5.私が聖女様よ
よろしくお願いします
私の名前は、中野アイコ。年齢は、29歳。
私はずっと、ムカついていた。
なんで私ばっかりこんな目にあわないといけないの!
何をやっても上手くいかない。
友達もいなければ、男にもモテたこともないし、お金持ちだったこともない。恵まれた容姿もなければ、頭だって平凡。
学生時代は、ずっといじめられて、引きこもって生活していた。
29歳になった今も、定職には付かず、ずっと実家暮らし。
そんな時、たまたま深夜にやってるアニメを観た。
最近流行りの異世界転移もので、私は夢中で観ていた。
私も異世界転転移たら、人生変わるかも。
そしたら、待ってるパワーを使って、お金持ちになって、整形して、ダイエットにも成功して、男に貢いでもらう。
もし聖女様になったら、いっぱいお布施もらって、お祈りしてあげる。
そしたら、国で1番偉くてイケメンの王子様と結婚するの。
なんて、いい人生なの。わたしも、そんな風になりたい。
ずっと思ってた。
だから、道を全力で走るあの女子高生とあの光る魔法陣を見た時、やったと思った。
これで、私も聖女になれるって。
ただ、コンビニにおやつを買いに来て、スエット姿で財布しか持って来ていない。
でも家に帰る時間はない。
あの女子高生捕まえて、私も一緒に異世界に転移してやる!
でも女子高生は、足がめちゃくちゃ早かった。
追いかけても追いかけても、追いつかない。
自分の太り過ぎた体も、体力のなさにも腹が立つ。でもどうしようもできない。
このままじゃ、異世界転移できない!!
どうしたら…疲れた頭で考えた。
そうだ、回り道して、待ち伏せして捕まえようと。
すると、運がよかったのか女子高生が前から現れた!
だけど、スピードが早すぎて待ち伏せできなかった。
もうちょっとのところで、取り逃してしまう。
でも私も必死で着いていく。
女子高生も疲れていたのか、だんだんスピードが落ちて来た時に、なんとか鞄を掴む。
離してなるかと、掴んで引き寄せて、女子高生を歯がいじめにした。
次の瞬間、地面のそこが抜けて、吸い込まれた。
気がつくと、草むらに落ちていた。
自分の上には女子高生が乗っている。
魔法陣から落ちた時は、私が上だったのに、なんで下になってるの!!
いい匂いもするし、よく見るとめちゃくちゃ美人だし、細いし、いろいろムカついて、その子の横腹を蹴り上げた。
苦しんで、咳き込む姿を見て、気分がスッキリした。
異世界に来れた、その喜びで心がいっぱいだ。
「これで私は聖女様よ」笑いが止まらない。
「もう、お前は必要ないわ。消えて」
だけど、思ってた所と違うところに落ちてしまった。
神殿とか王宮のどっかに出れると思ったのに。
でも、これは私にとっていいことだわ。
だって、この子を始末してしまえば私は名実ともに聖女になれるはず。
遠くから、人の声が聞こえる。
早く始末しないと、そう思って押さえつけた。
すると自分たちが崖の上にいて、下には川が流れてることに気がつく。
アイコは、自然と口角が上がる。
暴れる女子高生を持ち上げて、川に向かって投げ捨てた。
そして、こちらに近づく兵士であろう人達に向かって大声で叫ぶ。
「私が聖女様よ!早く、助けなさい!」
崖の下で、光るものには気づかないままに。
ありがとうございました