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粘つく殺意


音の主はスケルトンを跳ね飛ばし轢き潰し、猛烈な勢いで転がり一直線に突っ込んで来る。

余りの勢いに回避を選択したガラドの横を風を切りながら自身の身の丈ほどの白い球体が通り過ぎ、スケルトンで出来た円の縁に転がって行く。


円を描いていたスケルトン達を轢き潰す直前、球体は棘の様なものを生やし地面に突き刺してその勢いを殺す。球体に向かって通りすがりに轢き潰されたスケルトン達から青紫の光が流れ込む。

光が完全に球体に飲み込まれる直前に見えた姿にガラドが唸る。


「何匹でもかかって来いとは言ったけどよ、そんな悪趣味に纏まれとは言ってねェぞ…。」


見えた球体を構成しているのは夥しいほどの人骨、子供が作った泥団子の様に幾多もの骨が球体を形作っている。

地面に突き刺している棘の様なものは肋骨、地面を削り何本も折れながら巨体の勢いを殺したようだ。


「見た事も聞いた事もねェ魔物だナァ…スケルトンの特殊個体か?」


止まっていた骨の球体の自身の正面、球体の中にある頭蓋骨がガラドの方を向きガタガタと顎を鳴らし威嚇する。

ガラドは相手の大きさを見て剣では対抗するが出来ないと判断して一瞬躊躇した後、地面に両手の武器を投げ捨てる。


「格上クセェな、あの勢いで何回も突っ込まれたらたまったもんじゃねェ。来いよ骨団子!速攻で叩き潰す!」


矢筒から切り詰めた戦鎚を引き抜きしっかりと両手で握りしめ、真正面から叩き伏せる為に上段に構える。

ガラドが構えるとほぼ同時に球体は動き出し、徐々に勢いを増して再び転がってくる。


一直線に転がってくる骨の球体に意識を集中し、振り下ろそうとしたガラドの目の前で球体から何本もの骨の足が生え、その身をガラドの真上へと跳ね上げる。


「はぁ!?」


戦鎚を構えた姿勢で上を見上げたガラドの真上で球体は足をしまい、今度は肋骨を全身から生やし回転しながら真下にいる彼を押し潰そうと落ちてくる。


慌てて掲げたままの戦鎚を振りかぶった姿勢を崩してその場を脱する。

骨の軋む音と地面を抉る轟音が鳴り、直前まで真下にいたガラドに怖気が走るが、気を持ち直し落ちてきた球体に戦鎚を叩き込む。


無理に脱した姿勢からの攻撃では自身の身の丈程の球体には表面の骨を砕いて散らす程度しか出来ず、

その骨も内側から新たな骨が出てきて修復される。

だがガラドは再生した骨の表面を見やりカタカタと嗤い、腕に魔力を練り上げ戦鎚で連打を叩き込む。


「中から補充したナァ?砕けば砕くぼと縮むんじゃねェか!?重くて直ぐには転がれねェみてェだからこれで終わらせてやるよ!」


戦鎚を振るっているとは思えない速度で連撃を叩き込み、骨の破片を撒き散らしながら球体を構成する人骨を砕いていく。

球体は嫌がるように体を震わせ、今度は何本も腕を伸ばしてガラドの体を掴もうとする。


今度は冷静にその腕を避けて後ろに引くが、距離が空いた隙に球体は転がり出しスケルトンで出来た円を削るように轢き潰している。


「クソッタレが!!素材はそこら中にあるってか?!」


ガラドの攻撃で僅かに縮んだ体が轢き潰したスケルトンの骨を取り込み補充されていく、轢き潰されたスケルトンが取り込まれると共にその眼孔から青紫の光が消える。


それを止める為に自ら近づき球体の動線に割り込み、練魔を使い力いっぱい振り抜き球体の横っ腹を叩く。


骨を砕かれながら勢いを真横に逸らされ球体が吹き飛ぶが、そのまま転がり反対側のスケルトンに突っ込もうとするが脚に魔力を込めたガラドのが吹き飛んだ球体に追いすがり今度こそ真上から戦鎚を叩き付け球体を地面に縫い付ける。


