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9 ベルノートの事情

誤字報告ありがとうございます、助かります…!

 昨日、僕のいないところでニナが『婚約解消』と口走った。

 全身の血の気が音をたてて引いたのがわかって、僕は二つの事を約束させられた上で、ニナに『もう少しだけ』近づいていいという許しを貰った。

 誰に、って、国王陛下、偉大なる我が叔父上様にだ。


 僕は昔からニナが大好きだ。本当に本当に大好き。

 やっと見つけた、と思ったんだ。

 いや、僕はかなり見つけたのが早い方だったけれど、あれはニナの方が僕を求めていたんだと思う。無意識に、無自覚に。

 出会ったその場で僕に一目惚れしてくれたしね。だからこそ、婚約も出会ってすぐにできて嬉しかった。


 王家の血に近い者なら誰でも同じ特異体質だ。

 通常とは違う、生まれ持ってそうなる特異体質。呪いだと、僕は思うんだけど、それを言うと怒られるので最近はそういう事は言わなくなった。


 誰にでも興味と関心を向けて個人の敵意は絶対に向けてはいけない。それは王家の血が濃いものが成長する上で絶対に守らなければならないこと。


 でも、そのせいでニナと距離を置く必要があった。

 最初は何も考えずに二人で仲良くしていたけど、僕の特異体質のせいで、ニナは他人に暴力までふるわれた。

 ニナに謝ってはいけないし、慰めるために近づいてもいけない。その暴力をふるった者に敵意を向けてはいけない。だから、特定もしなかった。

 僕は悲しいけど距離をとるしかなかった。


 それで、気づいたらニナの方から距離を取られていた。

 気付いていないフリをしなければいけないけど、ニナだって僕のことが大好きだ。

 結婚さえしてしまえば、僕はニナのそばでニナを守ることができるから、何も説明できないし今現在ニナを表立って守ることはできないけど、我慢する。


 ニナ以外の人は、やっぱり王家の血の特異体質に逆らえないようで、僕のことが嫌いな人はいない。

 だけど、僕はニナ以外がどうでもいいまであるから、ニナのことを差し置いて……それが本能に近いにしても……僕に粉をかけようとする人は嫌いだった。


 中には自制心が強くてニナごと大事にしようとしてくれる人もいるし、ちゃんと伴侶を得ている人ならばそんな事はしない。


 僕は特異体質の恩恵で離れていてもニナの事を細かに知ることができる。だけど、ニナは僕のことを知ることができない。


(考えてみれば、よくこんな僕のことを好きでいてくれる……)


 自分が僕のせいで暴力や暴言を浴びせられて、そしたら僕まで彼女から何も言わずに離れたのだ。制約があるにしたって最悪だ。

 確かに婚約解消をしてしまった方が、僕もニナも幸せなんじゃないか、って思考になるのも分かる。


 でも、手放せない。そんな事はできない。

 ニナのことが好きだから血を吐く思いで愛想良く過ごしている。ニナ以外がどうでもいいのではなく、ニナ以外が嫌いだと思わないように、無理やり笑顔でいる。考えないように、必死になる。


 だから、僕が婚約者のニナのそばに寄ったことで早速敵意を出してこられた朝は、大変だった。

 ニナともどもすぐに目の前から消えたから、特異体質を使って別の誰かを助けに向かわせたけど……そしたら、すでに知らない人がニナを助けていた。


 笑顔で、軽口を叩く二人。

 ニナが隠している秘密を知った男。


 彼はちょっと『混じり気』があるから、僕の特異体質にも耐性があるようだった。

 良くも悪くもだ。


 だから僕は遠慮なく心の中で毒づいた。


(嫌いだ嫌いだだいっきらいだアイツ、ニナに馴れ馴れしい! 助けてくれたのは嬉しかったけどなんであんな親密そうなんだ! あーー嫌だ、嫌いだ、大嫌いだ!)


 心の中で唱えている間にニナが戻ってきた。


 どうして、という疑問でいっぱいなのに、僕に笑顔を向けるニナを見たら、愛しくて全部どうでも良くなった。


 ニナ、僕のニナ。いつか絶対話すから、それまで待っていて。

 僕は君を手放す気なんて欠片もないよ。


 大好きだよ、ニナ。

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