力の渇望
湧いた疑問に思考を割きながらもガラドは立ち上り再び獲物を探し歩き出す。
そもそもの目的はアンデット化により弱体化した自身の力を取り戻す事であり、その過程で思考も元に戻るのではないかという打算もある。
「んだった?魔力場異常だったか?」
自然災害などで土地の魔力が乱れ、その地域の性質が変質して起こる魔力場異常と呼ばれる現象。
アマステア平原の場合、マーグナジア帝国は広大な領土から齎される物資に農民から徴兵された大量の人員や在野の傭兵等を国軍武官に率いさせ面制圧を行い全線を無理矢理押し上げようとし。
対する聖国は国家防衛対に聖堂教会から派遣された騎士や魔術師による混成軍ではあったが、派遣された魔術師による治癒魔術を使用し兵を迅速に戦場に送り返し、膠着状態を維持。
両国が衝突した結果、短期間で多くの魔力や人命が消費されたことにより戦争後期に魔力場に異常が起こり、アンデット蠢く生者にとっての危険地帯へと変貌させた。
「アンデットが増えてんのもこんだけ時間が経って朝が来ねェのも魔力場異常ってやつだろナァ。」
歩みを進めて自身の憶測に一定の納得をしていたガラドの眼孔の端に戦闘するスケルトンの集団が捉えられた。
だが彼は今までの様に突貫する事なく集団から背を向ける。
「なるほどナァ…便利なモンだ。見なくてもこの距離からアイツ等の場所が分かる。視界に入る範囲ならアンデットの気配がわかりやがる。」
今は無くなった彼の表情に笑みを浮かべる。
違和感の正体に結論をつけ、ぐるりと反転しスケルトン達に駆け出した。
「人間の気配が無くても、なんかが殺りあってる気配がありゃ戦場だわナァ!!!」
最後の疑問の答え合わせをしながら一気に距離を詰め、未だ彼に気付いていないスケルトンの背後から頭に剣を叩き込む。
無惨に砕かれた頭蓋と上からの打ち下ろしにより悲惨し、突然現れた乱入者に他のたちが警戒する様にガタガタと音を立てる。
「アンデットしか居ねェ、朝日も登らねェってんならありがたいこったナァ!」
油断なく周囲の動向を見つつ小楯を地面に投げ捨て、矢筒に捩じ込んだ戦鎚を引き抜いて両の手に武器を構える。
そして姿勢を低くし一気に飛び出し一番近くにいたスケルトンに横薙ぎで剣を払い、体が右に流れた力を利用し踏み込み左手に持った戦鎚が次の頭蓋に吸い込まれる。
頭から縦一直線に全身の骨を砕きそのまま地面に叩きつけた戦鎚の反動を使い、ガラドの身体が宙に舞う。
長い手足の骨を畳みつつ玉の様に回転し次の目標の頭上に飛び今度はまた剣を叩き込む。
走り跳ね回り、曲芸師も驚嘆する様な動きで次々と骨を飛散させガラドは嗤う。
「アッハッハッハッハッハッハァァ!!!この辺りなら動きのトロいスケルトンしか居ねェ!!人間の邪魔も入らず討伐される危険もねェ!!!」
狂った様にゲラゲラと嗤いその場に居たスケルトンを全滅させ、怪しい光取り込みながらまた駆け出す。
「スケルトン相手なら盾は必要ねェナァ!!手っ取り早く攻撃の数を増やす!!!」
ガラドの眼孔の光が大きく揺らめく。
「魔物の成長が早いならこの状況は好都合だナァァァァァ!!」
気配を感じ取れる距離にスケルトンが居れば、旋風が吹きつける様に通り抜け、武器が舞い、骨を撒き散らし、死した体から力の根源たる光が刈り取られる。
「次!」
力を取り込み、駆ける脚が少しずつだが着実にその速度を上げ。
「次ぃ!」
武器を振う動作も鋭さを増していく。
「次ィィ!!」
絶叫し、嗤いながら戦場跡を駆ける様は目覚めてすぐと同じ様だが、現状を理解し、確たる目標を見据える彼の体はもう止まらない。
生命無きアンデットの身体で有り、生前よりも明らかに劣るが、朝日さえ昇ら無いのであれば疲労の無い骨身はその性能を常に全開で使い倒せる。
暴力の嵐となった彼の走る後には怪しい青紫の光が尾を引く様に続いていた。
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本日更新は守りました、ギリギリセーフギリギリセーフ。