「何回も補充させる訳ねェだろが!!」


もう一度、戦鎚を振り上げ球体の形を崩しつつある魔物に叩きつけようとした時、ガラドは視界の端に映ったものに直感的に飛び退く。


破片の飛び散る中、ガラドを見る無事な頭蓋骨の中にぬらりと濡れた一つの眼球。血走ったその眼が彼を観察するように見て、頭蓋の顎を開いていたからだ。


飛び退くと同時に頭蓋の口から粘ついた液体が吐き出され、地面に赤黒い染みを作る


「気色の悪ぃもん吐き出しやがって……。」


球体は体を砕かれ、謎の液体を吐き出したせいがその身を縮ませ、もう隠す必要は無いとばかりに頭蓋の虚な穴から眼球を除かせる。


「特殊個体かと思ったがそもそも別の魔物か。」


記憶にあるどのアンデットとも違う特徴にガラドは呟く。肉がついたゾンビでも、スケルトンでも無い。

再び警戒度を上げて、球体を見やりその行動を観察する。


球体は体中の骨を震わせ、眼球のある頭蓋骨の周りに大量の肋骨を生やし、転がる以上の速さで射出してきた。


戦鎚では防御しきれないと判断したガラドは走りながら飛んでくる肋骨を避け、滑るように地面を走り投げ捨てていた剣を拾う。


「糞がっ!短剣拾ってる余裕はねェか!」


次にガラドが向かう方向を予測するかの様に短剣が転がっていた場所に射出された肋骨が突き刺さり、短剣が弾き飛ばされる。


歪な二刀流を構え肋骨の矢玉の避けながら相手を見る。骨を射出するにつれ球体はその大きさを縮ませている。

同時にまた足を生やし、ゆっくりと円を模るスケルトンに近寄っている。


「迷ってる場合じゃねェナァ!!!」


安全をかなぐり捨て、肋骨の矢玉の中を駆ける。頭に当たる軌道のものは払い落とし、胴体に当たる軌道の物は無視する。皮鎧は肋骨に貫かれるが肉の無いスケルトンの体には問題がない。

生きていた時には出来ない、捨てる身の無い突貫で一気に距離を詰める。


焦ったように球体が足を動かすが、逃げるよりもガラドが迫る方が速い。

眼を揺らし、顎を開こうとした球体に向かってガラドは魔力を込めた足で思いっきり地面を蹴る。

抉られた地面が捲れ土が飛び散り、剥き出しにされた眼球に突き刺さる。


絶叫するように耳障りな音で全身の震わせる球体は、眼球のある頭蓋骨を隠す様に体の中に埋もれさせる。

視界を眼球に頼っていたのか肋骨の射出も止まり、足を忙しなく動かし逃れようとするが、その隙を縫ってガラドが左に構えた戦鎚の一撃を振う。



「逃がさねェよ。」



戦鎚が埋もれていく頭蓋骨の周りの骨を削り取り、顕になった眼孔、その奥にある眼球に右の剣を突きを放ち貫く。

果実を潰したような感覚が剣から伝わる。


瞬間に球体は全身の骨を膨らませ弾けるさせる。

ガラドは全身を魔力で魔力を練り上げ、飛散する骨から自らを守る。


爆散した骨の中心部、赤黒い脈打つ半球状の物体が半分に切れた眼球を触手で引き摺り、地面を這う様にガラドから距離を離そうとしていた。


「血肉で出来た粘性体(スライム)が本体か…。」


使える魔力が空になった感覚を味わいながら、スライムとの距離を詰め、脈打つ中心に向かって真上から剣を突き刺す。


最後に大きく震え、赤黒い粘性体(スライム)は崩れ、地面に赤黒い染みを作る。


「心臓に脳みそ、最初から最後まで気色の悪ぃ…。」


恐らくスライムの核であっただろう心臓と脳みそを混ぜた様な肉片が溶けるように消える直前、スケルトンとは比べ物にならない莫大な青紫の光がガラドに流れ込む。


だが怪しい光を取り込み終わる前に風切り音が鳴り、飛んできた矢を剣で振り払う。


「そうだよナァ…テメェ等はまだ終わってねェもんナァ?」


飛んできた射線の先、スケルトン・アーチャーはカタカタと骨を鳴らし次の矢を番える。

他のスケルトン達も骨を鳴らし徐々に円を狭めて来る。獲物が更に力を蓄えた、それを寄越せと言わんばかりに。

スケルトン達の視線は先程吐きかけられた液体のようにこびり着く。


「短剣も拾わなねェとナァ。んでもってお前は随分いいもん持ってんじゃねェか、それ貰うぞ。」


だがスケルトンなど視界にすら入っていないとガラドは嘯く。


お前らが俺に寄越せ、と。


駆け出し戦鎚をスケルトン・アーチャーの頭蓋骨に叩き付ける。周りにいるスケルトンも剣で纏めて薙ぎ払う。


自らが整えた円を削り取り、空いた空間で弓と矢筒を拾う。

だが、魔物として格上の相手との邂逅がガラドの意識を引き上げ冷静に次を見越し、周囲のスケルトン達はやはりただの獲物だと思う感情を押し込める。


「また今の奴が出たら次は魔力が足りねェ。取り敢えず短剣回収したら離脱するか。」


薙ぎ払ったスケルトンにトドメは刺さず、短剣が弾き飛ばされた位置まで走り近くにいたスケルトンを戦鎚を振い砕き潰し、短剣を拾い一気に円を食い破る。


やや集めたスケルトンを口惜しく思いながらもガラドは一気に遺体集積場(狩り場)から距離を離す。


一先ずは魔力を回復するのが先決だと。





まさか自分の作品が100人以上に見られるとは思っていなかったので嬉しい感情と、あれ?もう止まれなくね?という感情がせめぎ合ってます……。


もし宜しければブックマーク・評価ボタンも押して頂けると幸いです。

評価が高くなればなるほど恐らく作者は追い詰められて続きを書くと思います……。

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