春の陽光が森を優しく包み、冬の名残りを溶かしていく。
雪が解けた小道には水たまりができ、光を反射して無数の小さな光の粒を作っていた。
リリとキラは森を歩きながら、春の香りと風に包まれていた。
小川のせせらぎ、鳥のさえずり、遠くで揺れる木々(きぎ)の音……すべてが冬の静寂とは違う、生命の息吹を感じさせる。
「リリ、春の風って、なんだか未来を運んでくるみたいだね」
「うん…冷たくないのに、心がすーっと軽くなるね」
二人は手をつなぎ、小道を進む。
リリの胸には、冬の思い出が静かに広がっていた。
氷の迷路の冒険、雪の音を聞いた日、夜の森祭り……どれも、今の光と風に溶け込むように思い出される。
「ねぇ、キラ…春になったら、何して遊ぼう」
「うーん……まずは雪の代わりに花で迷路作ろうか」
「わぁ、それ楽しそう!」
リリの声には自然な弾みがあり、キラも思わず笑った。
冬の魔法の余韻は、春の喜びと共に二人の心を明るく照らしていた。
森を抜けると広がる丘の上には、春の光が降り注ぎ、雪解け水が小川のように光を跳ねさせていた。
小鳥が飛び交い、花の芽がそよ風に揺れる様子は、まるで世界が二人を祝っているかのようだった。
「リリ、覚えてる? 冬の森祭りの夜」
「うん…光と雪が踊って、森が笑ってた日」
キラの目に、あの夜の輝きが今も映っている。
リリは笑みを浮かべ、冬の思い出が心の中で温かく広がるのを感じた。
「ねぇ、キラ……ずっと一緒にいようね」
「うん、約束。リリとならどんな季節も楽しいと思う」
二人は肩を寄せ、丘の上で春の光を浴びた。
光は柔らかく二人を包み、冬の魔法の余韻と春の希望を心に運んだ。
風が吹くたびに、芽吹きの緑が揺れ、丘の上に小鳥の歌声が響いた。
二人はその音に耳を澄ませ、春の森の鼓動を感じた。
「リリ、春も冬みたいに魔法があるんだね」
「うん、雪じゃなくて、花や風、光の魔法…全部楽しめるね」
丘を下りながら、二人は未来のことを話した。
どんな季節でも、どんな冒険でも、一緒に楽し(たの)むこと、そして互いに支え合うこと。
冬の魔法が残した絆は、春の光とともに、未来の約束へとつながっていた。
二人の心は、冬の輝きと春の希望で満たされ、森の風がそっと二人の背中を押すように吹いた。
未来への一歩はもう、怖くない。二人は手を握り、春の光の中で笑い、歩き出した。
冬がくれた思い出と春の希望は、二人の心の中で永遠に輝き続けるのだった。