表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/20

閑話:予言者フラグを回収しました。(後)

長くなったので二つに分割してます。同時掲載です。


03/13

加筆修正


いくら何でも無理があるだろう、と思ったので、後半部分を書き直しました。

「坊っちゃんは危害を加えられた様子も無く寝台に身を起こされており、御部屋にも何者かが侵入した形跡は見られなかったので、私は初め、何か悪い夢でも見られたのだろうと思いました」


ミケはその素朴な顔に似合わない、自嘲するような笑みを浮かべた。


「坊っちゃんに声を掛けようとしたところ、虚ろな目で周りを見回した坊っちゃんの、呟くような声が聞こえました。……聞き取る事が出来たのは、フラグ、危ない、起きる前に、という単語のみでしたが」


「フラグ?」


聞き覚えがある。確か、隣国の【ライル皇国】の第三皇子がそんな名前だった。

ただの偶然かも知れないけれど、フラグという名前はこの辺りでは珍しい。


隣国のフラグ皇子に危険が迫っているという事だろうか?

では、起きる前に、とは一体……何か事件が起きるのか、もしくは封印されていた何かが目覚めるという意味なのか……


いや、いや。僕が深く考え過ぎているだけで、本当はロベルトの呟きには何の意味も無いかも知れない。

むしろ、その可能性の方が高いじゃないか。


「僭越ながら」


僕の思考を否定するように、ミケは言った。


「私の予測では、坊ちゃんは【予言者】ではないかと」


言われてしまった。


「そんなこと、何を根拠に……」


「私が何も出来ずそのまま坊ちゃんを見つめていると、坊ちゃんは突然目を見開き、まるで自分に言い聞かせるかの如く何かを呟かれました。尤も、扉付近にいた私からは距離があり、ハッキリとは聞こえませんでしたが……」


『俺は――だ』


「その時の坊っちゃんは、まるで……自分を侵食する何かに怯えるような、そんな様子でした」


喉が渇き、鼓動が早くなるのが自分でも分かった。

落ち着くためにコーヒーを飲んでも、心臓はまだうるさい。


「これは推測ですが、坊っちゃんは、坊っちゃんの意思すら蝕んでしまう程の強い力を持った、高位の精霊をその身に降ろしているのではないでしょうか」


古来から、精霊をその身に降ろし過去や未来の出来事を告げる者は、シャーマンや予言者と呼ばれ崇められてきた。


精霊の力が強ければ強いほど、術者の身に掛かる負担は大きくなる。

でも、ロベルトは今までずっと健康で、身体に疲れが出てもすぐに回復していた。


つまり、つい最近精霊を降ろしたか、何かの衝撃で眠っていた精霊が起きたのか……


魔力を暴走させた瞬間のロベルトの姿が脳裏を過る。


僕があまり話を聞いてない事に気付いていないのか、ミケはまだ話し続けている。


「先刻、ナイトゴブリンの襲撃を受けた際、私は坊ちゃんの【魔物】という大声を聞き、反射的に目を凝らしました。あの時は偶然だと思いましたが、坊ちゃんが予言者だとすれば辻褄が――」


「うん、決めたよ」


ミケの話を遮り、ついさっき固めた決意を口にする。


「僕はこの事実を、いや、ロベルトが予言者だという“可能性”を覆い隠す」


「……は?」


「自分の子供を守るのは、親として当然の事だ」


予言者なんて、教会に良いように扱われるだけだからね。


「ミケ」


僕が威圧感を持たせて発した声に、ミケは背筋を伸ばした。


「君は、ロベルトの寝言を聞いた。ただ、それだけだ。その寝言が偶然、予言のように聞こえただけで、実際には全く何の意味も無い言葉だった……そうだね?」


目を細めて、僕は淡々と『事実』を告げる。

最後に微笑んで確認すると、ミケは頭を垂れて言った。


「はい、その通りです。旦那様」

ロベルトが怯えてたのは新しい扉が開きそうになった事に対してです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