まだ勇者がスキルを選んでいるでしょうが!!
真っ白な世界。どこまでも白く平坦な空間に、一人の青年が立っていた。
「なんだココは……!? えっ!? 俺さっき……バキュームカーに轢かれて……あ! 死んだ!? 俺死んだのか!?」
青年があたふたとしていると、スッと何処からとなく女神が現れ、そっと声をかけました。
「ようこそおいで下さいました、勇者様」
「ふえっ!? 誰!? いつから居たんです!? 貴方もバキュームカーに!?」
あたふたあたふたし続ける青年に、そっと女神は微笑みかけました。
「貴方様は選ばれたのです」
「バキュームカーに!?」
──バチンッ!!
平手打ちを一つ。女神はニッコリと微笑みかけ、話を続けました。
「バキュームカーの事は忘れて下さい。それよりも、貴方様にはこれからとある世界を救って頂きます」
「バキュームカーで!?」
──バチコンッ!!
「しかし生身の貴方様では些か不安が御座いましょう。そこで好きなスキルを一つ授けますので、どうぞ有効にお使いなさって下さいませ」
「えっ!? どういうこと!? スキル!? えっ!?」
ただただ狼狽える青年に、女神は廃業したパチスロ店から仕入れた一台のスロットマシーンを見せました。
「このスロットマシーンを回すと、三つのキーワードが現れます。出たキーワードに沿ったスキルにするのは如何でしょうか?」
「えっ!? どういうこと!?」
(人選間違ったかな……)
女神はそっと、さっさとしろと言わんばかりの笑顔で勇者の背中を押し、スロットマシーンの前へと向かわせました。
「回せば良いのか!? 回せば良いのか!?」
「左様で御座います」
「回すぞ!? 回すぞ!?」
「はよ」
青年がスロットマシーンを回すと、様々なキーワードが書かれたリールが回り始めました。
「そこの三つのボタンを押して止めて下さい」
「これか!? これなのか!?」
「いいからはよ」
青年は恐る恐る真ん中のボタンを押しました。
【破壊】
「おおっ! なんか強そう!!」
気を良くした青年は、右のボタンも押しました。
【神拳】
「キタッ!! これ絶対強いやつ!!」
青年は祈るように最後のボタンを押しました。
【アナル】
「決まりました。貴方様のスキルは【アナル破壊神拳】です」
「ただの浣腸かよ!!」
ここに来て真面なツッコミを入れられた青年は、ようやく落ち着きを取り戻し、顎に手を当てて考え始めました。
「……やり直しても?」
「アナル破壊神拳は御不満ですか?」
「不満しかねぇよ」
「拳術の達人は相手に触れること無く制圧すると聞きます」
「出会って間もない相手がいきなりケツ押さえて悶えたら同情の余地しかないっての」
「あっという間に世界を救えると思いますが?」
「もっと真面なやつがいい」
「ではもう一度どうぞ。まだチュートリアルですからお好きなスキルが出るまでやり直し可能です」
「おっし」
青年は再びスロットマシーンを回し始めました。
【マヨネーズ】
「やり直しやり直し!!」
「せめて三つとも止めてからにしませんか?」
「止めるまでも無くクソスキルの臭いしかしないってばよ!!」
青年はガックリとしながらも残りのボタンを雑に押しました。
【破壊】
「いいっていいって」
【神拳】
「決まりました。貴方様のスキルは【マヨネーズ破壊神拳】です」
「えらい限定的だなおい!!」
青年は三度スロットマシーンを回しました。何度でもやり直せるとあって、三つのボタンを全てすぐに押しました。
【アナル】【破壊】
「止めろ止めろ止めろ止めろ!!」
「まあまあ」
【マヨネーズ】
「決まりました。貴方様のスキルは【アナル破壊マヨネーズ】です」
「食べ物は大事にしろよ!! てかさっきから同じもんばっかりだな!!」
「止め方が雑だからでは?」
「クッ……!」
スロットマシーンを回し、青年はジックリとリールを観察し始めました。
「ほい」
【物理】
「それ」
【無効】
「…………」
青年は最後のボタンに手を掛け、狙うようにリールを睨みました。
「こいっ!」
【アナル】
「決まりました。貴方様のスキルは【物理無効アナル】です」
「ふざけんな!! アナル破壊神拳相手にしか通用しねーじゃねぇか!!」
【炎属性】
「あっ! なんかそれっぽいのきた!!」
【無詠唱】
「キタキタキタ!! 今度こそキタッ!!」
【お経】
「決まりました。貴方様のスキルは【無詠唱炎属性お経】です」
「お経はちゃんと唱えてやれ!! 無言で火葬すんな!!」
「クソがっ!! なんどやっても真面なスキルが出ねぇ!!」
スロットマシーンを殴りつけ、青年が女神を睨みました。
「設定1ですから」
「世界を救うのに設定渋る奴がいるか!! 設定6に直せ!!」
「それならスロットマシーンじゃなくて──」
と、女神は巨大なダーツ板を取り出しました。板には様々なチートスキルが書かせており、青年は目をぱちくりとさせて輝かせました。
「どうぞ」
青年にダーツが手渡されました。
「刺さった所のスキルが貰えるんだよな!?」
「勿論です」
「よく見たら半分くらい【たわし】じゃ……」
「巨大ダーツ板と言えば【たわし】でしょう」
「やべ、アナル破壊神拳が神スキルに思えてきた」
「では回しますよ」
女神が巨大なダーツ板を回し始めました。
青年は白線の後ろからしっかりと狙いを定めます。
「パ・ジョロ! パ・ジョロ!!」
「パジョロコールやめい!」
「回るダーツのお約束では?」
「知らん!!」
青年はもうヤケクソでダーツを投げました。
「おめでとうございます! 貴方様のスキルは【バキュームカー】です!!」
「いらんがな!!!!」




