雪が静かに降る冬の朝、森は柔らかい白の毛布に包まれていた。木の枝には雪が積もり、太陽の光が反射して無数の小さな光が舞っている。
「リリ、今日は雪の音を聞く日だよ」
キラの声が耳に届き、リリは頷きながら手袋に雪の結晶をのせた。
雪が手に触れる感触は冷たいけれど、心を静かにさせる力があった。
「雪……こんなに静かに降るんだ」
「うん、静かだけど、ちゃんと音があるんだよ」
キラは小さく手を打ち合わせると、雪の結晶が光を揺らしながら落ち、軽い音を奏でた。
リリはその音を耳で追いながら、森の静寂の中に溶けていく感覚を覚えた。
森の奥へ進むと、雪の層が厚くなり、枝の隙間を通る風が微かに音を立てた。
雪の音は軽やかで、でも森全体を包む深い静寂の一部のようだった。
「リリ、聞こえる?」
「うん、雪が落ちる音……風のささやき……森の呼吸みたい」
リリは目を閉じて耳を澄ます。雪が枝や葉に当たる音が、静かに、でも確かに心に届いた。
小鳥の羽音や遠くの川のせせらぎも、雪の音と混ざり合い、森の交響曲を作り出しているようだった。
リリはそっとキラの手を握り、二人は雪の音に耳を澄ませながら森を歩いた。
静寂の中で、二人の呼吸と心音さえも、雪の音の一部のように感じられた。
「リリ、雪の音って不思議だよね」
「うん、見えないのに、ちゃんと心に届くんだね」
キラはにっこり笑い、リリも小く笑った。雪の冷たさと静けさが、二人の心をそっと溶かしていく。
森の奥に進むと、小川が凍りつき、氷の上を雪が覆っている。
雪の粒が落ちる音は氷の上で微かに響き、まるで小さな鐘が森全体で鳴っているようだった。
「キラ……この音、ずっと聞いていたい」
「うん、僕も。雪の音は、心を落ち着けてくれる魔法だから」
リリは胸をそっと押さえ、静かに雪の音を感じた。
心の奥に雪の透明な光が広がり、優しさと温かさが同時に流れ込む。
小鳥が枝に止まり、雪の重さで枝がゆれる。
その瞬間に小鳥の羽音が雪と交ざり、リリの心にそっと響いた。
雪の一粒一粒が奏でる音は、森全体で作るハーモニーのようだった。
「リリ、この雪の音は、森の声だよ」
「森の声……」
リリは目を閉じ、耳を澄ます。雪の音が森の息吹や木々(きぎ)のささやき、遠くの山の声を運んでいることが、心にじんわり伝わった。
二人は雪の上に座り、静かに耳を澄ませた。
雪の冷たさと静寂の中で、リリの心は雪と光で満たされ、安心感が体全体に広がった。
「キラ…雪って、見るだけじゃなくて、聞くものでもあるんだね」
「うん、だから冬は面白いんだよ。光と音と魔法が全部一緒に感じられる」
雪の音と光の世界に包まれながら、リリとキラは静かに笑い合った。
冬の森は冷たくても、心の中は雪の音と光で優しく温かく満たされていた。