冬の舞踏会
冬の夜、森は深い静寂に包まれていた。
雪の上に積もった光は、月明かりに照らされて銀色に輝き、森全体を柔らかく照らしている。
「リリ、見て……光が踊ってる」
雪の妖精のキラの声が耳に届き、リリは振り向く。
森の中で、雪の結晶たちが光を反射し、まるで小さな精霊たちが舞踏会をしているようだった。
「本当……夢みたい」
「うん、でも今日はもっと特別なんだ」
キラは光を散らしながら舞い、リリの手を軽く引いた。
森の奥へ進むと、雪の木が氷のシャンデリアのように輝き、雪の精霊たちが光の中でくるくると舞っていた。
冷たい空気にもかかわらず、リリの胸は温かく、心が躍った。
「リリ、精霊たちは森の声を運んでくるんだ」
「森の声？」
「うん、風や雪、星や氷の声をまとめて、舞踏会の音楽にしているんだよ」
キラは嬉しそうにくるくる舞い、リリの周りに光の輪を作った。
リリは息をのむ。
雪の精霊たちは手の届かないほど小さく、透明で、でも光を反射して無数の色を放っている。
まるで夜空の星が地上に降りてきたようだった。
「リリ、見て……あの大きな雪の結晶の中に、舞踏会の王と女王がいるよ」
「わぁ……小さいのに本物みたい」
リリの胸は高鳴り、目を離せなかった。
雪の精霊たちは光に合わせて舞い、柔らかいメロディーを奏でているようだった。
二人は精霊たちの舞う広場へ進んだ。
雪の上を歩くたび、微かに音が響き、それがまるで精霊たちのステップの合図のように感じられた。
「リリ、この精霊たちは、森の冬を守る存在なんだ」
「守る……？」
「うん、雪や氷の魔法が乱れないようにして、森の調和を保っているんだよ」
リリは胸がじんと熱くなるのを感じた。
森や雪、星と一緒に生きていることの不思議と幸せを、一度に体で感じた。
広場の中心に立つと、大きな雪の結晶がまるで舞踏会の舞台のように光を放した。
リリは息を止め、光の中で舞う精霊たちを見つめた。
「リリ、行こう……精霊たちの王と女王が待っている」
「うん……」
二人は手をつなぎ、雪の結晶の舞台に一歩ずつ踏み入れた。
光は柔かく二人を包み、精霊たちは小さな声で歓迎してくれた。
舞踏会が始まると、光と雪の精霊たちは二人の周りで踊り、音は柔らかく心に響いた。
リリとキラは息を合わせ、光の旋律に合わせて舞った。
「リリ、この舞踏会は冬だけの秘密なんだよ」
「冬だけなんてもったいないね」
「それだけ冬が特別ってことだよ」
「そうだね。こんなにきれいな光と音は初めて」
二人は舞踏会の中で笑い、踊り、雪の精霊たちと一緒に冬の魔法を楽し(たの)んだ。
夜が更け、舞踏会は静かに終わった。
雪の精霊たちは光の中で微笑み、森に帰っていった。
リリとキラは手をつなぎ、静かに夜空を見上げた。
「明日も、この舞踏会の魔法を感じに来ようね」
「うん、もっときらきらがあるよ」
二人は雪の森を後にした。
その夜の光と精霊たちの舞踏会は、リリとキラの心に永遠のきらめきと幸福感を残した。
