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エロゲ世界で無双するために義妹とイチャラブする  作者: アレセイア
第2章 新たな仲間と

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第12話 脱出のための作戦会議

 ダンジョン異変から数えて、二十八日目――。

 有坂家の庭先で蒼馬は静かに立っていた。

 相対するのは、長らく教えをつけてくれた女戦士、ティファ。彼女は淀みのない動きで鉄パイプをバトンのように回す。それからぴたりと制止し、構えを取った。

 刺突の構え。それを受け止めるべく、蒼馬は盾を構えた。

 全身に的確に魔力を巡らせ、腰を低く落とす――静寂の正対。

 直後、ティファの目が見開かれた。地を蹴り飛ばした瞬間、地面が爆ぜ飛び、弾丸のようにティファが肉迫した。空を引き裂いて真っ直ぐに放たれる刺突。

 それが盾にぶつかった瞬間、盾から全身に蒼馬の身体へ衝撃が襲う。


(――っ!)


 衝撃で二人の間に地面がひび割れ、土煙が舞い上がる。

 その中で蒼馬はしっかりと目を開いて目の前のティファを見据える。槍を突き出した彼女はふっと微笑むと、鉄パイプで空を一閃。土煙を振り払う。


「合格だ――蒼馬、よく受け止めたな」


 その言葉に、蒼馬は全身から力を抜いた。まだ衝撃が身体に残っているようだが、しっかりといなしきれた感覚もある。足元を見れば、逃がした衝撃のせいで地面に足がめり込んでいた。両足を順番に抜きながら、ちら、と盾を見る。

 そこに刻まれた打突は二か所――〈二回行動〉の本気の攻撃だったようだ。


「容赦ないですね。ティファさん」

「ああ、だが、それくらい受け止められなければ、大事な人は守れんぞ」


 ティファは快活に笑い、蒼馬の頭に手を載せた。くしゃっと髪の毛を乱すように撫で、彼女は目を細めて告げた。


「三日でよく仕上げた。今や立派な盾役(タンク)だ」


『スキル〈揺るがない防御〉を取得しました』


「兄さん、怪我はないですか?」


 二人の激突を固唾を呑んで見守っていたカルアが駆け寄ってくる。大丈夫、と蒼馬は一つ頷きながら、カルアの頭に手を載せた。


「カルアが回復してくれたおかげで、毎日みっちり練習できた。ありがとう」

「いえ――それを言うなら毎日、兄さんが実験台になってくれたおかげです。おかげで、ほら――」


 彼女は掌を蒼馬の腕にかざす。それだけで染み渡るような温かさが流れ込んできて、身体に残った衝撃の痺れを回復させてしまう。

 おお、と蒼馬は目を丸くし、ティファは苦笑いをこぼす。


「相変わらずの天賦の才だ。カルアも回復魔術を完璧に体得できるとは。正直、傷を塞げる程度なら上等だと思っていたが、体力回復まで支援できるようになるとはな」

「兄さんのためですから」


 カルアははにかみながら囁き、横目で蒼馬の顔をちらりと伺う。笑い返して頭をもう一度撫でると、彼女は嬉しそうに彼の腕に頭を擦りつけてきた。

 そのやり取りももうティファは慣れたのだろう。肩を竦めるだけで何も言わない。

 だが、すぐにカルアに視線を向けて微笑みかける。


「いずれにせよ、カルアも見事だ。正直、蒼馬がここまで早く盾役としてのスキルを開花できたのは、カルアの支援あってこそだ」

「そんなことはないと思います。兄さんの努力が一番ですが――」

「まぁ、それはそうでもある」


 ティファは頷きながらも。再び苦笑をこぼしていた。

 その意味を蒼馬は理解している。自身の手を持ち上げ、拳をしっかり握る。その感覚は今まで以上に力強く、身体は軽く感じられる。

 カルアの回復は、破壊された筋線維を徹底的に修復してくれた。

 それはつまり、疑似的に激しい筋トレと超回復を繰り返したことでもあり。

 副次的に、蒼馬のフィジカルはこの数日で一回り強化されていたのだ。


(これ、下手したらすごいドーピングだよな……)


 この世の探索者やスポーツ選手が羨むような強化方法を、カルアは無意識下で蒼馬に施している。その事実に少しだけ戦慄する一方で、カルアはにこにこと嬉しそうに笑うばかりだ。蒼馬も思わず苦笑をこぼし、カルアの頭を撫で回す。


