6.聖女の鐘が鳴った
長いです。
よろしくお願いします。
プベルル王国は昔、自然豊かな女神の祝福が満ち足りていると言ってもいいほど、豊かな国だった。
そんな王国に転勤が訪れたのは、もう200年以上も前のことだった。
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プベルル王国は初めて聖女が召喚されて以降、聖女の力が途絶えることはなかった。
それは、その聖女と聖女の護衛騎士が長きを共にするうちに自然と惹かれあい、そして愛し合い結婚をして子どもを授かったからだ。
その子ども達は、男児は強力な魔力を待ち、女児は聖女の力を受け継いでいた。
そして長きに渡り、王国の安全と豊かさを守り続けた。
しかし、いつしか国王だけではなく国民もそれが当たり前となっていった。
豊かさは当たり前、魔物が現れることなんてありえない。
人々は少しでも長雨が続けば、聖女に怒りを向け、神を呪った。
そうしているうちに、その時代の唯一となってしまった聖女が誰とも結婚せず、子どもを産むこともなく、亡くなった。
20歳になったばかりだった。
過労死だった。
そのことに女神は怒り、そして告げた。
「今後200年は聖女も女神の祝福も与えない。」
「自分たちでなんとかするんだな」と。
それから約200年経った。
王国は、王都ならまだしも王都から少しでも離れると瘴気が漂ってきそうな程、空気は汚染されていた。
豊かだった、穀物などの生産も落ち込み他国に頼らないと生活できない。
辺境地ではSランクの魔物がゴロゴロ出るほどだ。
川の水も汚染されていて、そのまま飲むことは毒水を飲むのと同じこと。
自分たちでなんとかしようとしたが、この200年でゆっくり、ゆっくりと悪化していって今ではどうすることもできない。
プベルル王国の現国王である、ロベルト•ヴィンセント王は、古い文献の通り聖女の召喚をすることに決めた。
禁術であること、200年以上も前に一度だけ成功した秘術である。成功するかもわからない。
だが、それでもやってみる他なかった。
そして今回の召喚については、知っている者も限られている。
王国の重鎮か、高位貴族の当主のみだ。
そして、失敗する可能性の方が高いのではないのかと皆、口には出さいが心の内では思っていた。
術者は、王国選りすぐりを5名集めた。
そして、とうとう召喚の日を迎えた。
だが、失敗すると思われていた、召喚術だったが、なんと魔法陣が発生した。
しかし、いくら待っても聖女は現れない。
どれ程の時間が過ぎたのかもわからない。
まだ懺悔の日々は足りなかったのだろうか、国王がそう思った時、鐘の音が鳴り響いた。
王国には、古くからの言い伝えがあった。聖女が王国に降り立てば、王城の庭園にある鐘が鳴ると。
しかし、その鐘はイミテーションのような作りで風が吹いても、人が動かしても決して鳴らない。
ただの言い伝えだと王国に住んでいる誰もがそう思っていた。
だが今、聖女の来訪を知らせる鐘が鳴ったのだ。
それは、王城だけではなく王都全体に響くのではないかと言う程の音であった。
鐘の音に呆気に取られていると、今まであったはずの魔法陣がなくなっていた。
長時間に渡って術を酷使していた術者達は、膝をついて肩で息をしている。顔色の悪い者がほとんどだ。
未だに鐘は鳴り響いている。
ロベルト王は思った、王国内のどこかに聖女はいるはずだと。
そして家臣に告げた。
「禁術故に、何か不足があったのかもしらぬ。王国のどこかに聖女さまがいらっしゃるはずだ!出られる兵士は全て使って探してくるのだ!」
しかし、会ったこともない聖女を探してこいとは無理難題だ。
聖女だと偽られてもわからない。
だから、聖女を探してるとは明かさずにそれらしき者を連れて来いとのことだった。
古い文献にあった、聖女の特徴を伝えた。
初代聖女は、長い黒髪の少女で歳は17歳であったこと。
服装が、プベルル王国の常識とは離れている可能性があることを。
王城には、緊張感で空気が張り詰めていた。
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