
つまり心配されてる間、俺は暢気に夢を見てたって事か……ん?
夢で忘れてたアイツの名前……普通に覚えてるじゃん、俺。
I原A太、もとい、愛原栄太。中学からの腐れ縁。
うおぉ、ビビった。夢ってこういう事があるから怖いんだよな。
安堵のため息を吐きながら父さん達を見ると、二人は何とも微妙そうな顔をしていた。
寝起きでボーッとしてる暢気な俺に呆れてるのかとも思ったが、何か少し違う気もする。
心当たりは……あ、もしかして。
「ぼく、寝てる間に何か言いました?」
前世で修学旅行に行った時、同室だった栄太が目の下にクマ作ってキレてきたんだよな。
お前の寝言怖いねん、って。
まったく自覚は無いんだが、寝言で物騒な単語を呟いてたらしい。
だからさっきも変な事言ったのかも、と少し不安に思って父さんに聞いたんだけど、父さんは何故か可哀想な子を見るような目でこう言った。
「いいや、何も言ってないよ」
……じゃあその目は何ですか、父さん。
シリアスって何ですか食べられますか。