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同族狩り


カタカタと嗤いながら白骨は手した剣を弄び、死出の旅路を遡るように歩く。

暫くすると荒れ果てては居るが懐かしき戦場に戦士は舞い戻る。

そして胸一杯に空気を吸い込む様な動きをすると吠えるように嗤い出す。


「いいねェ!いいねェ!鼻なんざ無ェから匂いも何もわからんねェが、戦場の空気だ!骨身に染みるじゃねェか!ハッハァ!」


白骨は辺りを見渡し、自身の心が赴くままに走り出す。

駆け回って居るとガチャガチャと自身と同じ音を出しながら斬り合って居る白骨の集団を見つける。

見つけた途端に白骨は更に加速する。

そして勢いよく白骨の集団の中に躍り出て一番近くにいた白骨に切り掛かり自信より二回りほど小さなその頭蓋を叩き割る。

頭蓋を叩き壊された白骨は頭以外の骨をまるで鮮血かのように地面に散らす。


「よぉ、俺も混ぜろよ?」


言うが早いか、次に近い白骨に接近し、剣の柄で頭蓋を叩き割る。

実に数秒で二体の白骨の頭蓋を叩き壊した存在に周りの白骨が警戒したかのようにガタガタと顎の骨を鳴らす。


「んだぁ?テメェ等喋んねェでガチャガチャと?動かねえならこっちから行くぞオラァ!」


集団はガタガタと警戒音を鳴らしながら、各々てに持った獲物を構えるが、その動きは緩慢で、およそ同じ白骨とは思えない程遅かった。

その隙を逃す筈もなく手近に居るものから一体、二体と頭蓋をその身を崩していく。



「肉が無い分体が軽りぃわ!オラァ!チビ共!ガラド様の心機一転の戦場だ!もっと派手にその骨ブチ撒けろ!!」



ガラドと名乗った白骨は嵐のように集団の中を駆け回り、緩慢な白骨の頭蓋を砕いて、砕いて、破壊する。

そしてガラドがその身を宙へと投げ出し最後の一体に頭上から剣を叩きつける。最後の一体は小楯を手にしていたが守りが間に合わず無防備な頭蓋から胴体までの骨を砕かれて骨の体が崩れていった。

ものの数十秒で合計八体の白骨の残骸が無惨に辺りに散らばっていた。


「んだよ、スケルトンだから頭潰しゃあいいから糞ほど歯応えの無ェナァ…。」


ガラドは小首を傾げながらバラバラになった頭蓋の無い白骨の周りから武器や防具類を物色する。

散らばった骨を蹴り飛ばし多少場所を確保した場所に物色した装備品を集める。


「武装的には帝国の徴収兵か?穂先が無ェ槍に錆びまくった剣二本とこれまた錆びた戦斧、弦の切れた弓に矢の無い矢筒、襤褸の皮鎧八枚。使えそうなのは戦槌一本に凹んだ小楯か。

戦場に武器持って無ェスケルトンがニ匹か幸先悪いかこりゃ?」


使えない武器を骨の山の中に放り投げ、矢筒、皮鎧、戦鎚、小楯をその場に残す。


徐に手持ちの剣を矢筒底に十字に刺し、戦鎚の柄を無理矢理ねじ込み穴を広げてはみ出た柄を適当な長さで剣で叩き切る。

襤褸の皮鎧の使い物にならない部分を剣で裂き紐状にし無事な部分を簡易の鞘にした矢筒と一緒に身体の骨にずり落ちない様に括り付ける。

簡易の滑り止めとして余った革紐を両手に巻き付け小楯と剣を持ち握りを確かめる。


「握りが甘いが骨のままよりまだマシだな、鎧の方は丈が足りねえがまぁなんとかってところか。

略奪は戦場の華っつてもシミったれた華もあったもんだぜ。」


そうやって略奪しているとガラドの周りの骨から青紫の怪しい光がガラドの額の穴に向けて雪崩れ込んでくる。

一瞬身構えたガラドだったが視界から青紫の光が消えた時、周りにあった骨の山が音もなくサラサラと崩れていった。


「…あ?」


疑問の声に返答は無かったが、握っていた剣と小楯の感触に違和感を感じ、三回ほど剣を振るってみる。

手の中の剣の感触にガラドはカタカタと嗤う。



「なるほどナァ!魔物の成長が早いってのはこうも分かりやすいのか!ハッハッハッ!たった八匹雑魚を仕留めただけで少なねェが力が戻ってやがる。」



ガラドの振るった剣速はスケルトンから光が流れ込む前に比べると僅かに、ほんの僅かにだが速くなっていた。

確かに感じた成長の兆しに体を震わせる。カタカタと、次第にガチャガチャとガラドの嗤い声と骨の鳴る音は大きくなる。

眼孔に灯る青紫の光が大きく揺らぎ次の獲物を探しに歩き出す。次第にその脚が地面を蹴る速度が上がっていく。



「八匹でこれなら十匹狩ればどうなる!?二十匹狩ればどうなる!?百匹狩った日にゃどうなっちまうんだ!!アッハッハッハッハァッ!!」



駆ける速度は先程の戦闘時と変わらない程まで速くなり、青紫の光が灯った眼孔は揺らめきを増し、獲物を求めて辺りを舐めるように見渡す。


襤褸の皮鎧に剣、切り詰めた戦鎚、小楯を握り締めた戦士が駆け回る。

停滞しつつもある種の不死者達の安寧があった筈の戦場跡アマステアに骨の身の獣が解き放たれた。


戦場跡と呼ばれた狂った平原は再び戦場となり、

そこには怯えすらなく、獣の狂乱が始まる。力を求める骨の戦士は次の獲物を見つける。


駆けて近づき骨を砕き、他者の死を貪る。


安寧など最早お前たちには無いのだと嗤う。



2025/11/21加筆

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