8 違和感がある
誤字報告ありがとうございます、助かります…!
「どうやら、複数人でカーティー嬢を囲んでいるように見えるんだが?」
「あっ……あなたには関係ないことでしてよ!」
「そりゃそうだが、暴力はいただけねーよ」
あっさり関係ない事は認めるようだ。それはそう、本当に関係はない。
関係はないけど、ほっとしている自分がいた。
ぶたれるのになんて慣れているようで慣れられるわけがない。
身体の大きなカジミール様が壁になったおかげで、フィーネさんたちは一旦引くようだった。
「フン、行きましょう」
「いけいけ、もう来るなよ」
「うるっさいわね!」
フィーネさんの背中にカジミール様が追い打ちをかけたせいで、すごい形相で睨まれた。
背中が見えなくなってから、私の口から大きなため息が出る。やっぱり嫌われてるよねぇ……。
「た、たすかりました、カジミール様。ありがとうございます」
「あぁ、たまたまだけどな。しかし、今日はカーティー嬢とよく会う日だな」
「ふふ、本当ですね」
今ここにお菓子回収袋2号(中身入り)があったら、気にしないようだしお菓子を渡したかったけれど、それは教室だ。今から戻ってランチを食べる時間があるかどうかは怪しい。
「んで、なんで絡まれてたんだ?」
「うーん……、嫉妬、ですかね?」
何で、と言われると説明が難しい。
私はベルノート様にもっとべったりしてください、とお願いしたことはないし、でもベルノート様はなぜか今日はずっと私にべったりだし、それを受けてフィーネさんには随分と睨まれてしまったわけで……これをどう説明すればいいのやら、分からない。
「嫉妬かぁ。まぁ男女関係ねーよな、嫉妬の類は」
「あら、カジミール様にもそういった覚えがありますの?」
「言ったろ、俺はいじめられてんの。さて、今その話をするとランチの時間がなくなるな。またな!」
それだけ言ってすぐに走って行ってしまった。
さすが騎士科、鍛えているだけあって早い。
(私も戻るかぁ……)
しかし、いつも学食で食べている私が、今から学食に行っても食べ終われるかどうか怪しい。
こっそりお菓子を食べてしのごうか、と思いながら教室に入る。
「おかえり、ニナ。フィーネさんは何だったの?」
「お、おほほ、女同士の秘密の話でしたの!」
席ではベルノート様が待っていて、心配そうに私の顔を覗き込んできた。
う、う、顔が、顔がいい……!
「そっか。……何かあったら、僕を頼って欲しい。きっと力になるから」
「ひぃぃ、は、はい……!」
ただでさえも近かったのに、どんどん顔を近づけてくるから私は身体を椅子からはみ出させてのけぞっていた。背筋が、背筋がつらい!
「さ、じゃあお昼を食べようか。待っていたんだよ」
「へ?」
はいどうぞ、とベルノート様が鞄から出して机に置いてくれたのは、お揃いのランチボックスで。
「一緒に食べたくて、さっきは外に誘おうかと思っていたんだけど先手を取られてしまったからね。教室で一緒に食べよう」
「! は、はい!」
嬉しくて元気に頷く。
一緒にランチボックスを開けると、お肉と野菜がたっぷり挟まったサンドイッチを頬張りながら、ふと考える。
――心配はしてくれたのに、なんで追いかけてきてはくれなかったんだろう。
胸の奥が少しだけ痛い気がしたけれど「美味しい?」と聞いてくるベルノート様の笑顔を見ていたら、そんな痛みのことなんて忘れてしまった。
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