腕を引かれて愛の言葉を
シャリアンはクレインがいるのに驚いたが必死に平静を保った。
そして彼がお会計しようとしていた商品が目に入った。
小さなお花がちりばめられた中に大きなアクセントある花のモチーフがのったオルゴール。
美しい金細工の懐中時計。
透き通ったガラスの小物入れ。
繊細な彫刻の入った万年筆。
どれも美しく素晴らしかった。
「なんて素晴らしいの!」
思わず声が出てしまった。女性が喜ぶものばかり。
きっとマリーへの贈り物ね!そう思った。
でも、
「殿下、マリアンはこちらの動物モチーフの物の方が好きなんですよ。昔から小動物が大好きですの。
ガラスは昔に割れた花瓶で怪我をしてから身近に置くことを好みません。
時計も万年筆も亡き両親の形見を大切に使っております。
殿下から頂くものなら何でも喜ぶでしょうが、マリーは宝石や高価なものよりも古き良き伝統的な物が好きなんです。」
皇太子はまだ動けずにいたのでシャリアンの話を聞いていたかどうかは分からないが、シャリアンは即座に店を出ようとした。
「ジーン、帰りましょう。
では殿下、御機嫌よう。」
そうお辞儀をして店のドアを開けた。
「そろそろ夕飯の時間だわ。
もしよかったらうちで食べない?」
「お、いいのか?ではお言葉に甘えて。」
そうして家への帰路へ就いた。
数分歩いたあと、後ろから足音が近づいてきた。
「シャリー!!待って!」
皇太子が額に汗を滲ませながら必死に走ってきていた。
「殿下!?」
驚いて立ち止まるとクレイン様は私の腕を掴んで
「こっちに来て欲しい。」
とジーンをほっぽって私を引っ張りながら歩き出す。
「一体どうしたんです?」
私の問いには答えずただ歩き続ける。
そして皇室の馬車まで歩き、有無を言わさず乗せられた。
「……で、殿下?」
殿下は窓の外を見て何も寄せ付けないような、怒っているような素振りだ。
もう何も言えず、馬車に揺られていた。
10分ほどたっただろうか。
馬車が止まり、殿下のお城に着いた。
そしてまた私の腕を掴んで歩き出す。
そして最上階の一角にある殿下の部屋まで引っ張られ、そこでやっと腕が放された。
殿下は私に背中を向けて、震える声で私にとって衝撃的な一言を放った。
「初めて会った時から、シャリアンだけが好きだった。」