「ちょ、兄さん、激しい――髪の毛乱れちゃうよ」

「おっと、悪い。つい、な」


 カルアは抗議するような声を上げるが、目は笑っていて仕草は甘えるよう。それに応えるように優しい手つきで彼女の頭を撫で、指先で頬をなぞり、顎先をくすぐる。

 軽くじゃれつきながら、蒼馬は少し視線を外しているティファに声を掛ける。


「では、ティファさん、いよいよ――」


 その言葉にティファは目を合わせ、真剣な表情で一つ頷いてみせた。


「ああ、ダンジョンから脱出しようと思う」


   ◇


「これが現状の簡単なダンジョンの地図だ」


 場所を移してリビング。薄暗い部屋のテーブルにティファは手書きの紙を広げた。そこに記されているのは丁寧にマッピングされた、有坂家周辺の地図だ。

 基本的には同じ街並みが続いているが、所々で地割れが広がっていたり、建物が横倒しになって道が塞がれている部分もある。

 分かりやすくまとめられた地図にカルアは目を見開き、ティファを見つめる。


「いつの間にこんなものを作られていたんですね」

「まぁな。共にダンジョンに出たときに、少しずつ調べておいた」


 どうやら、蒼馬とカルアに実戦経験を積ませながら、ティファ自身は地形の把握も行っていたらしい。さすが熟練の探索者というべきか。

 思わず蒼馬も感心していると、ティファは軽く笑ってみせる。


「いずれはマッピングのコツについては、ここを出て養成学院の教員に聞く方がいい。そちらの方が専門的に学べるだろうし。さて――」


 ティファはペン先でこつこつと有坂家の位置を叩き、それから程近くにある印がつけられた位置まで、さっとペン先を滑らせる。


「ここが私たちの初めて出会った場所。アークデーモンがいた場所だな。言わずもがな、ここには中層へと繋がっているのだが――」


 ティファはそこに消しゴムを置きながら言葉を続ける。


「――カルアの〈魔力探知〉で察知したところ、ここで複数の魔力反応があった。また、ここにA級の魔物がいることは間違いないだろう。他にもいくつか出入口らしい場所を見つけてはいるが、そこも魔力反応がある」


 その言葉に蒼馬はカルアに視線をやると、こくんと小さく頷いた。


「ここで徘徊しているサイコロプスとか、スケルトンオークよりも明らかに強い魔力でした。多分、アークデーモンと同じくらいです」

「恐らく、ここの出入り口は全面的にA級の魔物が封鎖していると考えても問題ないだろう。つまり、このダンジョンからの脱出に必要不可欠なのは、A級の討伐」


 その言葉に思わず生唾を呑み込む――とうとうA級との戦いだ。

 蒼馬とカルアは想像以上に力をつけており、吹雪の先輩であるティファもいる。だが、人数は三人――戦力としては少し心許なく感じる。

 だが、ティファは二人を見やって励ますように微笑んだ。


「大丈夫だ。私もいるし、二人がフォローしてくれれば問題なくA級の魔物を倒せるはずだ。不意打ちにだけは要注意だがな」


 そう言いながら彼女は地図の上に載せた消しゴムを指先で軽く倒して見せる。それからその上にもう一枚紙を載せる――別の地図だ。


「これは私の記憶を基にした表層と中層のマップ。こうして見ると、中層は三次元的に入り組んでいるようだ。一応、頭に叩き込んでくれ」

「はい……とはいえ、すごい形ですね……」

「よくマッピングできたというか」


 蒼馬とカルアはそれを覗き込み、思わず吐息をこぼした。


(――簡単だけど、すごい完成度だな)


 原作知識を持つ蒼馬は、この構造についてすでに知っているが、その特徴的な部分を捉えたマップになっている。

 表層は街の形状を保った地形になっているが、中央に向かうにつれて下り坂になり、まるですり鉢状になっている。その中央はぽっかりと地面に大穴が空き、深層まで続く吹き抜けのような構造になっている。

 その大穴の周囲に螺旋状の通路のような区画があり、そこはまるで渦巻くように螺旋状になっている。そこがこのダンジョンの難所の一つ、人呼んで螺旋回廊であり、ここが中層に当たる。

 そのひどく長い螺旋回廊を下り終えて、初めて深層へと至るのだ。


(その螺旋回廊も罠や分かれ道があるから一筋縄では行かないんだよな)


 敵は強くないものの、状態異常系の攻撃をしてくる魔獣が多く出没する。そういう意味でもここではヒーラーはもちろん、攻撃を集中して請け負うタンクが欠かせない。

 ティファがタンクやヒーラーにこだわった理由がよく分かる。

 そういう意味でも、ティファを助けることができて良かった。彼女がいなければかなり苦戦していたことだろう。彼女は目を細めながら、ルートをペン先でなぞる。


「罠はいくつかあった。単純なものだが、注意すべきだろう。ここを抜ければ表層――そこからほぼ迷わずに脱出できるはずだ。所要時間は深層で一時間、中層で三時間、表層で一時間――余裕を見て六時間の行動になる。それだけの物資を厳選し、荷造りしよう」


 てきぱきとした指示に蒼馬とカルアは頷く。よし、とティファは頷き返すと、二人の顔を見つめてはっきりと告げる。


「今回の脱出では無理は禁物だ。幸い、この拠点は機能し続けているから、深層や中層で負傷した場合などはここに引き返すようにする。慎重に行動しよう――言うまでもないが、ダンジョンで油断は禁物だ」


 蒼馬は再び頷き、視線をカルアに向ける。きちんとレクチャーしてもらったおかげか、彼女の表情に不安はなく、真剣さが滲み出ていた。

 カルアは蒼馬の手をしっかり握ると、力強く告げる。


「兄さん、一緒に脱出しましょう――必ず、三人で生きて」

「もちろん。無理せず、けれど、確かに」


 蒼馬は手を握り返して決意を固める。生存し、確かなハッピーエンドを掴むために。

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