冬の朝、リリは布団の中で目を覚ました。
昨日の雪遊びが夢のように胸に残り、まだ心の奥がきらきら光っている。
「今日はどこに行こうかな……」
リリは窓を開け、外の景色を見た。
朝日が雪の上に反射し、まぶしいほどの光で辺り一面がきらきらと輝いている。
「リリ、今日は湖に行こう」
小さな声が耳に届き、リリが振り向くと、昨日出会った雪の妖精キラがひらひらと光を散らしながら舞っていた。
「湖……?」
リリの心はわくわくと高鳴った。
冬の森の中には、小さな凍った湖があるとキラは教えてくれたのだ。
光が氷に反射して、まるで別の世界のように見えるという。
森に向かう道は昨日より雪が深く、リリの足はぎゅっ、ぎゅっと沈んだ。
キラは楽しそうに舞いながら、リリの前を先導する。
「リリ、見て! 木間に小さな氷の結晶が光ってる」
「わぁ……まるで森が星空みたい」
リリは手を伸ばし、氷の結晶をすくい上げた。
冷たく、でも不思議に柔らかい感触が指先に伝わる。
森を抜けると、眼前に凍った湖が広がっていた。
氷の表面は鏡のように滑らかで、太陽の光が反射し、湖全体がきらきらと瞬いている。
「すごい……!」
リリは思わず息をのむ。
氷の上を慎重に歩くと、足元の氷が微かに軋む音を立てた。
森の静けさに、氷の響きだけが広がる。
「リリ、こっちに来て」
キラは湖の端に飛び上がり、氷の光を指さした。
近づくと、氷の中に小さな気泡が無数に閉じ込められ、光が反射して七色に輝いている。
「まるで氷の中に小さな星が閉じ込められてるみたい」
「そう……湖のひみつはね、この氷の中に光を閉じ込める魔法があるんだよ」
「光を閉じ込める魔法……」
「きらきらで素敵でしょ」
キラは微笑み、くるくると氷の上を舞った。
その光は湖に映り、リリの心まで輝かせる。
リリは氷の上を少しずつ進み、光の反射を楽しんだ。
冷たい風が頬をなで、雪がひらひら舞う。
湖の氷は滑りやすく、慎重に歩かないと転びそうになるが、リリは心の底から楽しさを感じた。
「リリ、氷の迷路を作ろう」
キラが提案し、二人は湖の氷の上に小さな溝を作った。
光がその溝に反射し、氷の上にきらきらの線が現れる。
リリは笑いながらその線を踏んで飛び跳ね、光が指先に触れるのを感じた。
湖の中央に近づくと、氷の色が薄い青に変わり、深い湖の底がかすかに見える。
水の中に閉じ込められた光は、まるで眠っている星のように瞬いた。
「リリ、見て……湖の底に光が踊ってる」
「うん……本当だ……」
リリの心は言葉にならない感動でいっぱいだった。
氷の冷たさと、光の温かさが同時に胸に広がる。
日暮れが近づくと、湖の氷は夕日に染まり、オレンジと青が混ざり合って幻想的な色合いを作り出す。
リリはその景色に見とれ、今日の冒険を胸に刻んだ。
「また明日も、湖のひみつを見に行こうね」
「うん、きっともっときらきらがあるよ」
リリとキラは手をつなぎ、凍った湖を後にした。
その光と冷たさは、冬の魔法のように二人の心に残った。